78本当に愛する人と(最終話)
その時、声が聞こえた。
【はぁぁぁ~これが本物の愛。ねぇ‥わかったわ。認めるわよ。人間にも本物の愛があったって。だから‥もぉ!仕方ない。元に戻すわよ。戻せばいいんでしょ!】
かなり怒り心頭の声だったがセレネーン様は確かに何かを認めてくれたらしい。
「セレネーン様が許してくれた‥よかった」
「ああ、俺も聞こえた。かなり怒ってたけどな。でも、お前が無事でほんと,良かった。愛してるリンローズ。心からお前を愛してる」
「でも、どうだかわからないわ」
「はっ?だってセレネーン様が認めてくれたじゃないか!本物の愛に決まってるだろ!」
ああ‥確かに。セレネーン様にはわかるって言ってったっけ。だったら?シュナウト殿下が私を愛してるって言うのは‥
どうしよう。本気なの?まじ?私を愛してるって言うのは‥
助かったばかりだと言うのに心臓がばくつき胸が痛い。
「おい、リンローズ。さっきから何百面相してんだよ!ったく。人が真剣に愛を告白したのにどうだかわからないだって?」
「悪いけど、もう一度はっきり言ってくれない?」
シュナウト殿下が肩を落とす。
「まあ、今までの行いが悪かったからな。仕方がない。だが、三度目はないぞ‥」
シュナウト殿下は急に畏まって佇まいを正した。
身体をきちんと起こし私の正面に向く。私も緊張して一緒に姿勢を正す。
「リンローズ・コリー。君を愛してる。心から愛してる。だから俺との婚約解消はなかった事にしてそして‥「ストップ。愛の告白なんでしょう?」ああ」
私は彼の胸に手を当てて止めた。
クスッと彼が笑って私の手をぎゅっと握った。
「お前を心から愛してる」
それはまるで魔法の言葉みたいに心の中にストンと落ちた。
あれほど頑なに信じてはいけないと思っていた彼の事が100%信じれると思えた。
「ええ、シュナウト殿下の言う事信じれる気がする。だって、命がけで助けてくれたんだもの。私だって本当はずっとあなたを‥」
ポロリとそれは零れおちた。そう、私はずっとずっと彼を愛していた。
心の奥に秘めていた思いが溢れて来る。
「ばか、泣くな」彼の指がそっとまなじりを拭う。
「泣いてなんか!」
「嘘つくな」
「嘘なんか」
「俺を好きなんだろう?出なきゃとっくに俺の事なんか見限ってたよな」
「もぉ!見限ってたわよ。でも、相手を間違ったし‥」
「俺も。だからお互い様って事でいいだろう?」
「そんなのずるい。だって‥私はまだ純潔なのよ。シュナウト殿下はもう‥真っ黒じゃない!」
「でも、死に戻ってからはまだ誰ともやってない」
「そんなの‥」
ほんの少し躊躇した。
その隙にシュナウト殿下が私の唇を奪った。
上唇にそっと触れて今度は下唇にもふわりと唇を当てる。はっと見上げる私をじっと見つめて「俺の初キスはお前のものだから」
「それ‥」それ以上は言わせてもらえなかった。
腰を引き寄せられ頭の後ろに手が回されて彼の顔が近付いて来て、激しく唇を吸われて何度も吸い上げられて息が苦しくて口を開いた瞬間、彼の熱い舌に割り込まれて口腔内を隈なく隅から隅まで味わいつくされた。
もう‥。
そっと唇を離すと。
「愛してる。もう二度と離さないから」そんなささやきが聞こえて。
いつからそんな優しい男になったのよ。
こんなんじゃ私、すぐにあなたに落ちちゃうじゃない。まぁ、もう多分、ううん、完全に落ちてるけど。
ネイト様の事なんかまったく脳内から霧散してしまい彼との事は何もなかったかのようにすら思えてくる。
だって‥私はシュナウト殿下を愛してたんだし、それを無理やり諦めようとしていたのは事実だし。
だからってあんな奴に引っかかって。もう、腹立つ!
