王都へ到着
評価やブックマーク、リアクションありがとうございます。
初作品なので、20人ぐらいに見てもらえたらいいなと思っていたのですが、想像以上の方に応援していただいて嬉しいです。
本当にありがとうございます。
優菜、ライルたちが乗る馬車は、厳重な警備を伴って王都の城門をくぐった。
まず車内から聞こえてきたのは、子どもたちの歓声だった。
「わあ!見たことないくらい高い塔!」
「お店がいっぱい!ロンドの街よりずっと大きい!」
ロンドの街しか知らなかった彼らにとって、王都の壮麗さは刺激的すぎた。優菜もまた、窓の外に広がる中世ヨーロッパ風の石造りの街並み、立ち並ぶ壮麗な貴族の館、そして行き交う華やかな人々を見て、異世界らしい光景への感動で胸がいっぱいになった。
しかし、優菜が向かうのは観光地ではない。王都に着くとすぐに、優菜一行は公爵家の手配した滞在用の屋敷へ案内された。
優菜の役割は、単なる料理人ではなく、王国の運命を左右する「古代技術の継承者」として貴族たちの前で認められること。そのためには、服装もこの世界の最高位の場にふさわしいものが必要だった。
ライルは、優菜がロンドの街でいつも身につけていた、可愛らしい意匠ながらも質素な作りの服とエプロン姿を一瞥し、どこか落ち着かない様子で言った。
「ユウナ。会合に行く前に……少し、時間をもらえないか? ユウナの服を、私が選びたいんだ。……その、二人で、王都随一の仕立屋へ行かないか」
優菜の隣を歩くライルは、護衛として周囲を警戒しつつも、どこか浮足立っていた。普段の戦闘服ではない優菜と二人きりで王都の目抜き通りを歩いている状況は、「デート」を意識させるものだった。
しばらくして、目的地に着くと、高級仕立屋の扉を開けたライルは、優菜に向き直り、少し照れたように言葉を紡いだ。
「ユウナ、王都での格式とか、公爵家からの視線とか……そういうことは気にしないくれ。それよりも、ユウナには一番素敵に着飾っていてほしい。よければ、俺が、ユウナに似合うものを選んでもいいだろうか」
ユウナは、彼の真剣な眼差しに頬を赤らめた。ライルが選んでくれたのは、淡いモスグリーンの生地に繊細な銀の刺繍が施された上質なワンピースドレスだった。その色は優菜の柔らかな雰囲気に馴染みつつ、公の場にふさわしい気品を与えている。
優菜が試着室から出てきた瞬間、ライルはハッと息を呑み、言葉を失った。優菜の普段の親しみやすいエプロン姿とはかけ離れた、息をのむほど美しい姿。
「……とても、似合ってる」
ライルは、絞り出すような声で、いつものライルらしくない、わずかに動揺した表情を隠すように優菜の手をとった。
「ありがとう。」
優菜は真っ赤にほほを染めて、お礼を言うのが精一杯だった。




