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銀河舞踏会 ガンマ・ジュリエット  作者: やまなし
第八話 「銀盤の天使は煤まみれ : vs. Miranda」
59/112

chapter 9


   9


 銀河舞踏会は閉会した。

 集まったバグフィルタ計画の紳士・淑女は、自分達の世界へいったん戻っていた。聖なる王領シコラスク島の神殿もいまは照明を落とし、薄闇のなかしんと静まりかえっている。

 残るのは、たった二人。

〈テンペスト〉のドクタ・プロスペロ、同ミランダ。

 ミランダは乱れた髪を手ぐしで直しつつ、俯きがちに言葉を零す。

「ごめんなさい、プロスペロ。負けたうえに貴重なエアリエルまで失ってしまったわ……」

「無敗の女帝にしては殊勝だな。本音は」

「く……」言葉を貯めるミランダ。

「く」疑問系のプロスペロ。

「クッソ、悔しいー」ミランダは痛む躰も体裁もいとわず、地面を叩き割るかという勢いで地団駄を踏んだ。「どうして、あのとき、うまくできなかったのかっって。あれもこれもそれもあれもよッ。あなたもそう思うでしょう」

「あれこれ言われてもな。わからん」

「勝てない相手じゃなかったのにぃ」

「そう、かもな」

「こんな気持ち久しぶりよう。ふふフ、あはは」ミランダは、今度は腹を抱えて笑った。「本当、ああ、負けるのがこんなに愉快だなんて。無敗の女帝は壊れてしまったのかしら」

「いまの君は、出会ったころよりずっと健全だ」

「そうよね。はあ、すっきりしたわ」ミランダは笑いすぎて瞳を涙でいっぱいにしながら、プロスペロをしばし見つめた。「――って。あら、あなた」

「どうした」

「いいえ、なんでも」ミランダは首を振った。「ところで、その顔だと充分に役に立てたようね」

「顔……」とプロスペロは訝しげに眼鏡を直す。「貴重なデータは得た。君にしかできん働きに感謝する」

「もう一つの祝福、楽しみに待ってるわ」

 プロスペロは愛機〝黄金のエアリエル〟を背後にステイさせた。

「こいつが完成した暁には、ああ、約束通り、貴様と戦ってやる」

 プロスペロは気づいていなかったのだ、自分の頬が、思わず緩んでいたことに。

 二人は約束の握手を交わし、ミランダは彼の手を強く握り返した。

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