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露出と売り物を汚す客

「露出と売り物を汚す客、と」


 私たちはお店の中で正座をさせられておりました。無論、全裸ではございません。

 お店のお洋服を譲って頂きました。ボロ布だけれど、ないよりは犯罪者度低いだろうというお店の方の粋な計らいでございます。


 素晴らしい。このご恩は必ずお返し致します。


 とまれ、今は正座中でございました。

 お店の方は、私の服は仕方がないと証言してくださいました。

 我が一張羅が崩壊する一部始終をご覧になっていたようです。ですから、私は仕方がないと許して頂けました。


 問題はナルさんでございます。

 彼女は私の裸を見て、その刺激で鼻血を垂らしてしまったのです。ご本人曰く、噴射しなかっただけまだマシ、とのこと。


 初心ですね。かわいいです。


 しかし、悲しいかな。

 商品はダメになってしまったのです。鼻血付きですからね。

 美少女の鼻血付き植物辞典。


 これはこれで売れそうですが。犯罪臭が致しますね。私はおそらく買いません、おそらく。


「で、どう落とし前付けてくれるのか?」


 店員さんは鬼のような形相(実際に鬼さんを目撃した私にははっきりと断言できます)で、我々をお叱りになられておりました。


 というよりも、異世界でも叱られる側は正座なのですね。私の世界でも日本くらいの伝統だと勘違いしておりました。


「はい」


 私は叱られてもなお、元気よく挙手します。


「私のスキル『創造せよ、至高の晩餐(メーカーオブマグナト)』を使ってーー」

「却下」

「ええー!?」


 どうしてでございますか。私のスキルは凄いですよ。だって、スキル名に至高のって付いていますし。

 それはつまり至高ということですよ。至高でございますよ。ちょっと凄いというレベルを軽く超え、圧倒的に凄いまでありますよ。


「スキルは信用ならない。幻覚系のスキルだったり、洗脳系だったり。スキルはどれも人の想像を遥かに超える」


 私の力が信用できない、のですか。まあ、確かにそうですね。店員さんからすれば、私のスキルは未知中の未知。


 大切な商売に関わらせて良いものではございません。

 では、我々はどうすればよろしいのでしょうか。


 今回ばかりは、私たちはきちんとした犯罪です。店のものを勝手に汚してしまったのですからね。

 そして、それを弁償するだけの金銭も所持していません。


 謝罪するしかありませんね。


 私が冷静になり、危うく土下座にまで至りそうになりました。それを止めてくださったのは、隣で正座をして足を痺れさせているマグさんでございました。


「それは魔界族の決闘の合図」

「でしたね」


 商品を不慮の事故で汚したのならばともかく、これでは強盗になってしまいますよね。慌てて頭を上げました。


 どうしましょうか、と再度悩みの坩堝に侵入しますと、ナルさんが今度は挙手なさいました。


 やっておしまいなさいませ、ナルさん。


「妾たちはギルドで世話になっている。だから身分証明はできる。また、ギルドへはまた必ず寄る」

「だから?」

「丁度妾たちはそなたたちの依頼を受けている。それを遂行する」

「それは当然だろう」

「それにプラスして、他の仕事も無料でしてやる。代わりに、その妾が汚した本をくれないか?」


 他の仕事も無料でやる。

 その言葉の意味。私たちが一つ目の依頼を達成できる実力を持っていた場合、向こうもある程度の仕事をこちらに任せられるでしょう。

 それを無料で行えるのです。


 店側に損はありません。

 あくまで私たちが逃げず、また依頼を達成できれば、でございますけれどもね。


「そうか。ギルド員か。名前は?」

「私が青方あおかた君次きみつぐ、魔界族の猫耳が素敵な方がマグさん。少しだらしないのですけれども、高貴な雰囲気を纏っている方がナルさんでございます」

「わかった。名は控えた。スキル持ちと質の良さそうな魔界族。後は小娘か」


 ナルさんが妾だけ小娘って、不運だぁ。と、嘆いております。


 一応、ナルさんもスキルをお持ちですが、秘匿しておくに越したことはございませんよね。


「わかった。では、お前たちにはその本をやる。代わりに、とある任務を同時に遂行して貰う」

「はい」

「だが、その本を頼るということは駆け出しだろう。同じ採取系にしてやる」


 店員さんの温情により、私たちは九死に一生を得たのです。

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