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79話:ファボラ


「【(タワー)】が襲われているかもしれない!?」

「そのデータがそこにあるならね」

「あそこはその機密性ゆえにセキュリティは厳重なはずだが……」


 レド達とグリムが【地下宮殿(メイズ・パレス)】の通路を駆ける。


「竜族が襲撃に参加しているならセキュリティなんて無意味だよ。それにおそらくだけど……内部にも手先がいるだろうね」

「……【黄昏派】か」

「おそらく……二人はいる。その為に私、竜学院を調査してたから」


 アリアの言葉にレドが納得した。なぜアリアがあの時、訓練場にいたのか。その疑問が氷解した。


「二人か……とりあえず急ごう。グリム、転移魔術は使えないのか?」

「座標がねえ。ピンポイントにその竜学院? の地下は難しい」

「そうか……なら走るしかないな」


 道中で襲ってくる魔物を蹴散らし、三人が進んでいく。


 しばらく進むと、【血卓騎士団】の騎士達の集団に出くわした。


「えっと、どうする?」

「戦う必要はない」

「――向こうはそう思ってないみたいよ!」


 騎士達が剣を抜刀し、こちらへと向かってくる。敵意を剥き出しにして、話を聞いてくれそうにない。


「馬鹿かあいつら! くそ、なるべく殺すなよグリム。あとで面倒になる」

「ええ~」

「じゃなければ協力関係は無しだ」

「はーい。まあ死なない程度に殲滅してあげる」


 グリムが嬉しそうに手を振ると、炎剣が何本も出現した。その数はグリムの背後の空間を埋め尽くすほどだ。


「当たり所悪かったら死ぬから頑張って避けてね――【炎錆剣雨(ラスト・レイン)】」


 それらはグリムの言葉と共に射出。逃げ場のない回廊にいる騎士達にそれを避ける術などない。


「すぐに防御魔術を展――ぐはあ!!」


 頭や急所に当たらないように絶妙に操作された炎剣が次々と騎士達の足や腕に刺さっていく。それで足が止まった騎士達の頭上をレド達が通り過ぎていく。


「操作めんどくさいんだからね」

「……あれをこれまでに使われなくて良かったよ」


 レドは心の底からそう思った。


 それからは魔物には遭遇しないものの、問答無用で襲ってくる騎士達を撃退しつつレド達はようやく竜学院地下付近へと辿り着いた。


「これは……」


 レドの目の前には回廊の壁があるのだが、それが明らかに人為的に破壊されており、上へと続く道が出来ていた。


「ここからその研究施設に襲撃したみたいだね」

「早く行きましょ。お姉ちゃんが無事だと良いけど」


 涼しい顔をしているが、アリアは焦っているようにレドには見えた。レドも勿論心配はしているのだが、あの人はタダでは死なない事を良く知っている。【塔】もろとも爆破を選ぶ事も厭わないだろう。


 三人が上へと進んで行く。


 そこには木っ端みじんになった研究施設跡があるだけだった。


「やっぱり襲われて、爆破させたか。これでデータの流出は防げていると思うが……」

「とりあえず地上に出よっか。誰か生きている人に事情を聞かないと。そのレド君のお姉さん? が生きていれば一番話が早いんだけどねえ」

「お姉ちゃんは生きてるよきっと」

「ああ。俺もそう思う」

「さ、きっと上も酷い事になっているよ!」

「……生徒達が心配だ。行こう」


 レド達が地上へと向かって疾走を開始した。



☆☆☆


 竜学院内の敷地。


「ああうぜえ!! 無駄に堅え!」

「レダス! だからイザベルが攻撃する前に飛び出さないでください!!」


 金属質の鱗を纏った二速歩行のトカゲに苦戦するレダスとニルンの前へとイザベルが駆ける。


 トカゲがイザベルへと鈍色に光るナイフのような爪を振るうが、イザベルはそれをパリングダガーで弾き、同時に右手の手甲をトカゲの腹へと叩き込んだ。


 手甲の力で金属質の鱗へと干渉を開始し、軟化させる。


「今!」

「おっしゃあ!」


 後ろへと引いたイザベルの代わりに左右からレダスとニルンが飛び出し、ニルンはトカゲの左腕を、レダスは右腕と脇腹をそれぞれの武器で切断。先程まで弾かれていたのに、今度はまるで熱したナイフでバターを切るように易々とトカゲの身体を切り裂いていく。


