絵
絵画って迫力ありますよね。
絵を買った。
元は反戦絵画だったのか、見事な油絵で戦火にさらされたらしい廃墟を写実的に描ききっている。まるで、キナ臭い匂いがこちらまで漂ってきそうだ。そのなかに何匹かの蛆虫も描かれ、何処かに死体でもあるのかと思わせる。
創作意欲を高めるためにアトリエに飾り、その絵を題材とした石像を創る。まずは、粘土だ。
そう、ここにはいない戦火にさらされた人などを造ってはどうだろう。
何日もかけ、粘土で大体の形を決める。終わった頃に、改めてしっかりと絵を見る。
?なんだろう。何か違和感が。だが、はっきりとは解らない。
それから、長い時間をかけ石を削っていく。
破片で絵が傷ついてはいけないので、その間は布をかけてしまう。
石像の大まかな形ができ、布を取り払う。すると、おかしな点がハッキリと解ってしまった。
こんなに多くの蛆虫はいなかったはずだ。
キャンバスの下の方に、僅にだけ描かれていたはずの蛆虫は今ではキャンバス中に描かれている。
さらに、それは忌まわしいことに、人のような形に刻々と変化していき、ドアノブに手をかけるかのように…。
そこで意識が途切れ、また目が覚める。
…どうやら、疲れすぎで悪い夢を見ていたようだ。絵のなかに這う蛆虫なんて一匹も描かれていない。
ほっとして下を向いた目に、足元から後ろへと蛆虫が落ちて、蠢いていることに気づく。
…自分の造った石像の辺りで、虫が落ちるような音がしていることは、気のせいなのだろうか…。




