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白紙に綴る夢  作者: 緋絽
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コンテスト

ご無沙汰してます、緋絽です!


朝起きると、落ち込んでいた気分が少し浮上していた。

そうだ、別につき合うことは望んでないんだから、俺が好きであればいいんだから、何を落ち込むことがある?大丈夫、顔は上げていられる。

───何か、過ちを犯している気がしないでもないけれど。

いつも通り着替えて、寝坊した由輝を迎えに行って慌てて学校へ行く。

迎えに行く時間が遅れたのは偶々だ。何かに思い耽っていたわけではない。

そうやって、自分を騙す。

「今日はステージだからクラスの出し物ないね。小森さんのショー見に行けるよ」

その言葉にハッと我に返った。

座っていた椅子から反射で跳ねた体がずれて落ちそうになる。

思わず、顔を拭った。

「……どうした?」

由輝がそんな俺を見て心配そうに声をかけてくる。茜と朝弥も目を丸くしてこっちを見ていた。

「いや、なんか、ボーッとしてた」

笑って返して、バレないようにちょっと溜息を吐く。

また、考え込んでた。ヤバいな…。

「珍しいね真実が祭りで騒がないなんて」

「さては昨日なんかあったな!言え!」

朝弥がウガーと飛びかかってきた。

「うわっ、ちょ、こら朝弥!なんもねぇ、なんもねぇ、なんもねぇよ!」

「おーい朝弥うるせぇ」

由輝が朝弥を引っ剥がす。

た、助かった。

「だってよー」

茜が唇を尖らせた朝弥の肩を叩いた。

「ま、とにかく。行くんでしょ?」

「おう!カメラでめっちゃ撮ってやるよ!」

朝弥がめっちゃ笑顔でカメラを掲げる。

めっちゃ笑顔で。

「俺、なんでこいつら付き合わないのかわかんねーよ…」

肩を落として言うと茜も由輝も頷いた。

「僕も」

「虫歯になりそうだな」

「なんか言ったか?」

「「「いや、なんも」」」

いーなー朝弥は。順調だもんなぁ。

いや、まぁ朝弥が自覚するかどうかが最大の難関なんだけど。頑張れ小森ちゃん。

「あ、俺今日バスケ部の方でるわ」

「えっ、マジで!?」

「遊ぼうと思ってたのに」

「いや、途中で一旦抜けるだけ」

そう言うと茜が眼鏡を押し上げてキラリと目を光らせた。

「…………今日、ステージしかないはずなんだけど?」

ギクッとなる。

く、くそ。ごまかせなかったか。

朝弥がニヤニヤしながら俺の肩に腕を回す。

「真実くーん、一体何に出るのかなぁー?」

後ろで由輝が噴き出した声が聞こえた。

クッソ、後で覚えとけよ!

「……………笑うなよ?」

「うんうん、笑わない、笑わない」

ニヤニヤしている二人から顔を背けてボソッと言う。

「…………………………じょ、女装コンテスト」

『はい?』

一瞬の間。

その後、一拍置いて噴き出す声がした。

『ブハッ!』

思わず机に強く手を叩きつけて立ち上がる。

「やっぱ笑うんじゃねぇかよ!」

恥ずかしさで体が熱くなってきて、なんか変な汗が出た。

「だ、だって、女装コンテストって…っ」

茜が珍しく馬鹿笑いしながら言葉を漏らす。

「はまりすぎ。定番すぎだよ!」

「仕方ねぇだろ、バスケ部総一致で決まったんだから!“普段迷惑かけてんだからやれ!”って言われたら断れねーだろ!?」

「ていうかさ」

朝弥が体を折ってヒーヒー言う。

「似合わねーよな、真実が女装って」

「うるせー!似合ってたまるかよ!」

まだ後ろで爆笑している由輝にすがりついた。

「ゆーきー!頼むから俺の代わりに出てくれよー!」

「嫌だよ。それに俺、バスケ部じゃねぇし」

「似合うんだからいいだろ!」

「よくねぇよ!」

ポンと肩を叩かれ振り返ると、遠い目をした朝弥とかち合った。

隣でまたまた珍しく茜が憐れむような目をしている。

「……………………何だよ」

裏切り者め!いや、裏切るも何も、裏切るような何かもないんだけどさ!

「諦めなよ、真実」

茜が静かに首を横に振る。

「茜…」

やめて!俺を憐れまないでくださいお願いしますマジで!

朝弥が少し体を退けて後ろを見せた。

途端に俺の体が強張る。

嘘だ。そんな、そんなはずがない。誰か───誰か嘘だと言ってくれ!

