表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
クトゥルフ短編集  作者: 異次元からの猫
40/42

旅行先にて

ぬこかわゆい。

「この町には猫が出るからなー。」


駅員が最後にそう声をかけてきた。

あぁ。そうか。それがどうした。変な言い回しだ。と、フワフワと考えただけだった。


ニャーン。


早速子猫だ。

手の中のランタンの灯りから、トトトトッと家々の間に消えていく。

うむ。後ろ姿しか見えなかったが、なかなか柔らかそうで可愛いではないか。

ちょっとナデナデしたかったな…。


…それにしても、旅行記にあったように、窓のサンに至るまで徹底的に”かど“を丸くしてある町並みは、さっきの子猫のように柔らかい印象を受け、どこか心が安らいでくる。

所々”すみ“は残っているようだが、それはきっと建物から無くせない要素なのだろう。さっきの子猫が入っていった家の隙間にも…あれ?猫はどこいった?


ニャーン


足元にまとわりついてくる感触と、鳴き声があった。

なんだ。気付かないうちにそんなところに…。ガス灯も無くて、ランタンだけだとやっぱり夜道はこんなものか。

目を下に向ける。

子猫は股の間を抜けて後ろへ。長い尻尾が右足に絡み付いている。

ほら。お顔を見せてごらん。

追いかけるように視線を動かすと、スーツケースのすみに消えていく影。


ヒッ!


息を飲んだ瞬間、足に絡み付いていた感触は煙のように消え、子猫はその存在を感じられる要素は無くなった。

いったい何なんだ?


知る人ぞ知ると言えば聞こえは良いが、はっきり言って、人気が無さすぎる。宿に急ごう…。薄気味悪い…。


宿に急ぐ間もどこからか、猫が喉を鳴らす音が聞こえる。いや、これは、トランクのキャリーの音に違いない。だから、後ろから聞こえる音がいくら似てても怖がる必要はないはずだ。

そう。キャリーの音に壁を引っ掻くような音が重なって聞こえるのも気のせいに違いない。

その音とは別に、町の至るところから猫の鳴き声が聞こえてくる。


脳裏には駅員の言葉が響き、町から聞こえる鳴き声とスーツケースにいる猫の様な存在にぞわぞわと背中を圧される。


後少し…。後少しで宿につく…。人に会いたい…。


かどが丸い家を右におれると、かどの無い町に唯一ある鋭角で構成された宿が見える。

まるで町の調和を乱すようにも見えるが、かどがないこの町に妙に合っている。それに、一番古くも見える。


それが確認できた瞬間だった。


シャー!フー!


後ろから猫の様な影が一斉に、大量に出てくる。

気のせいであってほしいが…、トランクの辺りから出てきている気がする。

宿に向かっていった猫の様な影は、鋭角に群がると一斉に爪を研ぎ始める。

あれは…かどを削っているのか?


ぐじゅぐるるじゅるるる

ぶわおぅ!


何処かかき聞こえてくる粘着質な犬の吠え声。

あたりにひどく刺激的な悪臭が漂い出すと、宿のかどから青黒い煙が噴出始めーーー




ーーーハッ!

…。嫌な夢を見たようだ…。

窓の外はかどのない町並み。夢の中に出てきた風景だ。やはり、自分でも意識できていないが、ストレスがたまっていたのか。


ごそごそと身支度を始める。

そういえば、旅をした記憶がないのはどう言うことだろうか。

と、身支度の物音が聞こえたのだろうか、誰かが階段を登ってくる音の後に、ノックもなくドアが開かれる。

キィッと軋みをあげて開いた扉の向こうには、ごく普通の男がいた。

あっけにとられ、反応できないでいると、「おぉ。」と声をかけてきた。


「やっと起きたのかい。」


「えっと…。どう言うことですか?」


「あぁ、しばらく前に縄張り争いに巻き込まれただろう。」


「??」


「まぁ、よそもんに言ってもわかんないだろうが、そういう奴は助けるのがこの町の決まりだからな。」


「私の身に何が?」


「猫に時間を喰われたんだよ。」


の白い明かりが私を照らす。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