75話 安心と謎
「まさか……レナたちが……生きているなんて…………」
俺は膝から崩れ落ち、さっきまで出てこなかった涙が今流れていく。嬉しさ、安心、その気持ちでいっぱいの心。
「本当に!本当に……よかった……レナ……ユリ……ショウ……」
頭の中で少ない期間ではあったがレナたちとの日々が走馬灯のように流れる。攻略だらけでも疲れず笑っているレナ。ひびが入っている武器を真剣に見つめているショウ。俺のそばにずっといるユリ。
普通のことだったし、俺のわがままばかりだったのについてきてくれた最初の仲間……死ぬなんて速すぎるからな……
涙を拭きとり立ち上がる。俺はマイのところに行き状態を確認することにした。
「体力は減ってるけれど大丈夫そう。体力が減っていることが気になるけど無事で良かった。レナたちが生きているって分かった後にマイたちが殺されたら絶望するからな……」
体力は半分削られていたが、俺は回復魔法で8割にまで戻す。
「よし……これでいいな。次はナナ。ナナは……ナナも大丈夫か。ライは8割もある……体が丈夫なんだな、安心した……」
俺は草原で横になり、空にある雲を見た。雲の形はいろんなものに変化しているように感じる。剣になったり星になったり、クジラになったり、オオカミになったりと。
「ゆったり雲を見るのは何気久しぶりかもしれない。久しぶりって、俺が転生する前のころの子供の時だけど……眠いな……」
瞼が重くなっていく。安心と疲れで眠気が来たんだろう。俺は完全に瞼が落ちて眠ってしまった。
マイ視点
「う……あ……」
光が差し込んでる……風が体に当たっていることもわかるな~……
立ち上がろうとするが体に力が入らない。
どうしちゃったんだろ……オークに向かって剣を振り、戦っていた時に……どこかに飛ばされて……そもそもここはどこなんだろう……
目を開ける力はあり、私はゆっくり目を開ける。見えたのは緑色の草。仰向けに倒れていたことで見えたものが草だった。
草原かな……きれいな草……もうちょっと休憩して体の力が入れれるようにしておかないと……アキ君……
再び私は目を閉じて眠った。
2時間後。目を最初に覚ましたのはライとナナ。
ライ視点
「い、イテテ……ここは……」
目を開け、ゆっくりと立ち上がる。ナナも同じように立ち上がり、今の状況を確認していた。
「ナナ。無事だったか」
俺の声に気づきこちらを向く。
「はい……それよりも、ここがどこなのか知っていますか?近くにアキさんもいるんです」
ナナは俺の斜め後ろを指さす。そこには眠っているアキの姿が。
「いや、知らないんだよな……それより、アキ………お前がいるのか。無事でよかった」
「そうですね。でも、ここが分からないのは全員かもしれませんね。少し奥のほうを見てきます」
「分かった」
ナナは奥に向かって歩き始めて行った。
俺はどうしよう……アキたちが襲われないように見張っているとするか……
地面の上に座って周りを見渡す。近くには木や家などはなく、奥にうっすら木々が見えるかどうか程度。
「何もないな~……オークと戦おうとしていた時に急に意識がもうろうとして、倒れた……で今の状況」
今の状況を整理していると目の前に白い光が急に無数に現れ、それが少しづつ集まっていき、だんだん白い光は扉の形へと変化していく。
転移……魔法……?
完全に扉の形になった瞬間茶色に変わり、扉が開く。そこから誰かの影と声。
「ここ……かしら……」
「姉さん……あんまり無理をしないでください」
扉から姿を現したのは2人の女。
「あら?あなたは……誰?見たことがあるような気がするけれど……」
こちらを向いて言う。
「いや……お前らこそ、誰だ?」
どう伝えようか考え始める1人の女。
「え……うーん……そうね……私はゼロ。この隣にいるのがレイ」
見た感じ姉妹のように見えたが、とりあえず話をし始めた。
「お前たちは何をしに来たんだ?」
「私たちはアキを連れて行こうと思っただけ」
ゼロは迷わず答える。
「転移魔法で45層までは行ける。だからアキだけ連れて行こうと思って」
「……やめろ」
俺の手を強く握りしめ、真剣な表情でゼロのほうを向く。
「やめろ!!連れて行くな!お前たちだけで行ってろ!!」
ここ一番の声を出し、ぜえぜえと息を切らす。
「あっそ。まあ一旦連れて行くのはやめるわ。1人不思議な子がこっちに来てるし。それじゃあね」
「さようなら」
ゼロとレイは逃げるかのように扉に入りどこかに行ってしまった。ちょうど扉が消えて行ったときにナナの姿が。
「……ナナ!」
俺はナナを呼んできている間にゼロの発言が何なのかを考えた。
ナナが不思議な子?どういうことなんだろう……あいつらが逃げていくかのように扉に向かったのも理由があるのか……?
「ライさん……考え事ですか?」
「ああ……まあ、何でもない。それよりどうだった?」
「ここは18層のニル草原です。近くに人がいてその人に聞いたらそう言っていまして……少し歩いたら森のような場所がありました」
18層……俺たちがいたのは17層だったはず………転移……魔法を誰かが使ってここに来たのかな……
その時、後ろから誰かが俺の肩にポンと手を置く。すぐさま後ろを向いた。いたのは赤髪で黒色の服を着ている、背中にはハンマー。
「だ……誰だ?」
そう聞くと真剣な表情をしながら言った。
「死ね」
背中にあったハンマーを俺の頭めがけて振り落とした。
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