ビッチビッチ ジャブジャブ ランランラン
桜は思う。
私は、雨が好きだ。
水たまりに足を入れてしまって靴下までびしょ濡れになっても。
整えた髪に無数の水滴が降り注いで崩れてしまっても。
デートの日に時間をかけて仕上げたメイクが落ちてしまっても。
相合傘をするための傘が、そこになくても。
雨が悪者だからこそ。
雨の日でも一緒にいようとする人は、大切な存在だという想いを伝えることができる。
そんな雨を、愛おしく思う。
出会うまでの私達は、孤独でした。
私は人との関わりを避け、絶望に引きずり込もうとする幼馴染に付きまとわれ。
彼は中学時代からの想い人との恋が叶うこともなく。
お互い、人との関わりをないがしろにしていた時期もあったけれど。
私達が結ばれて幸せになったのは、お互いが心の穴を埋め合うような、奇跡的なボーイミーツガールを果たせたからというよりも。
孤独の時間を過ごしたそれぞれが、それでも人と関わることを最後には諦めなかったからでしょう。
明るいクラスメートと、ファミレスにもボーリングにもカラオケにも行けなくても。
昼休みは図書館で寝て、昼食は人気の少ない時間帯で食べていても。
学校で。職場で。何かの集まりで。
自分が孤独だと感じるような。
受け入れてくれない他者を恨むような時があるかもしれないけれど。
私たちはこれからもきっと、人と関わろうとする気持ちを手放さない。
私たちは、私たちが、透明で居続けることをよしとしない。
だから、今日、鮮やかに。色付くことができたのだと思う。
大切な存在が、傷ついて、消えてしまいそうになったら、ちゃんと言葉にして伝えよう。
何があっても、私はあなたを認め続ける。
信号が青になった。
二人はあるき出す。
桜は空を見ながら、言った。
「あしたてんきに、なあれ」
雨のち、雨。
それでも、二人は笑う。
(完)
【参考文献】
『雨の言葉辞典』(倉島厚著 講談社学術文庫)
『雨の名前』高橋純子 佐藤秀明 (株式会社小学館)
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