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第004話 大災害の予兆


第004話 大災害の予兆


 この地域は全国でも有名な豪雪地帯だ。

 12月ぐらいになると、雨をほとんど見かけなくなって、雪だけになる。

 多少の雪が降っても雪かきとかしないのよね。

 雪で真っ白になると、雪景色と空の雲が一体化して、地面と空の境界線がわからなくなる。

 学校のグラウンドも雪で埋まるし、部活もグラウンドを使うスポーツだと不利だ。

 冷凍庫より寒いのに慣れているせいか、気温が10度ぐらいだと、半袖とかミニスカの奴がいる。


 あれから一年後、兄のヒカルは、高校を卒業して県内の有名私立大学に剣道部の推薦入学で入った。

 もう一人の兄のリュウセイは、超難関の東京の国立大学に進学していった。

 さすがウチの村でも最高の神童だ。


 お母さんは、最初の頃は東京での一人暮らしに反対していたけど。

 おじいちゃんは意外と沈黙を守って中立だった。

 都会に旅立つヒカルが羨ましくて仕方がない。

 私はと言うと、そのままエスカレーターで高校に進学してあいかわらずの田舎の剣道少女だ。


 リュウセイは、東京に旅立つ前に、たしかこう言っていたはずだ。

 「大学では政治を学ぶつもりだけど、これはあくまで通過地点でしかない。

  大学に通いながらも政治団体には参加して、どんどん実地研修はしていくつもりだ。

  まずは国家公務員になって基本を勉強してから政界に進出して、ウチの県には必ず戻ってくるつもりだよ」


 ヒカルの方はというと、同じ県内だし複雑なことなど考えずに、単純に早く大きな剣道部に入って天下無双の偉大な剣士を目指したかっただけらしい。

 こっちは単純ですごくわかりやすいヤツだ。



 それから数カ月経過したある日の午後、私たちはいつもの北の郊外にある剣道部の練習所で剣道の練習に励んでいた。


 剣道部の顧問のおじいちゃんの、いつもの精神論が始まる。

 「いいか、毎日ダラダラと何の目標もなく練習していても二流にしかなれん。

  言うまでもないが日頃から一流を良く見て研究することだ。

  一流というものを、より詳細で具体的なイメージが持てるようになることが大事だ」


 改めて言われると、ついついダラダラ素振りをしてしまいそうな自分がいることに気づかされる。

 一流をイメージしろと言われても、この田舎町にいる人たちからイメージするのは難しい。



 ところが、夕方の太陽も落ちようかという時刻に、そんな田舎町の平穏な空気が突如として壊れることになった。

 音に敏感なコカちゃんが警戒するような鳴き声をあげた。


 後輩の西園寺がすぐに気づき、遠くの方に何か異変を感じたようだ。

 「何この音!

  何か遠くですごい音がする。

  地響きみたいなのが迫ってきているみたいな感じがします」


 おじいちゃんも遠くに砂煙のようなものを見て異変を感じ声高に叫んだ。

 「お前たち、建物の外にすぐに出ろ!

  頭の上に何もない場所に逃げるんだぞ」


 私は慌てて言った。

 「ええ!

  ちょっと!

  これどうするのよ!」


 おじいちゃんは苛立ちながら言った。

 「そんなものは後回しでいい。

  急げ!

  グズグズするな!」


 私たちはおじいちゃんの後を追って駆け出した。


 おじいちゃんは頭上が開けた場所へ着くと皆に向かって叫んだ。

 「お前たち。

  ここなら大丈夫だろう」


 そう言い終わると、いきなりとんでもない地震の揺れが地面から襲ってきた。

 とても立ってなんかいられない。


 同級生で親友のサトルが声を絞り出した。

 「絶対ヤベェ!

