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最終話

「よく戻った局長……。と、言いたいが、示しがつかんのでな。ゆるせ」

 

どん、と拳骨をかまされた。


「……痛い」


 鬼の副長〈三代目 土方 歳三〉。

 規律を重んじる土方さんが、この程度で済ましてくれただけ感謝しよう。


「それに、ショッピングモールでの争い。たまたま起きたがいたから良かっただけ。また、〈虎鉄〉の使い方もなっていない。お前は訓練を怠っていたな」


「あー、もう、土方さん。お説教はいいからさ。まずは、彼女をどうするか決めたほうがいいでしょ」


 真依さんも〈新撰組〉内に連れてこられていた。

まだ、真依さんは一般人として扱われているようで、目隠し、手錠、そしてヘッドホンを頭に掛けられていた。

 どこにあるか見られないようにするためと、僕たちの会話を聞こえないように徹底されてている。

 なにも見えず、聞こえずで、すごい不安だろうに表情一つ変えていない。

 小さな会議室。

 中にいるのは僕を含めて4人。

 副長――〈三代目 土方 歳三〉。

 一番隊隊長――〈七代目 沖田 総司〉。

 そして、〈SISI〉の擬態を見破る力をもった女性――津通 真依。 

 隊長のトップである三人がそろうのは珍しい。


「山南さんにも声をかけたんだけど、来なかったみたいだね」


「あいつは今、〈誠〉の修理や新型の開発に忙しいみたいでな。俺も最近顔をみていない」


「そうなんだー」


「だが、伝言は授かった――君たちの好きに決めていい。だそうだ」


「はは、山南さんらしいや。で、どうするの? 局長」


 沖田さんがそこで僕を見た。


「できれば僕は、真依さんに元の生活に戻って欲しいと思います」


 朗音さんと、夏休みに旅をするそんな生活に戻って欲しい。

それは無理だと分かっているけど。現に朗音さんが〈SISI〉に擬態され、倒したことを告げていない。


「近藤。自分でも不可能だと思っていることを言うな」


「わかってます」


「分かってるなら言わないでよね」


 一番の望みが断たれたならば00次に下す決断は最低限の状態へと持っていくことを考えるべきだ。

 この場合の最低限。

 それは真依さんが殺されないこと。


「じゃあ、真依さんを隊士として接するのはどうでしょうか?」


「何?」


「ほら、見回りとかに一緒に連れていけば、関知はできるでしょうし……」


「はは、それいいね。むさ苦しい〈新撰組〉も変わっていくんじゃないか?」


「それは出来ない。昔から女子は戦いには参加させない。そう決まりがある」


「いつまでも昔にこだわってちゃダメだって」


「それに、局長の命令だしさ。取りあえずは見守るのも手でしょ」


 貴重なサンプルは大事に使わないとね。

 沖田さんは部屋から出ていってしまった。まだ話は終わっていないのに。


「まあいい。どっちにしろ山南の手が空かなければ進まない。ならば近藤の最初の仕事として管理を任せるか……」


「じゃあ!」


「〈新撰組〉内で管理でき、守り切れるのならば――お前の好きにしろ」


「あ、ありがとうございます!」


 土方さんも部屋を出ていく。

 僕はすぐに真依さんの高速をほどいた。


「真依さん! 大丈夫ですか?」


「大丈夫だけど……。いきなりで、びっくりしたよ」


「すいません」


「で、なんで私はここに連れてこられたのかな?」


 真依さんに僕は今日の出来事を告げる。

 真依さんの体質。そして――朗音さんのことを。


「お兄ちゃんが〈SISI〉に?」


「はい。それで、僕が……」


「〈新撰組〉追ってたのに、最後は〈SISI〉になって倒されるなんて、お兄ちゃんらしいや」


「真依さん」


 口では憎まれ口を叩いているが、その強がりを僕は見ていられなくて、


「ごめん」


 思わず抱き締めた。


「う、ううう」


 真依さんも強がるのをやめ、僕の胸で鳴き始める。大粒の涙が何個も何個も頬を伝い、一筋の線になる。

 その心が真依さんの本心。

 悲しみ。

 なら、僕は何も言わずにただ、こうしているしかない。

 しばらくは、真依さんは大丈夫。


「お兄ちゃん……」


「大丈夫。今度からは――僕が守る」


 郎音さんに代わって。


「将太くん……」


 そう僕を呼ぶ真衣さんに僕は言う。

僕はもう――その名を今までの僕を捨てるんだ。

同じことをうじうじと考え悩む僕を――。


「――僕は〈近藤 勇〉だ」


 今回の一連の事件は、〈新撰組〉の記録に残ることとなる。

 〈4代目 局長襲名事件〉と呼ばれ、沖田さん辺りに馬鹿にされるのだが――。

この事件から数年後、〈新撰組〉と〈SISI〉の争いが終結に向かうきっかけになったことを知るのは、まだ少し先の話だった。


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