閑話前半 -side ハルジオン・サルビア-
リコリスとフリージアがコウに
会ってた頃からドラグルートまでの小話
ハルジオンとサルビア編
-side ハルジオン
ドラグルートの森に来るのは何回目だろう
何度も来た道なのに、今までと違うと感じたのは
彼女達が今までと違う存在だからだろうか?
そんな事が頭の中で浮かび消えた
ドラグルートに来るまでに
アヤメさんから様々な事実を知った
コウ様とハク王子が双子であった事
今までリコリスさんがコウ様と思ってたのは
スピルートの王族が稀に持つ"魔"の力で
見た目を偽装していたという事
何度も繰り返した中で
そんな事を聴いた事もなくて、信じれなかった
けれど、リコリスさんの隣に座って
アリシア姫に話す際にハク王子も来られて
リコリスさんが真実を語る時に
ハク王子から直接、語られたのだから
本当に真実だったという事だ
その真実を知って私は
リコリスさん達の事を恐ろしく感じた
私が此処で聴いた全ての真実を
語る事さえも出来ないけれど
唯一、彼にだけは‥此処に居ないクリスには
伝えようと思った
ずっと私と同じように繰り返した彼さえも
知らなかった真実だから
伝えるべきだと、そう思って
私はリコリスさんに森の中で相談した
彼女は、クリスなら大丈夫だよ、と
答えてくれたから、帰ったら長い長い話を
彼と話そうと思う
それが選ばれて来れた私が出来る事だから
fin
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-side サルビア
以前から思っていた
私は、本当に彼と付き合って良いのか?と
だから彼と共に行きたいとリコリスに伝えた
彼女は私の意見に応えてくれて‥私は彼と共に
ドラグルートに行く事になった
そこで答えを探したかった
多くの魔物が襲ってくるのを
次々と薙ぎ倒す彼を見て惚れ直した
そして同時に、自分じゃ相応しくないと思った
転生前に好きだった人の魂を持った人
転生前に好きだった人に良く似た人
転生前の世界では"存在しない人"だったのに
過去と今は違うのは自分でも分かっている
けれど、けれど大好きになった
好きになってしまった
最初は転生前に好きだったからという理由で
そんな理由で興味があって声をかけた
話すうちに"ゲーム"と違う彼を好きになっていた
本当に本当に好きだから、側に居るべきじゃない
私じゃ、彼に相応しくない
ーー私は彼を‥‥好きだから、離れたい
ドラグルートの森を進むにつれて、そう思った
私は、リコリス達が立ち去った後に
まずアヤメとハルジオンに声をかけた
「本当に凄い所まで来てしまったわね
‥少し息抜きもしたいから私は外に出るけれど
アヤメとハルジオンは?どうする?」
「あ、そうですね‥少し考えたいんですが
此処で何か飲みながら待つ事にします
アヤメさんは?どうされますか?」
「‥私はハルジオンの側に居よう
何か聴きたいなら私が答えて相談に乗るさ」
「そう、アンシャンテ、貴方は?」
「‥君が1人になるだろう?
なら俺は君の側に居る」
「そ、そう、少し外に出てるわ
この家の近くだから安心して話して」
「分かった‥アンシャンテ‥サルビアを頼んだよ
私はハルジオンと此処で待ってるから」
「ああ、勿論だ」
私はアンシャンテと共に部屋から外に出て
家が見える場所の付近で座った
「‥‥‥はぁ」
私は座ると、思わず溜息をした
アンシャンテは
「珍しいな、君が溜息をするなんて」 と
少し驚きながら私の隣に座った
「そう?ねぇ‥アンシャンテ
私ね、私、貴方の事が大好きよ」
「っ///君は本当に、そう言う事を
躊躇いなく言えるのは‥凄いな」
「ふふっ、ありがとう」
「‥俺も……俺も君が好きだ」
彼の言葉に思わずドキッとした
まさか彼から、そんな言葉を聴けるなんて
本当に思わなかった
「……珍しいわね、貴方が
そんな言葉を言うなんて」
「……君が何か悩んで決意したように思えてな
口にしないと伝わらないと
フリージアに言われたのもあるがな」
「仲良いの?フリージアと」
「此処に来て共に行動するようになってからだが‥な
話す機会は見張りとかの少ない時間だったが‥
今までの彼とは少し違う雰囲気になっていた
‥それが俺は少し気になって理由を尋ねたんだ
そしたら彼が"自分らしく生きて思ったり
言いたい事は口にするようにしただけだ"とな
‥その言葉がキッカケだろうな」
「そう、実はね‥私、貴方が好きだから
私が貴方と居ない方が
貴方が幸せになれるんじゃないかって
‥そう考えたの、此処に来るまでに」
「‥どうしてだ?」
「だって、私は転生者なのよ?