「朝弥、離してくれ!」

「無駄だ!どうせ逃げたっていつか捕まるんだ!なら、もう、いっそのこと───!」

「嫌だやめてくれ!俺は、これからも平凡で幸せな日々を過ごしたいんだ!」

「もう遅い!───迎え、来ちゃったんだから!」

朝弥の言葉と共にバスケ部の仲間が現れ、俺の両脇を拘束。

「見に行くからなー!」

引きずられながらそれを聞いた俺は、思った。

裏切り者めぇぇえええ!



ステージの裾から客席を見る。

あいつら、ちゃっかり最前列をキープしてやがる。

いや、あいつらは放っといていい。問題は、中元がいるかいないかだ。見られてたら俺はもう生きていけない。

よし、いないな。

ふぅと安堵の溜息を吐いて後ろを振り返る。

後ろには他の部からのエントリーの人が並んでいた。

しかし、さすがに運動部なだけあって、こう、………………柔らかさがないっていうか、筋骨隆々っていうか。

俺は溜息を吐いて着物の帯を整える。

髪は思い切ってどこまでも女らしくした。

下手に肌を露出させても気持ち悪いだろうと思って、何を着ようか悩み、ふと思いついてお手伝いさんに聞くと、「えぇございますよ」と。

……………御当主様が、念の為と作らせていたらしい。恐ろしい、いつサイズを測ってたんだ…!

という理由で着物を着ている。これならホームだ。昔っから着せられてきたしね。

まぁ、でも。

ふっと俺は笑う。

どうせ出るのなら優勝を狙ってやろう。

───あの泣いて過ごした日々を、ここで報いってやる!

『さぁ、それではご登場していただきましょう!エントリーNo.1!野球部より…』

ミニスカを履いた男子が出て行く。

…………グッバイ、野球男子。せめて毛を剃るべきだった。

『それでは最後の参加者のご登場です!エントリーNo.10!バスケ部より…』

呼ばれてすっと背筋を伸ばす。

───楚々とした美しき所作を心掛けよ。

御当主様の声が蘇ってきた。

まさか、こんな所で役に立つなんて。

───歩く時は微かに目を伏せ、少し顎を引き一瞬たりとて重心を動かしてはならぬ。そして…

俺は、滑るように歩きだした。

『東山 真実さんです!』

俺が出て行くと、参加者を見てあぁこんなもんかとだらけていた観客が色めき立った。

唇の端だけを緩めて笑う。

俺は今、大和撫子。

さぁ、俺だけを見るがいい。あの日々を、無駄にはしねぇ!

ふと由輝達を見る。

茜と朝弥はポカーンと口を開けていて、俺と目が合った由輝は口パクで「そうきたか」と言ってきた。

うるせぇよ。着物での女装に関してはこの中の誰よりもホームグラウンドだ!

『また…これまた綺麗な人がやってきましたねー』

話しかけられて体ごと司会者に向き直る。

微笑んでゆっくり体を折ってお辞儀した。

「恐縮ですわ」

体を上げてもう一度微笑むと、うっと司会者が顔を朱くする。

ハハハお前なに男に微笑まれて顔朱くしてんだよ。

やけになって観客に向き直る。

見たか俺の実力を!

『そ、それでは、特技を披露していただきましょう。まずエントリーNo.1の方から…』

順番が来るまで袖で待機。

ここからが本番。



『エントリーNo.9の方でしたー!では、ラスト!大穴のこの人だ!』

そんな煽りと共に舞台に出る。

手には花瓶に差した数種の花。

『おぉっと花だ!何をなさるのでしょうか!』

用意していた園芸用の鋏を専用のボックスから取り出し、クラスの女子に作ったのと同じような物を作っていく。

最後の一輪を編み終わり、フゥとあくまで淑やかに見える溜息を吐いた。

『おぉーこれは…』

着物の袖の裾を押さえ、出来上がった物を持ち上げる。

花簪(はなかんざし)で御座います」

話し言葉がヤケに堅苦しいのは見逃してもらおう。

司会者の一人の女の子に微笑みながら髪飾りを差す。

「宜しければ、差し上げるわ」

女の子が真っ赤になった。

勝った。

『ゆっ、優勝ーっ!!』

キーンという音を立てながら叫ばれた言葉に俺はほくそ笑んだ。



ちなみにその後、俺は学食タダパスポートを握ってしばらくご満悦だった。


本職の方、すみません!見逃してくださーい!

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