31神殿に行く準備
翌朝はスッキリ目覚める事が出来たと思う。
まあ、結界を張る事に不安はあるけどヒルダ様も一緒に来てくれるから心強い。
シュナウト殿下の事は、まあ期待は出来ないが邪魔さえして来なければいい。
早速屋敷の使用人とバーナードに留守を頼んで神殿に赴く事に。父やミシェル、アシュリーとは顔も会わせたくなかった。
荷物は最小限だがスーザンが気を使ってきちんと必要なものを入れてくれる。
「お嬢様、聖女服と普段に着るワンピースや寝間着に下着なども入れておきます。あっ、ついでに顔につけるクリームなども必要ですね」
「ええ、スーザンありがとう。留守をよろしくね。父やミシェルの事で気づいたことがあったらあとで教えて」
「はい、お任せください。昨日は胸がすく思いでした。お嬢様今まで本当にお辛かったでしょう。こんな事ならもっと早くこうすればよかったんです」
「ええ、そうね」
私は言いたかった。スーザン私ね。死に戻ったからここまで強気になれたのよ。って‥
まあ、こんな事は絶対に言えないんだけど。
「お嬢様どうでしょう?コリー領の薬も持って行かれたら。向こうでは怪我人もいるのでは?」
「そうね。魔物の被害も出ているって言ってたしね。私もそう思っていたのよ。スーザンありがとう」
それからコリー領で作っている傷薬や毒消しの薬なども入れた。
バーナードがしっかりして執事で良かった。いつ必要になるかもしれないと彼はいつも薬を常備しておいてくれたのだ。
コリー領には事前に薬と薬草。それに食糧も西辺境伯に届けてくれるように頼んであった。
前世の私はいつ何があってもいいようにしておかないと気が済まないたちでバッグにはやたらと傷テープやらお裁縫セットなどを入れていた。
これがいいのか悪いのかはわからないが、転ばぬ先の杖はやって起きてもいいはず。それに使わなくて済むならいい事だとも思うから。
もちろん身なりはズボンとシャツと上着を着て髪はしっかり後ろでまとめた。
「リンローズ。おはよう早いな」
私は聞き覚えのある声に振り返る。
「シュナウト殿下?どうしてここに?」
「どうしてって、俺も転移陣で行くんだ。それに騎士隊はすでに出発したしな」
「えっ?それってセダ神官が言ったんです?」
「ああ、それに王族は危険だから移動はほとんど転移陣を使うと決まっている。知らなかったか」
「はい」
「無理もない。俺も昨晩聞いたからな。あっちに着いたらまず神殿に行って次にラセッタ辺境伯の所に行くぞ。ラセッタ辺境伯が歓迎の宴を開くらしい」
「宴ですか?でも、私達は結界の補修に「王族が行って何もなしというわけにはいかないらしい。俺だってそんな面倒な事嫌だが、まあ、仕方がない。リンローズ婚約者として一緒に出席しろよ」な、もう、だからそんな事は…」
「そうだ。アシュリーを連れて行けばいいじゃない。私はあなたの隣になんか!絶対いやだから」
冗談じゃない。これ以上みんなに私が婚約者だなんて知らしめるようなこと出来るもんですか。恐い。断罪‥思い出すと身体がぷるりと震えた。
「そんな訳にいくか!」
「いいえ、じゃあ、転移陣で行くのはアシュリーと行って。私は馬車で行くから、じゃあ、すぐにアシュリーを呼ばなきゃ」
私はあたふたと来た道を戻ろうとした。
シュナウト殿下の手が私の手を掴んだ。
「アシュリーとは、距離を置くつもりだ。だから…」
「いやよ!」
私は掴まれた手を振りほどく。
シュナウト殿下が目をはっと見開く。
「そんなに嫌いか?俺はそんなにリンローズを傷つけたのか?もう修復も出来ないほどか?」
その眼差しは酷く真剣で言葉は真っ直ぐ私の心をえぐる。
なによ。今さら。それにあなたと婚約したままでは私は…
「当たり前じゃない!あんなにアシュリーに傾倒してたくせに」
「‥‥‥」
シュナウトはそれ以上何も言わなかった。
ふん、いい気味よ。