貴方の事を知りながら近付いて騙してた
‥ハクさんと同じじゃないの‥私
そんな私が、貴方と相応しくないわ
‥私はね‥好きだから
好きな人には本当に素敵な人に側に居て欲しいの
私じゃ相応しくないの‥私は‥あ‥」
貴方に相応しい人じゃないのよ‥と
そう紡ごうとしたのに‥
紡ぎかけてた瞬間に
彼の顔が真正面に来て私の額にキスをした
そして彼は
「君が俺に相応しいかは俺が決める
俺が好きになる相手もだ!
‥俺を一番、分かってくれて、相応しいのは
君しかいないだろう?
転生者?そんなの俺には関係ない
君は君だ、俺が好きな人を俺が大切なのは
俺が守りたいと思うのは君だけだ
自分を傷付けるような事を言うな!サルビア!」
彼は怒りながら再び
私の顔に近付いて口の近くの頬にキスをした
涙が出ていたはずなのに
そんな事すらも忘れるような行動をした彼に
少し驚きながら私は‥先程の彼の行動を思い出し
思わず頬を赤らめながら彼を見る
すると彼も照れているのか顔が真っ赤になりながら
「いいか?次に君が俺に
相応しくないとか言うなら‥その唇を奪うからな!?
本当に‥恥ずかしいが‥それで君が泣き止んで
自分を肯定する事が出来るというならば
俺は俺自身を使って君を泣き止ませてみせる!
良いか?サルビア‥俺は君が泣く姿を見るのは嫌だ!
君が泣く理由が君自身の事ならば
俺が君の側に共に居て君を肯定する
だから、君は君らしく、ありのままいろ!
そんな君が俺は好きなんだ‥‥良いな!?」
彼は怒りながら、彼の頬を赤らめながら
私の真正面に座って叫んだ
不思議と涙が止まって、思わず私は笑っていた
「ふふっ、アンシャンテ
‥‥‥私‥本当に貴方の側に居て良いの?」
「ああ、当たり前だ」
「私、転生者だけど
貴方の事を好きになってもいいの?」
「くどい、君の疑問の答えは全て[はい]だ!
良いな?サルビア!」
「‥‥はい、アンシャンテ」
「俺は君の笑ってる顔が好きだ
‥だから俺の前では、悩んでもいい
転生者だと分かっても俺は君が好きだ
俺は頼りないかもしれないが‥俺は君に頼られたい
‥泣く顔は君に似合わない
俺が俺らしくあれるのは君の側なんだ
だから、君も君らしく、ありのまま
俺の側に居たらいい‥分かったか?」
「……そうね、ごめんなさいアンシャンテ」
「構わない、君が笑顔になったからな」
アンシャンテは立ち上がって
少し私に微笑んで笑って手を差し伸べる
私も彼に向けて微笑んで
彼の差し出した掌を握り返した
私を肯定してくれる私が大好きになった人
私が相応しくないと言えば
相応しいと言ってくれる人
彼を好きになれて良かったと
そう思いながら、リコリス達の帰りを待ち
憂いた心が晴れ明るい気持ちで
フラルメイリーへと戻るのであった‥




