脳食い
お久しぶりです。
まずい事態になった…。
私の身の回りで奴に取り付かれていないのはもう相棒くらいなものだ。キュアは完成したが、五人分も作れていない。
この状況を打開するには、一旦姿を眩ますしかないだろう。
どこからか来た人の脳に寄生する虫の特効薬の製薬を頼まれて、はや一年。この寄生虫が現れたのは、その更に一年前だと予想されていた。
初めの内は大したことがなかった。
そう。患者は昏睡状態に陥る程度だった。
あるときを境に、昏睡状態から次々に覚醒してきたことが終わりの始まりだ。
目覚めた患者たちが“神”と称することで、その虫の存在が明らかになったのは、皮肉が効きすぎではないか。
患者たちが“神”と一つに。と言い、寄生虫を感染拡大させ始めたところで、やっと私のところに依頼が来たのだ。
患者たちが目覚めた時点から始めていた私の個人的研究がなければ特効薬「キュア」はまだまだ完成しなかっただろう。
ともかく。
世界の命運は、キュアとそのデータにかかっているのだ。
失うわけにはいかない。
トントン。トントン。トントン。
扉が一定のリズムでノックされる。
「脳に潜む神殺しの秘薬。」
「滅びの神などくそ食らえ。」
「良し。」
合言葉を確認して、鍵を開けた。
「遅かったじゃないですか。心配しましたよ。」
「あぁ。追手を撒くのに手間取っちまってな。もう、追われてないから安心してくれ。」
「そうですか。……っふ。」
「どうした?」
「いや、こんな物語みたいなやり取りを実際にすることになるなんて。と思いまして。」
「クククッ。違いねぇ」
ひとしきり笑い合った後、相棒訪ねてきた。
「で、薬はどこにあるんだ。」
「あぁ。これです。」
そう言って、サンプルを見せる。その瞬間、相棒の手が目に求まらぬ速さで伸び、私の手の中からサンプルを奪い取った。
「フヒヒヒ。コの瞬間を待っッテぜ~」。
相棒が勝ち誇ったようにニヤニヤと嘲笑してくる。
「ヒヒ。声も出ネェか。まぁ、一年も待っタカらなぁ。ナガカッタぜぇ。」
私はその様子をじっと観察する。
「アン?少シハ悔しガッてもいいんじゃネーノ?」
相棒の目はカメレオンの様に不規則に蠢き、顔の穴と言う穴から液体を流している。
「その余裕がいつまで続グフッ…。な、ナンダ?苦しい…。」
「私がいつ、薬が液体と言いましたか?」
「!!」
「薬は吸引式です。予めこの部屋に散布しておきました。あぁ。そのサンプルも本物ですよ。手元にあるサンプルと部屋に散布した分を除いたら、後五人分も残らなかったのは予想外でしたが。」
「ごほっごほっ。ガバッ…グエエエ!」
相棒は激しく咳き込み、最後には口から頭ほどの大きさのある長い触手をうねうねと生やした芋虫のようなものを吐き出した。
それは、暫く苦しげに蠢くと動きを止めた。
「やった!成功だ!さぁ、起きてください!忙しくなりますよ!」
しかし、相棒からの反応はない。
「…え…。まさか…。」
冷静を装い、脈を測る。
「!!そんな!これでは作った意味が…。」
上げて落とす系




