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怪盗勇者アルセーヌ  作者: 十河 水屑
Chapter2, 新学期とギャル勇者
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Ep2-SS2 しぃちゃんって呼びたい


«SIDE-水倉»




「あっ、今日はあーし担当の日だから先帰るね〜」


「おつー」


「言うまでも無いと思いますけど、気を付けて下さいね」


「しぃちゃん心配し過ぎ〜」



 ケラケラと笑いながら茶瑠兎(たると)が教室を出る。この前のようなイレギュラーさえ無ければ、レベル3でも結構強い方らしいあいつがやられるなんて事は早々無い。もちろん、油断はダメだけど。



「私たちも、帰りましょうか」


「おーう」



 ウチは口数が多い方ではないので、茶瑠兎が居ない時の会話は大体こんなものだ。別に話す気が無いとかそういう訳じゃなくて、普通にそういう性格なだけ。⋯⋯むしろあいつがお喋り過ぎるだけとも言える。

 だけど他人から見るとウチの言動はどうやら、愛想が無いとか圧が強いと受け取られるらしい。そのせいで今までロクに友達なんて出来なかった。別に友達が欲しいって思うことはあんまり無いけど、茶瑠兎が居てくれて良かったと感じることは多い。



 ⋯⋯まあそんな話は置いといて、しぃちゃんはその辺も理解してくれてるっぽいからウチも変に気を遣わなくてこうして落ち着いていられる。ほんとに良い奴。



 あまり褒められたものじゃないのは本人もちゃんと分かってるけど、アルセーヌのプライベートを詮索するのを提案した茶瑠兎の判断は結果的に大正解だった。⋯⋯初めて会った時から、大事なとこはマジで外したこと無いんだよな。実は勇者の能力だったりせん?



「今日はなんか機嫌良さそうですね?」


「⋯⋯そんなこと無いし」



 嘘。ほんとはちょっとだけご機嫌だったりする。最近茶瑠兎ばっかりしぃちゃんを独り占めするから、2人きりって実は初めてなんだよね。


 ウチだってしぃちゃんと仲良くなりたいのに。まだお出かけも出来てないし、⋯⋯その、実はまだしぃちゃんって、直接呼べてないし。


 ⋯⋯いや、許可は貰ったんだから自由に呼べば良いんだろうけど、コミュ力お化けの茶瑠兎と違って距離の詰め方なんて分かんないし。そんな、あだ名で呼ぶなんて普通にハードル高いんだわ。

 茶瑠兎のやつ、アルセーヌのことを調べてる時はあんなに慎重だったクセに。⋯⋯ていうか、調査はともかくいつの間にか勝手に仲良くなってるのは違くない?ほんと、変な対抗心燃やすんじゃなかった。


 ⋯⋯許可を貰った手前、いつまでも呼ばないのもそれはそれで微妙に気まずいし。



「そういえば」


「?どうしたんですか?」


「しぃ、なって妹いるんでしょ」



 ⋯⋯日常会話の中で自然に呼ぶ作戦。日和(ひよ)って余計に不自然な感じになった。



「また唐突ですね」


「茶瑠兎から聞いた。遊んだって」


「遊んだというか、出掛けた先でたまたま会ったというか⋯⋯。成り行きみたいなものですよ」



 それも聞いた。茶瑠兎のバ先にたまたま遊びに来てたって。⋯⋯ずるくね?ウチだって遊びたいが??



