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おそろい、という響きはとても気持ちよかったけど。
「ダメ?」
「ダメっていうか……」
ちらりと鞄を見る。
「キーホルダーとかは絶対イヤ」
「じゃあ何がいい?」
しばらく考えてみたけど、何も思い浮かばなかった。
でも本当をいうとなんでもよかった。
桃花とおそろいならなんだって。
でもそれはもう早紀がやってるから。
早紀の真似になっちゃうから。
それじゃあ『お下がり』と同じだから。
だから──。
「……私だけのものが欲しい」
「瑠美だけのもの?」
「どこにも売ってなくて、誰も持ってないものがいい。私とおそろいで、でも桃花が──桃花だけが持ってるものがいい。代わりに私の上げるから」
「それってつまり……交換ってこと?」
何も考えず、思ったことを口走ったせいで自分でもよくわからなくなってしまったけど、交換という響きはとても魅力的に感じて、私はゆっくりと頷いた。
わがままだってことはわかってる。
きっとそんなのないってことも。
でも、私だけしか手にできないものが欲しかった。
私と桃花だけの特別が欲しかった。




