理想の存在 -アマリリス side-
僕が初めて彼女、リコリスと出会って話した時
まるで僕が目標とする女の子だった
僕は生まれてから男の子のような見た目で
家の舞踊と歌劇の跡継ぎとして
"男"として育てられ"女子の理想"を
魅せれるような"男"を日々の生活からも
演じる事が僕の家の"家訓"だった
堅苦しい家に良く遊びに来てくれたのは
唯一の友達だったアンシャンテだった
共に芸を学んでいく中で僕は
"女の子らしさ"が薄れてしまった
僕の理想とする女の子を見つけ
"女"も学ばなくては"芸"の道は厳しいのだ
例え"男"として偽り芸をしても
"女性"も演じられなくては"一人前"ではない
今まで女として生まれたのに
女の子の普通が分からなかった僕の前に
転校して見つけた"理想の少女"だった
そんな彼女とは演劇部という
学校のクラブ活動で同じになって
クラスも同じで良く一緒に居る時が多く
ずっと彼女を観察していた
明るくて優しくて、僕が望む
僕が幼い頃に、なりても
なれなかった"理想の少女"がリコリスだったのだ
しかし僕は彼女を観察しているうちに
彼女を好きになっていた
友達としてとかじゃなく
"男"として育てられた"僕"でもなく
[アマリリス]として彼女を好きなのだ
彼女を呼び止めて僕は告白した
「僕は家の事情で"男"として育って
ずっと女の子の理想の男の子になるようにと
言われきたんだ
でも僕は女の子で‥でもいつからか
僕は自分の性別すら分からなくなった時
両親に"女"の理想も学べって言われて‥
僕の中で理想の女の子を探してたんだ」
「それが私‥ですか?」
「うん、君は僕が幼い頃に
なりたかった自分だった
誰にでも優しくて明るくて誰かに
囲まれて笑うって普通みたいな女の子
それが僕がなかった自分で理想の女の子だった」
「そうなんですね」
「だから僕は君を観察して
君を演じられたら"一人前"になれると思って
ずっと君を見ているうちに
キミが好きになったんだ」
「‥‥」
「ずっとキミを見ていたから‥知ってるけど
でも告白させてくれる‥キミが好きだよ
[アマリリス]として、キミが好きなんだ」
「‥ずっと私を見て知ってるとは思いますが
私には好き人が居ます」
「うん」
「アマリリスさんの気持ちは嬉しかったんです
私もアマリリスを友達としては大好き‥でも」
「そっか‥ありがとう
友達として好きだと言ってくれただけでも
僕は本当に嬉しいよ
キミが好きな人と幸せになれる事を応援する
これからも良い友達で居てくれるかな?」
「もちろんです!」
彼女と手を出して握り合って笑う
わかっていた事だ
彼女を僕を選ばないのも
彼女が誰を好きなのかも
ずっとずっと観察していたんだから
だから、せめて
彼女が幸せになれるように
側で支えたり友達のまま彼女の側で
毎日を楽しく過ごす事は
許して貰えたのだから‥‥
僕は、この先も彼女を見守るのだ
だって彼女の事を友達としても大好きなのだから‥




