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77本当に愛する人が

明日は完結です。最後までよろしくお願いします。


 その瞬間!


 ガシッ!と私の手が掴まれた。

 「リンローズ。俺に掴まれ!」

 「シュナウト‥でんか?」

 「ばか、いいからほら!反対の手をこっちに。いいかゆっくり引き上げるからな」

 「ばかはそっちよ。そんなことしたらあなたまで引き込まれるわ。地面は避け続けてるのよ。いいから早く逃げて」

 今この瞬間も地面は大きな音を立てて広がっている。裂け目はあっという間に広がって行き割れ目は地の底で大きな口を広げて私を飲み込むのを待っているみたいだ。


 「いいからその手を放して。あなたはこの国の大切な存在。こんな所で命を落としてはいけないんだから」

 「だったらお前もだろう。リンローズは聖女で神の声がきけて‥そんな女を粗末に出来る訳ないだろ!いいから手を出せ!」


 シュナウト殿下の足首には大きな大木に絡まっている蔦が巻き付けてある。

 きっと咄嗟に。

 でも、私を引き上げたりしたら彼の足首は‥ううん、それよりふたりともこの地の底に引きずり込まれたら‥

 「私なんか放っておいて!あなたなんか大っ嫌いなんだから。その汚い手で触らないでよ!」


 そう言った瞬間アシュリーの自信たっぷりの顔が脳裏に浮かんだ。さっきも見たあの顔が。

 思わず背筋が震える。

 どこまで私を貶めれば気が済むのよ。

 シュナウトを篭絡して前世では妊娠までして父は私を殺そうとまでして。

 ふふっ、ばかみたい。最後にはネイト様に裏切られて‥これ以上生きてなんかいたくない。

 シュナウトの掴んでいる手を放せば私はもう楽になれる。

 「シュナウト。もう死にたいの。お願い。行かせて‥」

 何だか惨めで涙がぽろぽろ零れた。


 でも、最後にやるべきことがある。これは私がやらなければならない。

 「セレネーン様。お願いします。私を生贄にして下さい。そしてお怒りを鎮めて下さい」

 私は声の限り叫ぶ。


 「頼む。セレネーン様。リンローズを連れて行かないでくれ!生贄が欲しいなら俺がなる。だから頼む」

 それを遮るようにシュナウト殿下が声を張り上げる。

 何の声も聞こえない。やっぱり許す気はないのだろうか。


 「いいからリンローズ。俺の言うことを聞け!死ぬなんて考えるんじゃない!」

 「でも‥」

 「あぁぁぁ~こうなったら本心を話す。だから‥」

 シュナウト殿下はいきなり顔をぐしゃぐしゃにして歯ぎしりをした。


 「頼む。頼む。頼む。リンローズ。俺はばかだった。お前はいつも俺の事を思ってくれていた。なのに、お前を傷つけてばかりだった。でも、やっと気づいたんだ。お前を愛してるって。ずっと愛してたって‥だから二度と失いたくないんだ。一度死に戻って神様がチャンスをくれた。今度そのチャンスを逃がしたらもう二度と手に入らないってわかるんだ。だからリンローズ死ぬな!俺と一緒に生きてくれ。頼む。俺はお前を失いたくない!」


 一気にシュナウト殿下が魔力を放出した。きっと彼は無意識だ。

 ふたりの身体が宙に浮き裂け目から飛び出し地面の上に転がり落ちた。

 その瞬間シュナウトが下になり私の身体を庇ってくれた。

 「どしっ!ぐぅ‥大丈夫か。リンローズ」

 私は助かったらしい。





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