50ブルト・ロンドスキーの思惑
しかし‥シュナウトが西の辺境伯領に結界の修復に行きたいと言った時には驚いた。
今まで食うか女と寝るかくらいしか能のなかったあいつが。
まあ、それもいいだろう。あいつにはかなりの魔力がある。それを使って民に王族の価値を知らしめることは価値がある。
民もシュナウトが魔力を持っていると知れば生まれて来る子供にも期待することになる。
まあ、いずれふたりの間に王子が生まれればシュナウトは邪魔だ。薬でも使って役に立たんようにしてしまおう。
そして私の孫を次の国王とするのだ。それまでは何としても私は国王代理をやめるわけには行かない。
だがな、リンローズの異母妹のアシュリーとか言う女。あいつ、もうそろそろシュナウトから離さなければ。
今まではシュナウトのやりたいようにさせてきたが、アシュリーは媚薬を使っていると聞いた。
平民の子ごときが次期国王の妃になれるとでも思っているのか?
ばかな事を。
リンローズはわが血を引く孫だからこそ婚約者なのだ。
それにシュナウトもリンローズに子種を与える以外あいつの価値はないんだからな。
リンローズもシュナウトのそんな態度にイライラを募らせているようだしアシュリーとレトリスは言いがかりをつけて始末しなければいかんな。
そんな事を考えていたらドーナン殿下の容体が急変したと知らせが入った。
私は大喜びをした。もう、そろそろ薬が効いてもいいころだとは思っていた。
だが、驚いた事に急変と神殿の診療所に移すと知らされたのは翌日の事だった。
ドーナンがセダ神官の手に落ちた事に驚いた。
あいつがそんなことをしでかすとは‥今まで事を荒立てるようなことは何もしてこなかったあいつが?
だが、おかしな動きをすればそれこそ墓穴を掘る事になりかねん。
ここは慎重にしばらく様子を見ることにした。
すると今度はシュナウトがリンローズを襲ったと。また、ばかな事を。あいつは何を考えている?
すぐにリンローズは手に入る事が分からないのか?
まったくばかだ。
それに困った事にその場にラセッタ辺境伯が居合わせた事だ。
ラセッタ辺境伯はリンローズを保護すると神殿に連れて行ってしまった。
まあひとつだけ良かったのはあのアシュリーとレトリスがばかな事をして捕まった事だがそれでも足し引きしても全く合わない。
何といってもこの国はガイアン大神を信仰する国で神殿には国王でさえ敬意を払わなくてはならない。
それに王都と辺境にある神宿石には神が宿っているとされこの国を守る重要な結界の要と国民の誰もが知っている。
その西のラセッタ辺境伯がリンローズに言い寄っているらしいとも聞いた。
これはまずい。
おまけに問題なのは、ずっとやり替えたいと以来のあった神宿石の事もほったらかしだったせいで、ベナン伯爵と行っている横流しの事がばれたらしい事だ。
東のシャルトル辺境伯と南のユーロウ辺境伯は神宿石の事で私に逆らわなかったが、結界の問題でラセッタ辺境伯に丸め込まれたのかもしれん。
私の力にはなれないと打診があった。
こうなるとドーナン殿下を担ぎ出して次期国王にするかも知れない。そうなれば私は国王代理の座をおりるしかなくなる。
20年の間に私は国王になることも出来たんだ。
ドーナン殿下を亡き者にしてシュナウトなどすぐに始末出来たんだ。でも、それはしなかったんだ。
まあ、それでも少しずつ弱られせていずれは殺すつもりではいたが。
乗っ取りをしなかったのは必ず恨みを買うと思ったからだ。
無理をして国王になっても次の世代で覆されたのでは意味がない。そう考えたんだ。
私はかなりのつわものだと自分でも思う。だが、気が少し弱いからな。
だから正式な手続きを踏んで私の血を引くものを王にしようと考えた。
そのために娘をわざわざ国王の弟であったレトリスと婚姻させた。
リンローズが男なら良かったが無理だった。
レトリスはテリアを嫌ってもう子供は作らないと決めたからだ。私の策略を読んでいたのか、まあ私は嫌われていたから無理もないが。
そこに現れたのがシュナウトだった。王族の血を引くあいつは魔力も持っていた。
だから私はシュナウトを思い通りになるように仕向けた。
リンローズをそばに置いてシュナウトを操ろうとしたがあいつはやはり平民だ。
あいつは王の座に関心がなかったから放っておいた。あいつはリンローズの子種にさえなればいい存在だったから。
だが、もうこんなことはしてはいられない。
ラセッタ辺境伯を何とかしなくては。
絶対に私の地位を守らなければ!
とにかく一番にリンローズとシュナウトを一緒にさせよう。シュナウトはリンローズをそばに置けばすぐにでも手を出すだろう。
リンローズが妊娠すればシュナウトを国王にして私は後見人としてあいつを支配すればいいんだから。
私はシュナウトを呼びつけた。




