3話 新国レドベールと緑魔討伐会議 下編
レドベールが建国した数日後、イーラ国を除いたレドベール、マージェス、ザーテル、加えてアルシアを含めた国王会議は続いていた。土地を創りかえた後も同じ顔ぶれで会議を行ったのだが、レドベールが建国したその直後にイーラ国は国王が居なくなったと同時に王家が機能しなくなり、事実上イーラ国が崩壊したことを受けて住民の保護が必要になったのだ。
「では、イーラ国の住民は我が国ザーテルで保護をしよう。一番安全なのはレドベールなのは承知なのじゃが……イーラ国の住民からすれば母国が崩壊した直後に魔族を見るのは生命危機を覚えますからな」
「イーラには私達の国の者もいたのだから、イーラ国民分の物資は私達マージェスから出させてもらえないだろうか」
ヴァルフリートとフランツェルは互いに納得のいくように折り合いを付けながら話を進めたところでグレイスが口を開けた。
「イーラ国の王族だけ私の国に譲ってもらえないだろうか」
「なにを……するつもりで?」
「イーラ国王と第一王子の完全蘇生、目的は二つ。一つ目は国を建て直すため、二つ目――の前に今回の騒動の原因について言わないといけないな。……今回は緑の魔王が持つ魔眼『緑の魔眼』が引き金になっている。その魔眼の効果はあらゆるものの『拘束』。今回は精神を拘束されて操り人形にされた。さらに緑の魔眼は対象に感染病のように移り、数を増やすことで自分の手駒を増やすことが出来る――と見ている。三年前、私が青の魔王を倒したあの時も青の民衆も次々と緑目に変わったからほぼ間違いない……だから、目的の二つ目はその感染源――地上界で魔眼の影響を受けた土地がどこかにある、それを見つけるため」
グレイスはヴァルフリートの質問の応えに単刀直入に言った。大国の国王二人の混乱は避けられないことを分かっていたが、隠し事をなしにしたのだ。グレイスは余計に怪しまれて動けなくなるのは避けたかったのだ。
その一方でアルシアはグレイスを睨めていた。
「確かに蘇生出来る条件を満たしているわけだし、復国させるためには必要なのは私にも分かるわ……でも、あなたが完全蘇生なんて事が国王だけに留まらず、人族全体に知られたらそれこそ面倒事よ」
アルシアが放ったその言葉にヴァルフリートは椅子から立ち上がり、声を荒らげる。
「完全……蘇生ですと!?」
「声が大きいですよ、ヴァルフリート殿」
フランツェルが指摘するとすまぬと応えてヴァルフリートは立ち上がった時に倒れた椅子を直し、椅子に座る。
「そうよ、人族の魔力回路には私たち魔族のとは違って限界って言うものが存在するものなの。だから、死霊魔法なんていう膨大な魔力と魔族のような複雑な魔力回路を必要とする魔法なんかじゃ、人族の魔力回路では完全蘇生ができない……だから、いいところでも生前の意思のある死体にさせる程度なの。グレイスは魔法適性がないから魔法は一切使えないわ。けど、代わりに人族の魔力回路では扱えない魔術は使えるの。死後から魂が現世に留まれるのは約二ヶ月前後って冥界の方で決まってる――だから、その二ヶ月さえ過ぎてなければグレイスは完全蘇生の魔術を使えるわ」
アルシアが説明をするたびに両国の王は首をかしげたり、頷くように頭を上下に振る。
「――まぁ、最も本来なら死者の魂を現世に呼び返すこと自体が禁忌そのものだから生前の姿そのままってのは無理よ?冥王から特別に蘇生魔術を使うことを許されたグレイスでさえ子供の姿が限界ね」
「では、グレイス殿は一体……」
「グレイスは普通の人間よ?……ただ、人生の半分を魔界で暮らして、龍族――いえ、魔族である私の夫だもの肌だって何度も重ねてたって何もおかしくは――」
「ばっ、止せ!こんな所で!!!」
ここで緑の魔王、魔眼について話してしまったために凍りついてしまったように緊張した空気がグレイスの今にも火を噴きそうなほどの赤面と共に解れた。
こんな風に時折誰かしらが緊迫した空気を和ませながら会議は進み、無事終了した。




