115話 怪獣娘とアンデッドたちとの再会
「さて、それじゃあ行くとしようか」
「はいっ、ご主人様♡」
「……インペリアルさんと会うの久しぶり」
「ジャックさんたちと会うのも楽しみですの!」
「舞夜ちゃんのお友達……いったいどんな方たちなのかしら?」
真夜中の海岸で、舞夜が皆に向けて言う。
アリーシャにリリア、シエラ、それにレオナがそれに応える。
「《飛翔》……ッ!」
舞夜は自分の装備に施した《飛翔》機構を駆使して空へと舞い上がる。
「……来て、《門城鳥》」
リリアが《召聖ノ加護》で、使い魔である《門城鳥》を呼び出すし、四人でその背中に乗る。
舞夜たちが向かうのはインペリアルたちの待つ孤島だ。
真夜中を選んだのは、都市の住人に見つからないようにする為である。
夜空を舞う舞夜と鈍色の使い魔に乗ったエルフたち。
見つかれば大騒ぎになってしまう。
月夜に照らされながら夜の海の上を行くこと少し――
視界の下に木々の生い茂る孤島が現れる。
「うそ……っ、さっきまでは何もなかったのに……」
レオナが目をパチクリさせて驚きを露わにする。
それもそのはず、この孤島には特殊な結界が張られており、真上からでないと視認することができないのだから。
「ふふっ……お母さま、孤島に降りたらもっと驚くことになると思いますよ?」
レオナの反応を見て、アリーシャは面白そうに笑うのだった。
◆
「おお! 舞夜、待っていたぞッッ!」
「ちょ、インペリアル――うむぅ!?」
孤島の中心部へと降り立った舞夜たち。
彼の姿を確認すると、さっそくインペリアルが駆けつけ、舞夜を抱きしめる。
相変わらず美しく、豪快な性格だ。
百九十センチはあろう長身に、アリーシャやレオナに負けず劣らずの豊満なバスト。
肌の色は幻想的な蒼白色、舞夜を胸の中に抱きしめ見つめるその瞳はどこまでも優しげだ。
よほど舞夜に会えたことが嬉しいのだろう、むっちりと育った臀部の上から生えた怪獣尻尾が左右にフリフリと動いている。
『王よ、お久しぶりです!』
『帰ってくるって聞いて楽しみに待ってたヨ!』
インペリアルの胸の中でジタバタする舞夜の耳に、二つの声が聞こえてくる。
「ぷはぁっ! ジャック、カブ、久しぶり。元気にしてたか?」
インペリアルの胸から何とか顔を出し、二体に挨拶をする舞夜。
声の主は上級アンデッドたるパンプキンヘッドのジャックと、カブ型の上級アンデッド、カブだった。
『もちろんですとも! 王の命令通り、〝開発〟も進んでおりますぞ!』
『王様の為だからね、みんな喜んで働いているよ!』
舞夜の問いに、二体とも自信満々といった様子で応える。
『『『アァ……ッ!』』』
「ふふ、みんなも元気みたいだね」
ジャックとカブの後ろには、幾体ものスケルトンたちが控えている。
皆骸骨のため表情はないが、久しぶりに舞夜に会えたことで嬉しそうにしているのがわかる。
「す、すごい……本当にアンデッドを従えてるなんて……」
目の前の光景に、レオナは口に手を当てながら「信じられない……」といった様子で言葉を漏らす。
事前に聞いていたとはいえ、実際にこの光景を目にすれば無理はないだろう。
アンデッドは生者への憎しみに駆られ、人を襲うものなのだから……。
「舞夜よ、その者は誰だ?」
『フホホ! 王の新しい恋人ですかな?』
『何だかアリーシャさんに似てるような……?』
レオナを見て、インペリアルとジャック、それにカブが問う。
それに舞夜は――
「えっと、彼女はレオナさんといって、アリーシャとリリアのママで……ぼくのママでもあるんだ」
「舞夜ちゃん……!」
ジャックたちにレオナを紹介する舞夜。
彼が自分のことを母親だと紹介したことに、レオナは瞳を潤ませ感嘆の声を上げる。
それだけ、彼に母として認められたことが嬉しかったのだ。
「ふふっ、お母さまのあんなに嬉しそうな顔……久しぶりに見ました」
「……ん。お母さまが喜ぶと、私たちも嬉しい」
レオナの表情を見て、アリーシャとリリアは小声でそんなやり取りを交わすのだった。
レオナは夫を失って以来、心の底から笑うことはあまりなかった。
だが、今の彼女の表情は幸福で満たされている。
母親のそんな様子に、実の娘である二人は暖かな気持ちになる。
「ほほう、舞夜の母親代わりであるか! ならば礼を払わなくてはなるまい。我の名はインペリアル! 舞夜を愛し、舞夜のために生きる者だ!」
『我が輩の名はジャック、同じく王のために生きる者でございます、一応この島のアンデッドの指示役をやらせていただいておりますぞ!』
『ボクはカブ! これまた同じく王様に忠誠を誓うアンデッドだよ! 今はジャックの補佐として働いているんだ。よろしくね、レオナさん』
インペリアルにジャック、カブも自己紹介を踏まえて挨拶をする。
理由は知らないが、舞夜の母親代わりともなれば礼を尽くすのは当然だ。
後ろに控えていたスケルトンたちも揃って軽く下げて挨拶をする。
「よし、自己紹介も終えたことだし、本題に移ることにしよう。まずは……」
互いの紹介を終えたところで、舞夜が話題を本題に移す。
今日、この場所へ来た一番の理由へと――