「うっし、こいつで最後か!?」

「ですね」


 ニルンが、背後でトカゲを一刀に伏しているヒナの姿を確認してそう返した。


「なんでヒナはイザベルの援護無しであんな硬いの斬れるんだよ……」

「斬鉄は……基礎だから……」

「嵐桜国凄えな……」


 イザベル達が魔物を討伐したのを見てカリスが駆け寄った。竜学院内の怪しい場所を探しているが、リードマンの姿はない。


「みんな、ご苦労様。だが、こちらにもいないか? くそ。リードマンめどこに?」

「もうとっくに竜学院内から逃げ出しているんじゃないですか?」


 イザベルが疑問に思ってそうカリスに聞いた。魔物の数は少ないものの、まだ学院の各所に潜んでいる。こんなところに留まるより外に逃げ出した方が安全だろうと考えたからだ。


「かもしれないな。騎士達に竜学院の周囲は捜索してもらっている。騎士より学院内に詳しい私達がこのまま中の捜索を続ける」

「なるほどー次は……」

「ん? おい、あの回廊にいるの誰だ? 一人は教師っぽいが」


 視力が優れているレダスがふと本校舎を見上げると、東校舎と本校舎を繋ぐ空中回廊を見知らぬ男が教師と一緒に東校舎の方へと走っていた。


「あれは魔術学講師のファボラと……!! ()()()()()だ!!」

「っ!! 行きましょう!!」


 イザベル達とカリスが東校舎へと走る。


「やはりまだ中にいたか! あいつの性格からして、あえて近くに潜んで騒動が収まってからしれっと脱出する気だったんだ。しかしなぜファボラと? まさか奴も?」

「そういえば、聞いた話ですが、ファボラはゴトランドと仲が良かったとか」


 イザベルが依頼をこなすついでに行っていた情報収集の中で聞いた話を伝えた。


「ああ、例のシルル家の奴か……なるほど、見えてきたな。とにかく捕まえれば話は早い」

「東校舎って出口が二つだろ? とりあえず二手に分かれないか?」

「いや、君らは四人で動いた方が良い。私が裏を見張ろう。君達は表から行ってくれ」


 カリスがそう言って、裏へ向かおうとした。


「だけど、一人だと危険じゃ……魔物は少なくなったけど。それにその人らが襲ってくるかもしれない」

「元部下だ。ならば話ぐらいはしてくれるだろうさ。言葉が通じるなら――戦い方はある」


 カリスはニヤリと笑って、そのまま裏口へと回った。


「カリスさんを信じて僕らは表から行きましょう」

「うん」


 イザベル達が表から中へと入っていく。既に生徒達は避難していて、中には誰もいない。


 だからこそ、声がよく響いた。


「おい、脱出口は本当にこっちなのか?」

「勿論ですとも。こんな時の為にこっそりと【転移陣(ポーター)】を設置していましてね……」


 それはリードマンとファボラの会話だ。


 イザベル達は階段を駆け上がり、二階の廊下へと躍り出た。


「……!? 誰だお前ら!」


 白衣を着たリードマンが叫ぶ。


「悪いが、あんたに用があってな。ちと会わせたい人がいるんだが来てくれないか?」


 レダスがダガーを構えてそうリードマンへと声を投げた。


「おい、ファボラ、話が違うぞ」

「やれやれ……誰かと思えば落ちこぼれ共め……お前らは大人に対する礼儀すら学んでいないのか?」


 教師用の制服の上から黒ローブを着たファボラが薄い笑いを浮かべながら杖を取り出した。


「礼儀? 悪い大人は徹底的にやっつけろって恩師が言ってたわ!! みんな行くよ!」


 イザベル達が駆ける。


「お、おい! ファボラ!」

「やれやれ……舐められたものだ。()()()()()――【火炎乱舞(フレイムダンス)】」


 ファボラの杖をから炎が巻き起こり、廊下を埋め尽くすほどの業火がイザベル達を襲った。


