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残像少女  作者: 網笠せい
6 恋人 「Whose doll am I ? Where does the shelf lie?」
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第一話

 翌朝、僕は大学に向かった。久しぶりの登校だ。カバンのなかには、以前登校したときに出た課題が入っている。結構な束だ。僕は文系の学部だけれども、理系の学部は実験で研究室に寝泊まりしている奴もいる。恋人作る暇もないと、よく嘆いている。大変そうだ。


 朝の光がまぶしい。家の前の街路樹の葉っぱが、やけにテラテラとしていた。駅まで歩いて電車に乗る。僕は満員電車に辟易としながら、吊り革につかまった。窓の向こうに見える大きな看板広告の上に、サナが腰掛けている。リボンやレースのついたパラソルを差していた。看板広告が見えなくなると、今度は向こう側の駅のホームで並んでいた。いつもとあまり変わらない。


 視界の端にサナがいることにすっかり慣れた僕は、そういえば彼女の記憶を見たのは電車の中だったなと思い出した。


 サナは僕の視界によく現れる。けれども、ゴスロリ服を着ていないサナ……つまり早苗は、今どこで、何をしているのだろう。連絡先を知っているわけでもないし、ただ彼女の記憶を少し見ただけだ。


 そういえば、彼女は火事に遭っていた。新聞記事やネットで火事を調べたら、早苗のことがわかるだろうか。


 課題を出したあと、大学図書館で調べてみることにした。


 キャンパス内にはたくさんの木が植っている。樹齢何年と書いてある木の横を通るサナが見えた。ヘッドドレスのリボンが木の枝に引っかかって、ちょいちょいと指で直している。


 僕は教務課で課題を出すと、大学図書館へと向かった。どっしりとした建物には窓が少ない。おそらく、日焼けで本が傷むのを避けているのだろう。


 図書館内で検索していると、いくつか同じ授業を受けている学生がやってきた。綺麗な黒髪の、きりりとした印象の女性だ。


 三好さん……だったっけ?


 彼女は僕を見つけると会釈して、するりと横を通り過ぎていく。すれ違いざまに僕のカバンが引っかかって、タロットカードが何枚か床に散らばった。


 この前、焼き芋屋の前でもこんなことがあった。まるで誰かの記憶を吸う意思を持っているようだった。


「ごめんなさい。拾います」

「大丈夫だから、そのまま」


 僕はカードを拾おうとする三好さんを止めたけれど、彼女はするりとしゃがみこんで、まだ真っ白な絵柄の描かれていないカードを手に取った。


 氷の割れるようなピシッとした音が聞こえて、僕はこめかみを指で抑えた。


 三好さん、ごめん。

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