  マジでヤベェ感じしかしねぇわ」


 周りの木々もすごい勢いで回転するように揺れている。

 剣道の練習場も倒壊しそうだけど大丈夫だろうか。

 ほんの数分だったんだろうけど、すごく長く感じた。


 ようやく揺れも収まって落ち着いてきた。

 最近は地震が本当に増えてきている。

 私が経験した地震の中でも結構な大きさだった。


 ちょっと遠くの方で、山の一部が土砂崩れのようになっている。

 村の中心部も大丈夫だろうか。

 お母さんたちは仕事で家にはいないはずだし。

 家に一人のおばあちゃんが気になる。



 今日は、こんな状態だから部活は途中で中止にすることになった。


 体力を温存しながら駆け抜け、ようやく村に辿り着いた。


 村の西側からは火事が起きたみたいで消防車のサイレンの音が鳴り響いている。

 この村の家も何件か倒壊したようだ。

 村の西側の家の火災で、あちこちから黒煙が上がりつつあるようだ。

 村では良く見知った人たちが、すでに走り回っていた。



 村の中央に入り、皆との別れ際に、おじいちゃんはサトルと西園寺に念を押して言った。

 「まだ余震があるかもしれないからな。

  お前たちも自分の命だけを優先しろ。

  無茶せずに考えて行動するんだぞ」


 サトルは震えながら頷いた。

 「了解!」


 言い終えるとサトルは、西園寺と一緒に自分たちの家の方角に向かって走り出した。


 サトル、西園寺と別れて見送った後に、走り出したおじいちゃんをすぐに追いかける。

 私はおじいちゃんと一緒に自分たちの家を目指すことになった。



 家まで残り半分の距離というところまで到達した。

 そこで、よく見知った顔の女性が、かつてない悲壮感で飛び出してきた。

 ウチのおばあちゃんと、隣の家の三田さんのおばあさんとその孫の翔君だ。


 三田さんのおばあさんは、出会うなりいきなり私の腕を掴んで言った。

 「アリア!

  もうあなたの家には誰もいないわ。

  危険だから行っちゃダメよ。

  一緒に逃げなさい!」


 三田さんのおばあさんは、そう言いながらも背後を必死に凝視している。

 三田さんのおばあさんの袖を掴んでいる翔君も、泣きながらも必死で目を見開いている。

 よほど恐ろしかったみたいだ。


 どうも三田さんのおばあさんの家の向かいが火事で燃えているようだ。

 おじいちゃんも察したのか急に立ち止まって言った。

 「よし、四人は村の北側から村の役場の近くの安全な避難場所を目指せ。

  ただし、自分は少し家に用事があるので戻らせてもらう。

  ばあさんはアリアに任せる。

  北の避難所で落ち合おう!」


 疑問を感じた私は、思わずおじいちゃんに向かって言った。

 「ちょっと待ってよ!

  そんなことしている場合じゃないでしょう。

  何をしに行くのよ?」


 家に向かいかけたおじいちゃんは、振り返りながら私の疑問に答えて叫んだ。

 「すまんな。

  どうしても燃やすわけにはいかんのでな」


 おじいちゃんの勝手な行動は、わけが分からず腹落ちしない。



 とりあえず、おばあちゃん、三田さんのおばあさんたちと四人で村の北側を目指して急ぐことにした。


 私は小さな声で苛立ちながら言った。

 「こんな状況で家に何があるのよ。

  自分の命だけを優先しろとか言っておいて矛盾しているわ。

  命より大事なものなんてないわよ」


 ふと、おばあちゃんの方を見ると、背中側の異常な違和感を見て思わず悲鳴を漏らして言った。

 「きゃぁ、おばあちゃん!

