第6話 待ち合わせ
電車に乗って15分ほど。
金曜ということもあってかすごい人の数だ。
電車の本数が多いことで有名な山手線が、毎回人で一杯になるのだから。
予想通り東口に着いた時にはため息が出る。
人、ひと、ヒト。
大人数で待ち合わせをしていそうな集団がいたり、恋人でも待っていそうな人がいたり、そんな彼等を集客しようと飛び回るキャッチ。
場所もわからずに探しても探し人が見つかることはまずないだろう。
奈美は携帯を取り出して一番新しい着信履歴を選ぶ。
機械的な呼び出し音が数回聞こえた後、
「奈美?」
と自分を呼ぶ声がする。
目的の人に繋がったらしい事を知り少し安堵する。
あまり電話をかけなれていないのだ。
「東口着いたけど今どこにいる?」
「ん〜アルタ前かな」
東口駅前から正面に見える広場を越えて、道路を隔ててアルタ前歩道を見渡す。
歩道には人がこれでもかっていうほど溢れている。
「どのあたり?」
「無料雑誌前
「道路側?アルタ側?」
「道路側」
段々と絞り込まれた情報を頼りに視線を巡らす。
携帯を片手に辺りを見回す人を発見する。
「あ〜今日スーツ?」
「そ。まぁ仕事後だし」
多分今自分が見つめている人間で違いないだろう。
「後ろ向いて?道路側」
「こうか?」
見ていた人が声と同時にこちらを向いた事で確信する。
奏司も奈美の事に気付いたらしい。
「そっち行く」
そう一言言い残して携帯を切る。
ヒラリといえばいいのだろうか。
携帯を切ったと思ったら掴んでいたガードレールをなんの予備動作もなく飛び越える。
とても軽々と。
多分見計らっていたのだろう。
信号は赤になっているから車は通らない。
そんな中を奏司は小走りに奈美の所まで行く。
またもやガードレールをヒラリと飛び越え、奏司は奈美の眼前に立つ。
「お待たせ」
そう言った奏司に、あぁカッコイイんだなっと、改めて奈美は思った。