間幕 エルゼの祝福と祭り
緑魔討伐会議から数日後、レーデ・ベルテン領とレドベール国の共催で祭りが行われた。その祭りにはマージェス、ザーテルの両国も参加していた。
「今日は身分や地位は関係なしよ!!!充分に騒ぎなさい!!!」
拡声用の魔具を手に取り、開始早々、気分高揚しているアルシアの声が遠くまで響く。
「昔からお祭りになるとすごく元気ね、うちの子は――ねぇ、グーちゃんもそう思うでしょ?」
「ちょっ――その呼び方恥ずかしいからやめてくださいよ!!……まぁ、それは置いといて、親が親なら子は子で似た者同士だと思いますよ、きっと」
「それもそうね、あの人もお祭り大好きだったものね」
「気を緩め過ぎて、ドジを踏んで高いところから落ちるなんてことが無いといいですけど……いくら魔族とは言え、見ている人族としては心臓に悪いですから」
「ふふ、ありがとうね」
アルシアが張り切って声を上げている後ろでアルシアの母・ミエラはおっとりとした口調でグレイスに話しかけた。グレイスもグレイスで今のアルシアには耳元にも届かないだろうと心配事を一つ二つと漏らす。
「皆に我らが女神エルゼの祝福があらんことを!!」
アルシアの声に続いてグレイスやミエラ、赤の魔族が次々へと同じ言葉を言う。つられて、人々が言葉にする。
そう、今日という日は魔界――それも赤の魔族が毎年行う祭事の日であり、世界にたった四人しかいない神の一人、愛の女神・エルゼに祈りを捧げる日なのだ。それと同時にグレイスとアルシアの三年目の結婚記念日でもある。赤の魔族ではもはや誰もが知っている事ではあるが、ヒュベール国だった頃から住んでいた者やレドベール国になってから移り住んだ者はそんなことは聞かされてはいなかったため、最初はしどろもどろしていたが、アルシアの言葉でなんとか察せたのかあちこちから「祝福を」といった言葉が飛び交う。アルシアはこちら来るなりグレイスに菓子パンを作るよう要求してきた。
「グレイスが作るリゾのパンケーキほど私を癒すものはないわね」
「グーちゃんはなんでも出来るから、少し羨ましいわ……私だとどこかで必ずドジを踏むもの」
「本当よ、見ていて私の方が心配するわよ」
(そういうアルも人のことを言えないんだけど……)
「グレイス、失礼なこと考えてないでしょうね?」
そう言われるとグレイスは誤魔化すようにリゾのフムルを出した。




