君の優しさ -side クリス-
100話の記念!第1話目はクリスから
全部で4話の予定です
お楽しみに!!
彼女達の行方を見守って
見知らぬ空から来た少女が
僕らを見て笑った気がした
その笑顔が以前のリコリスに似ていて
僕は目が離せなくなった
今でも大好きな僕の初恋の人、リコリスが
僕の元にと来てくれた
すると僕の側に居たハルジオンが彼女に話しかけた
「あの、先程の彼女は?誰なのですか?」
「ああ、以前の‥転生前の私だよ
きっと魂は貴女達が良く知るリコリスだと思う
2人に向けての言葉だと思うんだけど
ありがとうって言ってた
リコリスも私の考えだけど輪廻者だったと思う」
彼女の、その言葉に衝撃を受けたけれど
何故だか納得してしまった
部屋に戻って考えるのは空から来た少女の事だった
ずっとずっと初めて話した時から好きで
クロユリから彼女の事を聞いていたのも理由の1つで
けれど彼女と2人で話す時は本当に幸せだった
初めてドラグルートに行くのに
共に選んでくれた時は本当に嬉しかったのと
彼女を何とか救いたいと考えていた
ーーけれど、それは叶わなかった
彼女は僕の見る前で魔物となり
クロユリ、そしてサルビア、アヤメ
そして最後に僕となる前に彼女が、ふと
自我が戻ったのか僕を見て
「‥逃げて、クリス、貴女だけでも
私は、私、友達を、今なら償える
ありがとう、一緒に来てくれて」
そう魔物の瞳から涙が出て
彼女は自我が残る最後の力で
自分自身を殺した筈だった
目が覚めたら僕は自分の家に居て
そして僕は6歳となっていた
それが何度も何度も繰り返されて
何度も大好きな彼女が居なくなるのに
耐えれなくなった時、リコリスが変わった
いつもと違う彼女になったけれど
それでも今まで大好きな彼女に似ていたから
益々と彼女が好きになれた
「‥…もう1度だけ‥声を失っていても
どんな形でも君に逢えて良かった
‥けど‥願うなら…最後に‥」
そう呟きながら用意されていたベッドに倒れ込む
ーーふと部屋の鏡が光って揺らいだ気がした
「‥気のせいかな?」
そう呟きながらも気になるので
鏡に近づくと鏡のガラスが再び光って歪む
すると、リコリスが目の前に居た
「え?何で?彼女は部屋のはずだけど‥」
鏡の中に居る彼女が手招きをしている
僕が鏡に触れると手がすり抜けた
僕は驚きながらも鏡の中に進むと
先程まで鏡の近くに居た彼女はいなくて
ずっと先に進むと明るい部屋に辿り着いた
部屋の中で椅子に座っているリコリスが居た
僕は思わず叫んでいた
「リコリス!!」
そう言って彼女を抱きしめると彼女も嬉しそうに
抱きしめ返しながら
「クリス、私も会いたかった
ずっと私を愛してくれてありがとう…って
これはハルジオンもなんだけれどね
‥それでも私は貴方と話したかったの
今まで、私の全てを聴いて欲しい」
「‥うん、勿論だよ
でも此処は何処なの?」
「‥少し特殊な場所なんだって
私の姿が残っていて貴方が来れる場所を
ラグゥに教えて貰ったの‥って
まずラグゥの事とかも含めて話さないとね」
「‥うん、聴かせて」
僕が、そう言うと彼女は頷きながらも
「‥何処から話したらいいのかな
まずラグゥの事かな、ラグゥは邪神で
人と魔物や国を作った人なの
私が[リコリス]の役目を神様に委ねた時に
神様にラグゥの事を聴いたのだけど
ラグゥは邪神の中でも有名なぐらいに
愉快な人なんだって言ってた」
「‥へえ」
「ラグゥが[パンドラの箱]って言う神様が
大切にしていた"災い"の箱があって
その箱の中に自分の力の一部を受け継ぐ魔物と
災いの箱の鍵を人にして箱の中に入れた
箱の中から作った人に箱の鍵を締めさせて
内側しか開けられない[パンドラ]を作った
後は、伝わる伝承と、今のリコリスが話してたけど
人と魔物が愛してフラルメイリーが出来て
そして私達が生まれた、此処まで大丈夫?」
「うん、大丈夫」
「‥そして私はクロユリに出会って貴方と会って
本当に毎日が楽しかった
自分が王族の生まれと知ったのは最初は少し驚いたよ
でもね何となく国に伝わる双子の刻印なんて
王族以外はしない事が多いから
そうなんだろうって思ってたし
私が想像してたより驚きは少なかった
‥私はね、魔物になる事は嫌じゃなかった
仕方ないし私の役目だとも思った
だから私は本物のアリシア様の元に行った
‥でも受け継ぐ時に絶望してしまった
魔物になって選んだ友達が死んで悲しかった」
「‥僕も最初にアリシア様の話を聴いて嘘だと思った
だから君は2回目の時に
プルメリアと関わるようになったの?
