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銀河舞踏会 ガンマ・ジュリエット  作者: やまなし
第九話 「自動人形の罠 : vs.Morgan」
62/112

chapter 1



 Aパート


   1


 バグフィルタ計画にて主導的な立場にある実行部隊・イノヴェーションズの代表CEO会議は、異様な緊張感が支配していた。

 というのは、〈思念の世界ダンシングウィル〉代表CEO、邪悪な妖精パック・ロビン=グーッドフェロウの、とある衝撃的な発言が発端である。

「ぼくさー、ちょっとジュリジュリの第三世界に行ってみようかなぁって思うんだけどー。ちょっと協力してくんなぁい」

 舌足らずな口調ながら、パックは会議を一瞬で凍り付かせる。

 そのなか、一番手に反応したのは〈鬼石きせきの世界エレガントキメラ〉のコーディリアだった。

「どういう、ことかしら……」コーディリアの今宵の金髪は、頭の両サイドの高い位置で結ったツインテールである。

「いやいやいやー。たまには自ら動かないといえませんなぁ、と思いまして。ほら、ぼくこう見えて、〈ダンシングウィル〉のヘッドですし」

 パックは見た目十代前半の、まだまだ少年と少女の中間を行き来する曖昧な年頃の子供である。

 かわいらしい黒髪のおかっぱ頭を揺らしながら楽しげに話す内容は、しかし各世界屈指の頭脳を持つ傑物らすら動揺させた。

「手段は」

「情報崩壊状態でジュリジュリがゲートを開いて帰るときにさぁ、ぼくも一緒にそのゲートを潜ってみればよくなーい」

「それはそのとおりでしょうが。問題はそれよりも……」あきれるコーディリアが、ほかの代表CEOの反応を伺った。

 やはりコーディリアと同様、みな眉をひそめ、いささか賛同しかねる、という面持ちが表情から見て取れる。

 まず、〈螺旋の世界フィア・ノウ・モア〉の美男子、フィディーリはこう言う。

「コーディリア姫がおっしゃるのは、帰りの手段のほうです」

「ジュリジュリに送ってもらう、とか」

 次に、〈思念の世界テンペスト〉のドクタ・プロスペロが疑問を呈す。

「捕虜になってもらっては大打撃だが」

「だーいじょうぶ。ぼくってば、ジュリジュリよりか強いし」

 最後に、〈鍛冶の世界ムーランライト・セレネード〉のハムレットが、しかし英断した。

「わたしは賛同します」

「なんですって」コーディリアが、

「うっそ」そしてパックも。

「いやお前は驚くな」ハムレットがツッコミ。「――こほん。送ることは容易です。で、帰還の保証はあるのだな」

「逆に聞くけどー。もしぼくが、みんなの世界に潜り込んだらどうする」

 一同が黙考し、いま、思考がシンクロする。

「『お前早く帰れよっ』って、思うじゃん。ねっ」パックはにっこりと愛想よく笑った。

「なにが『ねっ』かしら」コーディリアの抗議も、パックには通じないようだ。

「さしずめ、たいして仲がよいわけでもない級友が家に上がり込んだまま、なかなか帰る気配をみせない状況か」ハムレットが絶妙に理解できない喩えをする。

「目的は、なにかしら」

「ワルキューレを見に行ってくるよ」パックは笑った。しかし、それは少年の笑みではなく、邪悪な妖精の笑みだ。

 全員がその一言で、もはや反対の意を唱えるのをやめた。

「では、送り出すに当たり、デコイ役を用意する必要がありますが」ハムレットが提案する。

「それならば、我々〈フィア・ノウ・モア〉に」名乗り出たのはフィディーリである。「スループットの改善により、カテゴリCを舞踏に参加させらる――でしたね、ドクタ・プロスペロ」

「問題なく使用できる。〝サイキックマター〟」ドクタ・プロスペロは眼鏡を光らせた。

「決まりました。次回の舞踏会へは、本意ではないでしょうか〈フィア・ノウ・モア〉に踊っていただきましょう。ロビン=グッドフェロウ殿には、相応の吉報を願うとして」

「おまかせー。あと、パックって呼んで」

「フィラメントを突破するのは――」

「パックって呼んで」

「我々、イノヴェーションズです」

「ねえ、パックって呼んで」

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