「っ! みんな下がって!」

「僕の盾の後ろに!」


 ヒナが疾走する。


「――“凍閃”」


 ヒナが目の前に迫る炎へと刀を振るう。空気が凍りつくような音と共に、炎が――割れた。


「馬鹿な!?」


 斬られて勢いの弱まった炎をミスリル製の盾で受け流したニルンが前へと出た。


 先を行くヒナがファボラへと一閃。


「ガキが調子に乗るな!」


 歯を剥き出すファボラがその一撃を杖で受け止めた。鉄さえも斬るその一撃を受け止めたその杖で、ファボラはヒナの刀を弾き、バックステップ。


「喰らうが良い我が一撃――【雷帝斬波(サンダーブレード)】」


 杖の先に雷撃が刃状に伸び、それをファボラが横薙ぎに振る。


「っ! 避けて!」


 ヒナとレダスが屈んで避けて、イザベルの前に立つニルンがその雷の刃を盾で受けた。その瞬間に、雷撃が飛び散り、辺り一帯に弾ける。


「つっ!!」


 避ける余地のないその攻撃で、イザベル達全員が感電する。威力は弱まっているものの、動きを止めるには十分なほどの雷撃だった。


「さて、今度こそ死ね――【火炎乱舞(フレイムダンス)】」


 痺れて床に倒れ、動けないイザベル達に紅蓮の炎が迫る。


「うう……動け……身体……!」


 だが無情にも炎がイザベル達を包み込んだ。


「フハハ!! 生徒殺しがこんなに気持ち良いとはな!! ん? リードマンめ、勝手に逃げたか?」


 もう用はないとばかりにイザベル達を燃やす炎へと背を向けてたファボラの視界にリードマンの姿がなかった。おそらく戦闘中に裏口の方へと逃げたのだろう。

 馬鹿な男だ、とファボラがせせら笑っていると、背後で気配を感じた。


「ん? まさかまだ生きてい――」


 その瞬間にファボラの身体は凍りつき、意識が途切れた。


 廊下には、痺れが取れつつあるイザベル達が立ち上がっており、その前には二つの影があった。


「あんな炎でいい気になってるなんてしょぼい奴。ね、アリアちゃん」

「……魔族の炎と比べられるあいつが可哀想」


 その二人を見て、レダスが声を上げた。


「あんたらは……?」


 すると二人がこう答えた。


「馬鹿兄の代理」

「君達のお師匠の使いだよ」



ファボラさんはゴトランドと何やら悪巧みしてた奴です。

【転移陣】の設置は騎士団の許可がいるので、勝手に設置すると重い処罰を受けます。ゴトランドを利用してどうやらあれこれ準備していたようですが……いまいち要領が悪いですね。

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新作! 隠居したい元Sランク冒険者のおっさんとドラゴン娘が繰り広げる規格外なスローライフ!

「先日救っていただいたドラゴンです」と押しかけ女房してきた美少女と、それに困っている、隠居した元Sランクオッサン冒険者による辺境スローライフ



興味ある方は是非読んでみてください!
― 新着の感想 ―
[一言] 斬鉄を基礎と言い切る嵐桜国怖いw
[良い点] 黒幕っぽいファボラがまさかの小物ムーブで瞬殺されたとはw いやまあ、小物ですけどねw扇動者の役目っぽいしw それにしてもまさかグリムちゃんが素直にアリアと一緒に行動するとはw(何もしてな…
[良い点] イザベル達の活躍特に、ヒナが恐ろしい。ゴトランドたんの遺志を継ぎし者ファボラの悪あがきが早く見たいです。 [気になる点] リードマンやファボラ、ゴトランドたんなどの悪役を書くときって楽しい…
2020/08/31 18:13 退会済み
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