表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
22/33

第22話

第22話



 シャイレンドラ・アリスノートが、アデルハイド王子の暗殺を試みた。

 その報は、すぐにレセルニアスにも届いた。


「バカな! 何かの間違いに決まっている!」


 レセルニアスは、シャイレンドラ本人に会って、直接事の真偽を確かめようとした。しかし、シャイレンドラは現在取調べ中の容疑者であるとして、レセルニアスの要求は却下されてしまった。


「父上! シャイレンドラ殿が兄を暗殺しようとしたなど、何かの間違いに決まっています!」


 業を煮やしたレセルニアスは、ベルナール王の部屋に押しかけた。すると、ベルナール王に事の次第を報告していたアデルハイドと鉢合わせた。


「間違いではない。アリスノートの使い魔が、先ほどオレの部屋に忍び込み、オレを亡き者にしようとしたのだ」

「あの使い魔が?」


 アデルハイドの説明に、レセルニアスは気勢を削がれた。シャイレンドラは、間違ってもそんな真似をする人間ではない。だが、あの使い魔なら話は違ってくるのだった。


「そうだ。奴は、以前もオレを殺そうとしたことがある。おおかた、オレが奴らの違反行為を父上に報告したことを根に持っての犯行だろう。もはやアリスノートに勝ち目がないと思い、仕返しにオレを殺そうとしたのだ」

「デタラメだ! シャイレンドラ殿を陥れるために、貴様がデッチ上げたんだろう!」

「デタラメではない。証人もいる。あの使い魔がオレの部屋にいるところは、兵士たちも目撃しておるからな」

「嘘だ!」

「嘘ではない。ジブリールが、今夜あの使い魔がオレを襲いに来ることを、事前に予知していたのでな。部屋に兵を忍ばせておき、奴を待ち伏せしていたのだ。そして、そうとは知らぬあの使い魔は、ノコノコと現れたというわけだ。逃げ足が早く、捕まえることこそできなかったが、あの使い魔であることは、多くの兵士が目撃している」

「……それは、あのローブ姿をか?」

「そうだ」

「だったら、そんなことは、なんの証拠にもならない。あんなローブや仮面など、その気になれば誰でも手に入れることができる。それを魔法で動かせば、あの使い魔の仕業に見せかけることぐらい、たやすいことだ」

「かもしれんな。だが、それは憶測の域を出ない話だ。事実として、あの使い魔がオレの部屋に忍び込むところを、大勢の者が目撃している以上、あの使い魔も、その主であるアリスノートも、暗殺未遂の容疑者だ。容疑が晴れるまで、身柄が拘束されるのは当然のことだ」


 アデルハイドの言葉に、レセルニアスは気色ばんだ。


「……貴様、それが狙いか。王族の暗殺未遂となれば、たとえ結果的に無実となろうと、身柄は拘束される。そうなれば、シャイレンドラ殿は明日の大会には出場できなくなるから、優勝するというシャイレンドラ殿の予知は外れることになる。そのために」

「とんだ邪推だ、弟よ。確かに、容疑者であるアリスノートは、明日の大会には出場できんだろうが、それはあくまで結果に過ぎん。それに、仮に出場できたとしても、あの使い魔の力を借りられんアリスノートが、大会を勝ち抜くことなど不可能だったろう。あの使い魔も、そう思ったからこそ、オレを直接狙ったのだろうしな」

「それも、貴様の憶測だろう?」


 レセルニアスはアデルハイドを睨みつけた。


「そう思うのなら、証拠を持ってこい。暗殺未遂が、アリスノートの使い魔の仕業ではないという証拠をな。もっとも、そんなものがあれば、の話だがな」


 アデルハイドは笑い飛ばした。


「レセルニアスよ」


 ベルナール王が口を開いた。


「余も、あのアリスノートが、人を殺めるような真似をするとは思えぬ。とはいえ、証人がおる以上、詮議もなくアリスノートを釈放することはできぬ。それが納得いかぬというのであれば、アデルハイドの申す通り、アリスノートが無実である証拠を、そなたが見つける他にない」

「父上の言う通りだ。そして証拠が見つからなかった場合、アリスノートには王族を暗殺しようとした罪により、極刑が待っている。あの女を死なせたくなければ、せいぜいがんばるんだな、弟よ」


 アデルハイドは、勝ち誇った笑みを浮かべた。


「……承知しました、父上。必ず証拠を見つけてみせます」


 レセルニアスはベルナール王にそう言うと、部屋を後にした。

 このときのレセルニアスの頭に、すでに王位争奪戦のことはなかった。

 あるのは、シャイレンドラを助ける。ただ、それだけだった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