王都での新しい生活
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この作品は、明日完結いたします。最後まで、お楽しみいただけると幸いです
公爵邸での滞在は短かったが、優菜と子どもたちにとっては、激しい戦いの後の貴重な安息の期間となった。アレンが手配を終え、公爵の正式な許可が下り、一同は王都近郊の新しい家へと出発することになった。
朝早く、公爵邸の裏庭には、子どもたちの人数分の小さな荷物と、優菜の調理道具がまとめられていた。子どもたちは少し寂しそうだったが、新しい場所での生活に期待を膨らませていた。
ライルは優菜の隣に立ち、常に周囲に目を配っていた。
「ユウナ、無理をするな。荷物は全部俺たちが持つ。お前は子どもたちと、自分の身をしっかり守ってくれ」
ライルは優菜の頭に軽く触れ、優菜を安心させた。
優菜は微笑んで頷いた。
「ありがとう、ライルさん。もう十分休んだわ。新しい家に行くのが楽しみよ」
ゲオルグとアレン、リリアが協力し、公爵の護衛の騎士たちと共に移動は迅速かつ静かに行われた。公爵の厳重な配慮により、その移動経路は最高機密とされた。
一行が到着したのは、王都の城壁から馬車で一時間ほどの場所にある、広大な敷地を持つ一軒家だった。以前は貴族の別荘として使われていたのか、周囲からは隔離されており、敷地内には子どもたちが安全に遊べる広い庭と、裏手には家庭菜園をしていたのだろう、耕された畑が広がっていた。
家自体は豪華ではないが、清潔で、部屋数も十分にある。そして何より、優菜がすぐに目を奪われたのは、広々とした明るい厨房だった。大きな暖炉があり、調理台も広く、ロンドの小さな厨房とは比べ物にならない。
「見て!ユウナ、庭が広いの!」
ティナが弾んだ声を上げる。
優菜の胸に、じんわりと温かさが広がった。
(ここが、私たちがこれから守っていく、新しい家なんだ)
アレンが鍵を優菜に渡した。
「ユウナ、お前がここの主だ。全てお前の好きにしていい。食糧と備品は、今日中に運び込む手筈になっている」
ライルは優菜の肩に手を置き、その喜びを共有した。
「ここなら、みんな安心して暮らせるな。ユウナがやりたいことを、存分にやるといい」
その日から、優菜の高速家事スキルが再び唸り声を上げた。優菜はまず、厨房の掃除と整理に取り掛かった。
ドォン、ドォン、ササッ!
優菜の指示のもと、ライルやゲオルグ、子どもたちまでもが手際よく動く。
その日の夕食は、早速、優菜が新しい厨房で作り上げた、地元の野菜をふんだんに使った『歓迎のシチュー』と、大きな山鹿のローストだった。新しい環境への不安を吹き飛ばす、美味しく、力強い料理だった。
食事が終わると、優菜は疲れてすぐに眠ってしまった子どもたちを寝かせた。夜の静かな廊下で、優菜は家の中を警備中のライルに出会った。
「ユウナ、もう休め。顔が疲れているぞ」
ライルが優菜を気遣う。
「大丈夫よ、ライルさん。だって、私、みんなが守ってくれて、この世界に来てから、本当に一番安心して過ごせているの。今日は、初めてぐっすり眠れそうな気がするの」
優菜は首元のネックレスをそっと握った。ライルは優菜の言葉に安堵し、優菜の髪を優しく撫でた。
「そうか。お前が安らげるなら、それで俺は満足だよ。安心して休め。俺が夜通し、この家と、お前を守る」
ライルの深い信頼と愛情を感じながら、優菜は自分の部屋へと戻った。
次の日の朝、優菜は目覚まし時計がないにも関わらず、正確な時間に目を覚ました。優菜の目に映ったのは、新しい部屋の窓から差し込む、穏やかで清々しい朝の光だった。優菜の心身は完全に回復し、新しい生活への希望に満ちていた。
優菜は立ち上がり、新しい厨房へと向かった。今日も、優菜の料理から、新しい一日が始まる。