「ウチもしぃ⋯⋯な、と遊ぶ」


「前もそんな話しましたね」



 校外学習から皆忙しくて、結局あれから1回も遊べてない。帰り道に2人揃うのですら前よりも減っている。



「せめて放課後に寄り道くらい出来たら良いんですけどねぇ⋯⋯」


「んじゃ今からしよ」


「今から?別に良いですけど」



 しぃちゃんは自分から誘うことはほとんど無いけど、こっちから誘えば大体着いてきてくれる。野良勇者でスケジュールに融通が効くからって言ってた。



「どこ行きます?いつものカフェですか?」


「今日は別んとこ」


「当てがあるなら任せますね」






× × ×






「⋯⋯ゲーセン、ですか?」


「うん。久しぶりに来よっかなって」



 どうせなら茶瑠兎とはあんまり行かない場所ってことで、学校近くのゲーセンに来た。

 茶瑠兎に比べるとしぃちゃんはサブカルも知っていそうだから丁度良い。



「月島さんとは来なかったんです?プリクラとか沢山撮ってそうなのに」


「プリは最近割とどこでも撮れるから。⋯⋯茶瑠兎、ゲームクソ下手なんよ」


「ああ、なるほど⋯⋯」



 多分だけど、ゲームの中の自分を操作するって感覚に慣れないっぽい。シンプルにゲームを全然やったこと無いってのもあるだろうけど。



「⋯⋯私も別に上手くはないですよ?」


「それでも絶対茶瑠兎よりはマシ」


「そんなにですか⋯⋯」



 そんなになのだ。操作が覚束無いとかもはやそんなレベルじゃない。マ〇カーをすれば必ず周回遅れの最下位で、スマ〇ラをすればレベル1のCPUと時間いっぱいまで泥仕合をするか自滅して負け、一緒にゾンビゲームをしたら実質置き物と変わらない仕事ぶりを見せてくれる。そのクセ運は良いから、UFOキャッチャーは茶瑠兎が欲しがったやつだけなぜかほぼ一発で取れる。確率機仕事しろマジで。


 ⋯⋯なんか色んな意味で見てて悲しくなるから、茶瑠兎とはあまりゲーセンには行かなくなった。行くとすればボウリングとかも出来る方の施設だ。



「物欲センサーですねぇ⋯⋯」


「ウチが欲に塗れてるって?」


「そ、そういう訳では⋯⋯」


「ふふっ、冗談だし」



 いつまでも店の前で喋るワケにもいかないから、まだ少しわたわたしてる志依奈の手を取って店に入った。



 で、エアホッケーとか音ゲーとか、勝負できそうなゲームはほぼやり尽くしたんだけど⋯⋯。


 ⋯⋯結果は、ウチのボロ負け。



「⋯⋯クソ強いんですけど」


「いやぁ、あはは⋯⋯」



 別に上手くないとか、大嘘やんけ!!⋯⋯って、ついエセ関西弁が出てしまうくらいそれはもうボコボコにされた。

 レースゲームだけ勝てたけど、他はマジで歯が立たなかった。エアホッケーでストレート負けとか、生まれて初めて見たんですけど。



「勇者になってから初めてこういうゲームやったんですけど、その、身体能力が滅茶苦茶上がってて⋯⋯」


「⋯⋯あー、そゆこと」



 レベル2のウチじゃ初めから勝負にならないってワケね。⋯⋯レースゲームだけ勝てたのは、操作するのが自分の身体じゃないからってコトか。



「でも茶瑠兎は弱かったけど」


「⋯⋯何故でしょうね」



 ⋯⋯結局センスの差では??元からそれなりに出来るやつが勇者の加護を得たらこうなるんかね。



「なんか、ごめんなさい⋯⋯」


「別に良いよ。誘ったのウチだし、珍しい経験出来たから」



 いつぞやボコボコにされてた茶瑠兎はこんな気分だったのかもしれない。



「しぃ⋯⋯なじゃなかったらシバいてるけど」


「結構怒ってるじゃないですか!?」


「⋯⋯うるさい」


「や、やめへくらひゃいぃ」



 けどやっぱり悔しいからほっぺたは抓っておく。⋯⋯顔触っても指にファンデ付かないのおかしくね?