そうこうしていると地面が大きな音を立てて地割れたところが元に戻って行った。
私ははっと今の状況を思い出す。
「セレネーン様ありがとうございます」私はセレネーン様にお礼を言った。
【でも、私達の愛にはかなわないでしょうね】
「ええ、もちろん。そうだ。私、ガイアン大神にお願いします。私の前の世界では年に一度愛する人が会えるって言うお話があるんです。この二人も愛し合って仕事をさぼってばかりで神の怒りを買って離れ離れにされたんですが、まじめに仕事をするならと神様が年に一度会うことを許してくれて毎年7月7日に会えるようになったんですよ」
【で、でも、ガイアン様がきっと許さないわ】
「やって見ます。でも、万が一無理だったら許してもらえます?」
【いいわよ。どうせ無理なんだから】
私はガイアン大神の祈った。
【リンローズ。お前の言うことは一理ある。私もやり方がまずかったと反省した。だから、年に一度創生祭にセレネーンとポトスを合わせることにする。セレネーン。ポトス。これで許せ。だが、これ以上は譲歩せんからな。わかったか?】
【ガイアン様ありがとうございます。リンローズありがとう。あなた達に祝福を送るわ】
「ありがとうございます。ガイアン大神様もありがとうございます。セレネーン様、ポトス神様にもよろしくお伝えください」
【ええ、わかったわ。じゃあ、幸せにね】
セレネーン様は約束を守ってくれた。半壊した家や壊れた塀などは治せなかったが自然の森や川などは元に戻って行った。
それから。
「リンローズ。前の世界ってなんだよ?まだ俺に隠し事があるなら早く言え!」
「あれは‥私じゃない人の話。そう、友達に聞いた話をしたのよ」
私は誤魔化す。
「友達の?そうか。それならいいんだ。これからは隠し事は絶対なしだからな」
やっぱり単純。
「あなたにだけは言われたくないんですけど‥」
「なぁリンローズ。お前さぁ、死に戻ってから何て言うか‥親しみやすくなったよな」
「はっ、いきなり何なんです?」
「いや、絶対性格変わっただろお前」
「っ!」
これって前世の記憶が入ったから?元のリンローズはもっと令嬢でおしとやかで?うわっ、どうしよう‥
「でも、俺‥何て言うか‥今のお前好きだ」
「そう?じゃあよかった」なんだ。良かったんじゃない。
「愛してるリンローズ。お前は?まだ愛してるって聞いてないぞ!」
シュナウト殿下の宝石のような瞳が真っ直ぐに私を見つめる。
私はその瞳を食い入るように見返す。
私だって愛してるわ。
でも、信じていいの?
真面目な顔でそう言われると‥嘘臭い?
ううん、さっきあんなに堂々と宣言したもの。
単純ばかから覚醒したのか?
それとも蛹から蝶に?
類人猿から人に進化した?
さっきから脳内では追いつけない処理がぐいぐい押し寄せる。
何と言うか‥これじゃシュナウトがヒーローみたいじゃ?
一瞬、彼も転生者だったりして‥と脳裏によぎる。が。それはないか。
そう言えば、この小説かなり改編したんじゃない?いいのかな?
まあ、私としてはものすご~く満足できる内容になったと思うけど。
それにしても、なんだろう?
じわじわ押し寄せるこの幸福感。
シュナウト殿下にこんなにはっきり言われてマジうれしい。
何だか照れ臭くってうれしくって何でも許してしまいそうな自分がもはや恐い。
とにかく何て言うか‥彼の言葉はくすぐったくて甘くて蕩けそうで、今まで散々悪態をつくことに慣れ過ぎている私としては‥
もう脳がとっろとっろになってこれが現実かどうかさえも判断できそうではなくてすぐに素直になるには無理でした。
「はいはい。わかりましたよ」なんて適当な言葉しか返せなかった。
「なんだよそれ?俺の事愛してるくせに」
シュナウト殿下は頬にかかった私の髪を耳の後ろに撫ぜつけるとぐいっと私を抱き上げて頭にキスを落とした。
「何よ!勝手に思ってれば‥」
「お前わかりやす!頬、赤いぞ」
「なっ!もう、下ろして!」
「だめだ。もうお前は俺のものなんだからな」
楽しそうにそう言った彼の首に腕を巻き付けた。
「‥うん‥」
私はその温かな胸に顔を埋めた。彼の匂いがした。私が求めていたものがあった。
うれしくて胸が締め付けられて私はぎゅっと彼にしがみ付いた。
「俺達、結婚して喧嘩しても絶対仲直りしような」
「ええ、いいわよ。でも、謝るのは絶対シュナウト殿下からね」
「それ、今言うか?」
「だって、結婚したいんでしょう?」
「ああ、その代わり死ぬまでお前を離さないから」
「いいの?絶対離れないわよ」
「ああ」
きゃあっぁ~幸せ過ぎる。
そして私は油断した。
「愛してる」
私はほんとに小さな声でつぶやいた。
シュナウト殿下が「お前なぁ‥そんなのとっくにばれてるから」そう言ってうれしそうに笑った。
*~*~*
その後すべての神宿石は元の状態に戻り結界も安定した。
ドーナン殿下が国王として即位しておじいちゃんはベナン伯爵殺しの指示を出し長い間国費で私腹を肥やしその金で貴族たちに賄賂をおくり見返りを得ていた証拠が見つかって死ぬまで辺境に幽閉されることになった。
送られた辺境はカルキース辺境伯領で厳しい生活を送っていると聞いた。
アシュリーは捕まり今度こそ戒律の厳しい修道院に送られた。逃亡は決して出来ないらしい。
私は王都を引き上げコリー領に戻りシュナウトは王位継承権を放棄してコリー侯爵家の入り婿として私と結婚した。
執事のバーナードは引退して家族と過ごすそうだ。スーザンはどこまでもお供しますって言ってくれてコリー領に来てから張り切っている。
今は生れてくる子供為にと育児の勉強をしている。ほんとにありがたい。
国の民は今回の事で心も新たに清く真面目に働かなければ神様の罰が当たると気持ちも新たに国の復興に邁進している。
そんな訳で今日もシュナウト。ああ、もう殿下じゃなくなったので。
シュナウトは領地経営についてスタンから厳しい教育を受けながら厳しい?フフフ、辛いかも、そんなの当然!
でも楽しそうに毎日を送っていますから。
「リンローズ。俺頑張るからな。愛してる」
ねっ、私すごく幸せです。
~おわり~




