ただ一つの願い -side アイシャ-
ーー私は、姉が嫌いだった
安全な場所で、私の事を願う立場の姉が
嫌いで仕方なかった
私より最初に生まれただけで
姉は国の為に愛される存在だった
それに対して私は姉よりも後に生まれただけで
魔物に憑かれ死んでいく立場なのだ
その事が本当に許せなかった
私が幸運だったのは姉が馬鹿で優しかった事と
少し私は要領が良く母に愛された事だろう
私達の顔は誰もが間違うぐらいに同じで
だけど私の母は要領の良い私を愛した
要領が悪かった姉は
母に嫌われる代わりに父に愛された
だから姉の提案で互いに入れ替わって
両方の親を嫌わずに愛せたのは
姉の優しさがあったからだ
それでも私は姉が嫌いだった
彼女の全てが嫌いだからこそ
私は姉の好きになる相手を奪おうとした
それで全ての歯車が狂ってしまっても
私は姉を壊したくて仕方なかった
それが私の、ただ1つの願いだった
ーー目の前に私の姉が居た
大嫌いだった姉と
その隣に姉から奪った恋人との子供達が居た
だから思わず声に出していた
「‥どうして?」
それに答えたのは私が過去に
姉の元へと送り死んだ筈の人だった‥
「君は勘違いしてた‥君が愛した人は俺だ
俺とコウは入れ替わってたんだ
そう、こんな風にね」
私が嫌いな人であるハクが目の前で
何故か私の愛した人であるコウとなる
ーーどういう事?
ぐるぐると考えて理解した
[魔の技]だと
スピルートには代々、魔の技が受け継がれる
フラルメイリーに双子が生まれた際の
最初の刻印をするのもスピルートだ
それは私が双子を産んだ時に知った筈だ
だから私は私自身が双子を産んだ時に
フラルメイリーに残っていた方法で刻印したのだ
他に存在していた
どうして忘れてた?知らなかった?
それは姉しか受け継がれないから
私達は立場が違ったんだ
姉はスピルートやフラルメイリーの為に
私は双子として魔物の贄姫として
教えられる事が違ってたのだ
姉は、馬鹿だったが
勉学の時は絶対に入れ替わりをしなかった
まさか、その事が今に繋がると知っていたなら
私は入れ替わりをしなかっただろう
ーーもう駄目だ
私は思わず目を瞑る
良く夢に見る声が聞こえる
[会いたい].[寂しい].[助けて]と
私達の子が手を合わせ祈っている
不思議と嫌な気分にならなかった
私が愛した子供達だったからかもしれない
部屋に眩しい光が灯り思わず目を閉じて
再び目を開ければ、謎の少女と不思議な魔物が
黒い空間から出て来た
「……あれは‥‥」
「え?何で?どういう事?」
リコリス達が何か驚いている
[お母さん、もう終わりだよ
今まで全て巻き込んで来た
だけど、もう終わり、行こう]
不思議と少女から声が聞こえた
私は思わず声に出して問いかけた
「?貴女は?どうして私を
お母さんと言うの?」
[今の姿は借り物だけど
私はリコリスだったの‥お母さん
お母さんが寂しい思いをしないようにね
姿は変わったけれど
お母さんなら、私を分かるでしょう?]
「ええ、ええ、そうね
貴女は‥優しい子だった
姿は違うけど、貴女もリコリスね
でも、此処に居る私の子供は?」
[彼女もリコリスよ
魂が違うけれど、彼女もリコリス
貴女が産んで育てた大切な子だから安心して
お父さん、アリシアさん、今度は
ちゃんと幸せになって
リコリス、ありがとう
私を救ってくれて、ありがとう
彼らにもありがとうと伝えて]
[もう良いか?行くぞ?]
[はい、母さん、行こう]
私はリコリスの魂を持つ不思議な少女と共に
暗い暗い道の先へ向かう
寂しさも悔しさも何故かなかった
優しい娘だった魂に導かれるままに
私は、フラルメイリーから
この世界から消されるのだった‥‥‥




