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49話

数分後、オリエント・スクエアの正面に、市の職員と、威圧的な解体業者の集団、そして巨大な重機が姿を現した。


夜明け前の午前5時。オリエント・スクエアの正面玄関前に、市職員と警備員に囲まれた阿部俊介が現れた。彼の背後には、ビルを威圧するように巨大な解体用の重機が停車している。青白い街灯の下で重機が吐き出す黒い排気ガスは、凍てつく空気と混ざり合い、不気味な霧となってアスファルトを這っていた。阿部の表情はサーチライトの強烈な逆光に射抜かれ、蒼白な面に焦燥と怒りが深く刻まれている。彼は先ほどの電話で佐藤に突きつけられた拒絶を、目の前の建物を粉砕することで上書きしようとしているかのようだった。


阿部は、拡声器を手に冷徹な声を響かせた。「オリエント・スクエアの住民の皆さんに告げる。このビルは老朽化による崩落の危険があるため、市の命令により緊急に解体作業を開始する。直ちに建物から退去せよ!これは市民の安全のための正当な執行である!」


その声は深夜の静寂を暴力的に引き裂き、建物全体に反響した。正面玄関は、テナントたちが集めた家具や在庫で築かれたバリケードによって塞がれていた。リセッタの木製の椅子、メルティのハンガーラック、誰かが何十年も愛用してきた事務机。それらは、この場所で積み重ねられてきた日々の重みそのものだった。


バリケードの向こう側から、小川葵が力強く叫んだ。「あなたの執行は違法です!私たちは、阿部議員の個人的な過去を隠蔽するための、この暴力的な解体を認めない!」


葵の背後では、住民たちが互いの肩を支え合い、震える手でバリケードの柱を握りしめていた。建物全体が、重機のアイドリング音に合わせて小刻みに震えている。阿部は激高した。「黙れ!私は未来のために動いている!過去など…」


彼の言葉は、解体業者がバリケードに組まれた棚を打ち破り始めた轟音によってかき消された。ついに、物理的な衝突が始まった。鋼鉄の爪が正面玄関のガラスを粉砕し、室内の温かい空気が一気に冬の夜気へと吸い出されていく。バリケードの隙間から埃が舞い上がり、砕けた木材が乾いた音を立てて弾け飛ぶ。


テナントたちは自分たちの店の商品や思い出の品を守るように、バリケードの裏側で抵抗した。ある者は押し寄せる作業員の重圧に必死に抗い、ある者は壊れゆく家具の破片を拾い集めては隙間を埋めようとした。しかし、重機と訓練された作業員を前に、彼らの抵抗は長く続かないことは明白だった。

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