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ひかり〜約束の花〜  作者: せいら
残された親友
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千年前の友

私は、神殿の地下でネヴァが残した「歴史は勝者が語るもの」という言葉がずっと心に残っていて、目の前にある古びた部屋を見つめながら静かに息をついていた。

「まだ奥がある」

レオンが壁へ視線を向ける。

その先には小さな扉があった。

誰にも気付かれないように隠された石の扉。

私はそっと手を伸ばした。

すると。

白い光が扉全体を包み込む。

重い音と共に、千年間閉ざされていた部屋がゆっくり開いた。


俺、レオン・ソレイユは、ひかりの後ろを守るように歩いていたのだけれど、その部屋へ足を踏み入れた瞬間、不思議な懐かしさを感じて立ち止まってしまった。

部屋の中央には丸い机。

壁には花を模した装飾。

窓からは白い花畑が見える絵が描かれている。

まるで。

誰かの思い出をそのまま閉じ込めた部屋だった。

「ここは……」

誰も答えられなかった。

わたくし、アリア・ルナリアは、壁に掛けられた一枚の大きな絵を見つけ、その前で思わず息を呑んでいた。

そこには五人の少年少女が描かれていた。

中央には花冠を被ったフィオラ。

その右にはアルス。

左にはルナ。

少し後ろにはセレナ。

そして、一番端には紫色の花を持った少女が静かに笑っていた。

「五人……?」

私は呟く。

ひかりも絵を見つめる。

「ネヴァ……」

その名前を口にした瞬間だった。

部屋の空気が少しだけ温かくなる。

絵の下には小さな文字が刻まれていた。

『大切な五人の友へ』

私は静かに読み進める。

『太陽が照らす世界で』

『月が見守る世界で』

『花が咲き続ける世界で』

『闇もまた必要だった』

『五人で一つ』

その言葉に全員が黙り込んだ。


俺、シリウス・ルナリアは、その文章を見た瞬間、頭の奥で何かが弾けるような感覚を覚え、知らないはずの記憶が流れ込んできた。

幼いネヴァが笑っている。

フィオラが花冠を作る。

セレナが歌う。

アルスとルナが剣を振って遊ぶ。

五人はいつも一緒だった。

「違う……」

俺は思わず呟く。

「ネヴァは最初から敵じゃない」

その声に全員が振り向いた。


私、佐伯美咲は、その頃現代の図書館で古い本を閉じようとしていたのだけれど、本の最後のページから一枚の写真が落ちてきた。

写っているのは五輪の白い花。

その中心だけが紫色だった。

裏返す。

そこには手書きでこう書かれていた。

『五人で笑った日を忘れない』

私は胸が締め付けられる。

理由は分からない。

だけど。

涙だけが止まらなかった。


私、結城ひかりは、部屋の奥に置かれた小さな木箱を見つけ、その蓋へ手を伸ばしていた。

箱は鍵もなく静かに開く。

中には。

五枚の押し花が入っていた。

白。

白。

白。

白。

そして。

紫。

私は紫色の花をそっと持ち上げる。

その瞬間、眩しい光が部屋いっぱいに広がった。

『ひかり』

優しい声が聞こえる。

目の前にはフィオラ。

その隣にはセレナ。

アルス。

ルナ。

そして。

ネヴァが立っていた。

五人とも笑っている。

『ネヴァは悪い子じゃない』

フィオラが微笑む。

『誰よりも寂しがり屋だっただけ』

セレナも頷く。

『だから私たちは五人で約束した』

ネヴァが照れくさそうに笑う。

『ずっと友達だって』

その光景は一瞬で消えた。

部屋へ静寂が戻る。

誰も言葉を発しない。

だけど、全員が同じことを考えていた。

千年前の真実は。

伝わっている歴史とは違う。

そして、ネヴァは世界を憎んでいるのではなく千年前に失った大切な居場所を、今も探し続けているだけなのかもしれない。


その頃。

闇の国ノクティス。

玉座に座るネヴァは、窓の外に咲く一本の紫色の花を見つめ、小さく目を閉じた。

「フィオラ……」

その声は怒りではなく、遠い昔を懐かしむ一人の少女の声だった。

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