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異世界でクロスボウ無双する話(仮)  作者: えんえん
2章
38/43

娯楽

「ねえ、ヒロぉもう一回しようよ〜」

ミドーリンが甘えた声で腕に抱きついてくる。


「次が本当の最後だからな」




翌朝までカードバトルは続いていた……


こっちの世界に来て娯楽が少ないというかほとんど無いことに気がついた。

子供が遊ぶ石けりみたいなのはあるみたいなんだが。


カラオケ、ゲーセン、ボーリング、ビリヤード、バッティングセンター、ダーツ、将棋、カードゲーム全て無い。


トランプが特別ではなく、娯楽がこの世界では不足しているのだ。

ミドーリンだけでなく、うちのメンバー全てがトランプの魅力にとりつかれてしまっている。

頭を使って勝敗を決める。運も必要だ。

実際体が疲れている時には、ちょうどいい休憩にもなるだろうし。


結構お堅いヘカトンでさえ、次は七並べしましょう!なんて言ってる。

いや、すでに朝なんだが?


「マイロード、いいカードをくださいまし」


もう寝ようよ?


「ここで勝負だべ」


ねえ……誰か聞いてる?


「いいわ!勝負よ!」


……………





解散した後、昼過ぎまで泥のように眠る。

久しぶりに学生時代の徹夜を思い出す。

トランプは回数を決めてやろう。


そうしないと今後この物語は、異世界でトランプ無双する話になってしまう……



一階に下りると宿屋の親父が眠そうにしている。


「あのトランプってのはヤバイな、やめどきを見失うぞ」


「月曜から夜ふかしですか?」


「ああ、久しぶりに楽しかったよ。トランプ仲間が全員欲しがっているぞ。トランプを」


「もう予備無いので今度作っておきますよ」


「ああ、多分だけど10個や20個じゃ足りなくなると思うぞ?」


「なんでです?4〜5人でやったんでしょ?」


「ああ、4人でやったんだがそのメンバーが他のメンバーにも教えたいって言ってるんだ。しかも全員がだ」


「うーん……」

手作りだと時間かかるんだよなぁ。最初めんどくさいけど版画みたいにして印刷しようか。

あとは厚紙をカットできるような装置もあれば、他に色々使えるかもしれないし。

そして、インクが落ちにくいようにロウを塗るかな。


「わかりましたよ。有料でよければ20個くらい作りますよ。そうですね〜1つ10アデルくらいでいいですか?」


「そんなに安くできるのか?それなら飛ぶように売れると思うぞ?」


「儲けも考えるなら……20アデルってとこですかね?」


「ああ、それでも安いな。だが売れると思う」


「じゃあ20個作成しておきますよ。追加で欲しい時は早めに言ってくれれば作りますんで」


「ああ、頼む」


ちょうどヘカトンが起きてきたのでみんなに今日は自由行動と伝えてもらうようにお願いして、早速版画とカットできる機械を作成する。



ミニーマムさんが版画とかカット、ロウ塗りを手伝ってくれたのでだいぶ早く完成した。後でお礼に何かしないとな。



一応トランプを50セット作る。原材料費は紙とインクとロウで総額20アデルくらいだった。

(カットする機械の方は自分用なので計算に入れてない。)


つまり1個20アデルで売れば、残り49個は儲けになるので980アデルの儲けだ。

作成は版画を掘る時間、印刷とカット、ロウを塗るれば完成する。



自分達の予備用に多めに作ったのでしばらくは作らなくていいだろう。

早速親父に持っていってやる。


「おお、早いな!もうできたのか?」


新しくできたトランプを20個渡して400アデルをもらう。

ついでに新しい遊び方も載ってるルール表もトランプと一緒に渡す。これも版画で作成して薄い紙だがトランプ毎につけてあげる。


ババ抜き、七並べ、大富豪の他にポーカー、ブラックジャック、神経衰弱、スピードも書いてある。

他にも色々あったんだがまあとりあえずこのくらいでいいよね?



「こんなにいっぱい種類があるのか!」

親父は驚いているようだ。


「ところでさ向こうのテーブルに人がいっぱい集まってワイワイしてるんだが何してるんだ?」


「ああ、お前達が持ち込んだトランプでドワーフが遊んでいるんだよ」


結構な人数だな。宿屋に泊まってる以上の人がいないか?

時折ワァ!っと歓声が上がる。


そこへ親父がトランプをもっていくと……


「俺にもそのトランプっての売ってくれないか?」

「俺もだ!」

「いくつらだ?あるだけ買うぞ!」

「何独り占めしようとしてるんだよ、俺にも1個ってくれよ」

「私にもひとつくださいませんか?」

「20アデル?ルール表もついてそんなに安いのか?売ってくれ!」

親父がドワーフに飲み込まれる。


「おい、まずは1人1個だ。それに最初最初の予約した3人が先だぞ」

親父が整列させようとしているが、俺が俺がとドワーフに囲まれ困っている。


しょうがなく

「在庫はあるので、欲しい方はここを先頭に1人づつ並んでください」


ドワーフが一斉に並ぶ。俺の方が先だぞと順番で争うのは売らないと脅したら静かになったw

並んだのはいいのだが明らかに20個では足りない人数だ。倍はいるな。


親父も儲けるつもりはなく20アデルで次々に売っていくがやはり足りない。

しょうがなく残りの30個も吐き出してようやく全員に行き渡る残りはわずか3つだっ


とりあえず940の利益が出たので半額の470アデルをミニーマムに渡す。

「え?いいんですか?」


「働いてくれた儲けの半分だよ」


「こんなにいっぱい……」


本当は版画作成の時間は入れてないから後でちゃんとお返しするよと伝えると、もういっぱいもらっているので充分ですと返された。


なんかあげたっけかな?


まあ後で欲しいものでも買ってあげよう。

などと考えていると


「うっしゃー!」


ドワーフにまぎれて勝負をしていたミドーリンが、お酒を片手に勝利の雄叫びをあげるのだった。

まるでアメリカ大統領候補戦のようだ。

そうトランプだけに。


お後がよろしくないようだが

次回へ続く。



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