「マジこの肌バグだろ」


「あぅあぅぁぁ⋯⋯」



 モチモチ過ぎて手が離れない。しばらくビヨンビヨンやってたら流石に腕を掴まれた。



「そ、そろそろ痛いです⋯⋯」


「あ、ゴメン」



 ⋯⋯痛くなるまではやられっぱなしで居てくれるんだ。前から思ってたけど、しぃちゃんってちょっとズレてるよね。天然というか、純粋というか。何となく押しに弱そうに見えるのもその辺が原因な気がする。



「⋯⋯水倉さんじゃなかったら怒ってますよ?」


「へぇ、どうやって?」


「えっ!?そ、それは、その⋯⋯」



 ⋯⋯可愛すぎんか?男子だったら一発でオチるぞこれ。

 最近ウチらもしぃちゃんのこと結構分かってきたんだけど、この子は素でこう(・・)なのだ。今のとこ茶瑠兎とウチにしか見せてないっぽいけど、男子に知られたら本気で危ないと思う。



「⋯⋯すみません、他の人とこんなに気安く接する事が無いから分からないです」


「ぐはっ!」


「えっ!?ど、どうしたんですか!?」



 ⋯⋯ダメだ。これは絶対にダメだ。天然タラシが過ぎる。



「ウチらが守らなきゃ⋯⋯」


「ほ、本当にどうしたんですか??」



 こうして話す前は、しぃちゃんに対してあんまり良い印象を抱いてなかった。だって学校では静かなのに、勇者の時は180°雰囲気違うし。ぶっちゃけ絶対にヤバい人だと思ってた。


 元々の喋り方は多分アルセーヌの方だと思う。けど性格は変わらない。どちらも優しいしぃちゃんだった。

 きっと何かがあって今の敬語口調になったんだろな。⋯⋯ウチらにそれを教えてくれる日は来るだろうか。



「⋯⋯しぃちゃんともっと仲良くなりたい」


「んぇ!?な、何ですかいきなり!」



 しまった、つい本音がポロッと⋯⋯。



「しかも今、しぃちゃんって⋯⋯」


「⋯⋯あ」



 ⋯⋯やっちゃった。いや、いつまでも呼べずに悶々するよりは逆に良かった?



「やっと呼んでくれましたね」


「⋯⋯やっぱ今のナシ」



 ⋯⋯無理、恥ずすぎる。ウチの柄じゃないし、そもそも今更感がハンパない。



「えぇ〜、なんでですか〜?」



 手で熱くなった頬を隠すウチの顔をしぃちゃんが覗き込んでくる。



「⋯⋯今日の志依奈(しいな)イジワルなんですけど」


「ふふ、日頃のお返しです」



 口角が上がったニヤニヤとしたしたり顔は、どこかアルセーヌの面影を感じさせる。普段のしぃちゃんにしては珍しい表情だ。


 色々あったけど、校外学習のお陰でウチらの絆は確実に深まったと思う。こうして気軽に放課後寄り道出来るようにもなったし。

 きっかけはともかく、今こうして大切な友人たちと楽しく過ごせるのはしぃちゃんの影響が大きかったとウチは思ってる。



「⋯⋯今日はありがと」


「ど、どうしたんですか改まって」


「んー、急に言いたくなった的な?」


「そうですか⋯⋯」



 本人にきっと自覚は無いけど、しぃちゃんはどこか『勇者としての責務』に固執しているように見える。当たり前のように人を助ける。それが自分のやるべき事だと信じてるから。

 でもそれって、⋯⋯いや、今気にしても仕方ないか。



「⋯⋯こちらこそ、ありがとうございます」


「次は茶瑠兎も連れてこよ」


「え、月島さんゲーム苦手って⋯⋯」


「たまにはいいっしょ、多分」


「そ、そうですか⋯⋯」



 既に借りが幾つも積み重なってるくらい助けられてばっかだけど、いつかウチも助けられるようになりたい。



「今日負けた分茶瑠兎ボコってやんよ」


「それは八つ当たりでは⋯⋯」



 今日もあっという間に、だけど緩やかにウチらの放課後は過ぎていく。




この話とは全然関係無いんですけど、普段口数の少ないキャラが心の中ではめっちゃ喋ってるのって良いと思うんですよ。全然関係無いんですけど。


ちなみにしぃちゃんは女子として初めて仲良くなれた友達+それはそれとして可愛い女子と距離が近くて恥ずかしいためこんな反応になってます。なので水倉さんたちが懸念しているような事態は絶対に起こりえません。男子諸君は悔しかったらTSして出直してね。



ここまで読んで頂きありがとうございます。

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