No.12 就寝前
短いです。
「………………」
就寝前。
私はベットの上に寝っ転がって、ここ数日で起きたことについて思いを巡らせていた。
当然、寮の私の部屋には私以外に誰もいない。
「……激動だったなぁ……」
ぽつりと、呟く。
思えば、本当にそうだった。
入学式当日に、いきなり下着姿見られて。……いや、見せてしまって。
私のせいで起きた喧嘩で、重が男子生徒を殴り倒して。……ちょっぴりかっこよかった。
学長室で、重、玲、ほのかと四人で騎士団を組むことになって。
団結成後の最初のクエストは、かなり難易度の高い侵入者撃退任務で。
しかもそれが起こったのは、依頼された日の夜中。
そこで重が、私に本当の力――黒化を見せてくれて。
そのあと、私の過去を――重の傷を知った。
衝撃は大きかった。いや、いまでも全然乗り越えられていない。でも、あのときは重を慰めたくって仕方がなくて――
そこでふと、疑問がわく。
……あれ? なんで? なんで私、あそこで感情を抑えられたんだろう?
玲にはあのときの心境をありのままに言ったけど……今考えてみると、やはりというか不思議でならない。
なんであんなに不安定だった心が、重の泣く姿を見たらべつの感情に塗り替えられたのだろう?
いまでも、私が父さんを……と考えたら、頭がおかしくなってしまいそうだというのに。
それだけじゃない。私が重とたったの二日でこんなに仲良くなったこともそうだ。
いや、仲良くなったというより、私が彼に近づいていってる、と言う方がしっくりくる。
なんで私は、彼を支えたいとさえ思い始めているのだろう?
――――『優姫さんは、やっぱり今も昔も全然変わらないんですね。兄さんと会ってすぐ仲良くなったのも、うなずけます』――――
玲が言った一言を思い出す。
――重が昔みたいに私と接してくれるおかげで、今の私も気兼ねなく重に近づける、てことかな……?
それが一時的に父さんのことを忘れさせてくれる、私にとって一つの現実逃避になっている……?
それとも、全然そう言うのじゃなくって、今の私が単に彼の何かに……惹かれ……て……。
「…………………………………………くぅ」
確定的な結論が出ないまま、私は意識を失った。