本当の事を知るために」
「‥うん、私は知りたかった
全てを知りたかったけれど諦めた
自分じゃない誰かに委ねて幸せにしてほしい
何度も繰り返す中で‥それが私の願いになった
本当は幸せになりたかった…あの場所で
自分自身で自分が生きる道を探さなかった
私は、私は、大好きな貴方と
生きる道を諦めた、託したの彼女に」
「‥‥え?今、なんて‥」
「‥初めて出会って一緒に居て楽しかった
神様に委ねて私が消えてからも貴方の事を見ていた
私が死なないように頑張ってくれている貴方を見て
何故、諦めてしまったのかって後悔した
彼女に告白する貴方を見て嫌だった
他の人は違ったのに、貴方が私とは違う彼女に
告白するのが嫌だったの!
‥気付いたの、私は、私は貴方が好きなんだって」
「………どうして君は諦めたの
どうして僕を選んでくれなかったの
‥どうして教えてくれなかったの」
「‥貴方を死なせたくなかった
偶々、神様に委ねる機会を得たのは3回目の後だった
この世界に未練のなき人が2人居る
2人は私と同じように輪廻していると
もし2人を巻き込んで箱の中に行くならば
次の相手はハルジオンか貴方にしろと
あと必ずプルメリアを連れて再び死ぬ事
‥そうしたら願いは叶えると神様は言った
私の願いはアリシア様を幸せにすること
自分が生きる道を探してくれる人が良いと
そう伝えて私は4回目にハルジオンを選んだ
貴方の目の前で…死にたくなかったから」
「‥もしかして…この世界に
未練のない者はアヤメとサルビア?」
「‥うん、彼女達は…この世界に未練が無かった
繰り返されている世界が嫌だったのと
自分の才能を自分では活かせない事に葛藤していた
だから、神様の話を伝えると彼女達は
ついて行くと告げてくれた」
「‥…それでも、それでも
何で、僕を好きだと言ってくれなかった
‥何で最後に選んでくれなかったの?」
「‥ごめんね、クリス
大好きだから、最後に選びたくなかった
自分が消えて貴方が幸せになる事も嫉妬したけど
けれど貴方が私を、ずっと思ってくれていたのを
箱の外のラグゥの世界から見て知って嬉しかったの
そして後悔もした、何で諦めちゃったのかなって
‥でもね、私、神様から1つ施しを受けたの
私、貴方達の世界に生まれ変われるんだって
もうリコリスの体じゃないけれど
良く似た声の良く似た人が向こうに居るから
彼女が死ぬ運命で、もし後悔してるなら
生まれ変われば良いって」
「じゃ、また会えるの?君に?」
「うん、ちゃんと記憶も持って
貴方に会えるんだって言ってた
‥何処になるかは分からないけれど
ちゃんと貴方の元に行くから、だから‥」
「‥待ってる、ちゃんと待ってる
だから‥言わせて、僕も君が好きだよ
例え姿が変わっても君が来れないなら僕は
君を探してみせるから‥愛してる
必ず必ず君を幸せにすると誓う」
「うん、私も、私も大好きだよクリス」
2人で抱きしめ合い、そして唇を重ねる
「…ちゃんと待ってるから
そして、向こうで…もう一度、告白するから」
「…絶対に会いに行くよ私
だから私を好きなまま、待っていて
…時間だね、この場所は私が貴方に
伝えたい事を伝える為に作られた場所だから
早くクリスは帰らないと‥
ハルジオンにも、伝えて欲しいな
でも向こうで‥怒らないと良いな」
「大丈夫だよ、ハルジオンも喜ぶさ
まぁ多少の覚悟は必要だろうけどね」
「‥ふふっ、だね
じゃ、またね、クリス、大好きだよ」
「‥うん、僕もだよ、リコリス」
そうして元に来た道を僕は戻って行く
必ず彼女に会える時を信じて
例え数年経っても彼女を待ち続ける
‥いつか、彼女が来ることを願って