  その背中の赤い血は何!」


 おばあちゃんの背中は自身の鮮血で赤く染まっていた。

 おばあちゃんが答えた。

 「家で物が落ちてきて後頭部にあたったのよ。

  なんかずっと痛いなと思ってたわ」


 その話を聞いた途端に、急激に恐怖心で背筋に旋律が走る気がした。

 三田さんのおばあさんが難しい顔で言った。

 「止血したいのだけど、道具もないし。

  村の役場の近くに病院があるから、そこまで行くのを優先するしかないと思うの」


 翔君は、この惨状を見ながら泣き叫びたい気持ちを必死で押し殺して走っているようだ。



 その日はおばあちゃんの手当をしてもらい、村の役場の近くの避難所でしばらく過ごした。

 火災はどうにか二軒の消失で収まったようで、その日の夜には家に帰ることが出来た。



 次の日から、ウチのお母さんは村の緊急対策本部の対応で大変だったみたいだ。

 県内全域で結構な大きな地震だったみたいで、国や県庁が中心になって緊急対策本部が設置されたって聞いている。


 それにしても今日も奇妙な夢を視た。

 この前の大災害の夢を、もっと空の上の方から眺めたみたいだった。


 まずは太陽全体の周期が新しい周期に入ってたらしい。

 太陽から出ている普通の光じゃなくて、もっと霊的な感じのエネルギーが変化したみたい。

 地球は太陽が変化した影響を受けて、地球の傾きの中心になっている地軸がグラつき始めた感じがする。

 地球って地軸が傾いて回転しているけど、それっていつまでも同じ角度のまま続くわけじゃないみたいだ。


 地球の傾いている角度が変わると、地球の全ての場所に太陽の光があたるから、北極とか南極にある分厚い氷が無くなっていくみたい。

 北極や南極の氷が融けだしてから、世界中の海流がおかしくなって、世界中に異常気象が増えていく。

 雪や氷が減って海水が増えたせいで、世界中に大量の雨が降り出した。

 大量の水が地面に染み込んで地下水が増えていく。

 地下水が増えたせいで、火山にある地下の水蒸気の圧力が高まる。

 地上の火山も煙が噴き出し始めたみたいだ。

 地下の圧力が限界になった火山から順番に噴火し始めた。

 海底火山も続々と噴火して海水の温暖化が始まる。


 次に地球の兄弟惑星の赤色の惑星から、衛星が1つ軌道を分離して移動を始める。

 衛星は地球に向かって飛んで行ってる。

 地球の科学者たちは、最初は衛星と地球で軌道が少し違うから大丈夫だって言っていたみたい。

 全世界の人たちは、激突しないって話を聞いて雑多なネットニュースの1つや、有名な彗星のような天文ショーとして楽しむ雰囲気になった感じだ。

 でも衛星は、地球の近くでいきなりスピードが加速し始めた。

 何だか地球全体が衛星を引き寄せしているような感じもした。

 地球の科学者は慌てて計算を修正して全世界に発表したけど手遅れだった。

 衛星は地球の太平洋に向けて突っ込んできた。

 ただし衛星は地球に激突しかけたけど、かろうじて斜めにズレていたおかげで外へ弾かれて飛んでいった。

 衛星の衝撃の影響で、地球は一気に地軸が傾いて変な回転をしてしまったようだ。


 地球には風速が秒速90メートルの風が吹き荒れる。

 地球の表面では火山が一斉に噴火して地震が止まらなくなる。

 火山の噴煙で空が昼間でも真っ暗だ。

 大量の雨が降ると火山灰のせいで地表が黒っぽい灰色に染まる。

 火山の近くでは大量の有毒ガスも発生している。

 地球の異常な磁気のせいで、雷の連射がスゴイし、空にオーロラもたくさん出ている。

 衛星の影響を受けて巨大な高さ1,000メートルを超える津波が発生して内陸地まで海水で飲み込まれる。

 地軸が傾いたせいで、今まで地上だった場所は海に飲み込まれて、逆に海だった場所は地上に変わったようだ。


 地球が何度か変な回転をしていた数日間は、太陽が東西の逆から昇って逆に沈んだ。

 1日の時間も完全におかしくなっていたし、地球の重力も何かおかしい。

 しばらくすると地球の回転は落ち着いたけど、今度は空に二つ目の青い太陽がある。

 そのせいなのか人の皮膚が青っぽく見えるし、気のせいなのか人間が透けて光って視える。

 暗い空の美しいオーロラが逆にとても不気味だ。


 これが新世界なんだろうかと思ったところで、一気に夢が覚めた。


 いやはや。

 また嫌な汗をかいてしまった。



 この前は大きな台風で水害や農作物に大きな被害があったみたいだし、そうかと思えば猛暑で水不足が起きたり、真冬に真夏日になったり、地球の気候変動の影響なのか大変な時代になってきている気がする。


 そのうち真夏に雪でも積もるんじゃないかしら。

 さすがに真夏に雪が積もったら、おかしな現実をいいかげん全員が直視すると思うけど。

 それでも見なかったことにして、笑って忘れようとするのかしら。


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