宝岳祭1日目!
緋絽です!
宝岳祭1日目。
俺は由輝と一緒にいつもより早く学校に行った。といっても、準備のために他のクラスも早めに来ているから、朝の景色はそんなに変わっていない。
発泡スチロールの箱を抱えて教室に入る。
「おはよー」
「おーっす」
「おはよう」
すでに来ていた朝弥と茜が挨拶を返してきた。
クラスメート達は準備に勤しんでいて騒がしい。
「とうとう今日かー。実感わくなぁ」
由輝が欠伸をしながら言った。
「遅くね?」
「いや、なんかまだまだ先の事みたいに思ってたわ」
思わず苦笑する。
最近、ずっと準備に追われていたためか時間が早く過ぎているように思っていたらしい。まだあと何日もあるとか思ってたんじゃねぇかな。
教室は今簡単なキッチンとテーブル席に分けられている。
壁には由輝のアイデア通りそれぞれの設定がベタベタ貼られている。
「じゃあ衣装配布しまーす!自分の取っていって、各自で着てくださーい」
衣装係の子がクラスに向かって呼びかける。
その言葉に従って衣装を取って着替える。
いつ見てもいい出来だよなぁ。
黒いTシャツに赤くて丈の短いジャケットを羽織り、ベージュの七分丈のズボンを履く。靴はブーツだ。腰のベルトには短剣を差す。無論おもちゃである。
髪はいつもの髪型から後ろの下の方でくくるやつに変える。
「はい終了」
そこで自分の服に埋まっている発泡スチロールの箱を発見。
やべっ、忘れてた!
「なぁなぁっ」
衣装係の子に話しかける。
「何ー?」
「これ、花なんだけど。女子に回しといて」
「あっ、頼んでたやつ!わー、ありがとー」
衣装係の子が受け取って女子に回し始めた。
「真実が作ったやつか!見せろ!」
朝弥が一個手にとってマジマジと見つめる。
「ああ、頭に飾るとか言ってた花?僕にも見せて」
茜が軍服の襟を窮屈そうに開きながら手を伸ばして朝弥のを奪った。
「あ!オレが見てたんだぞ茜!」
「もう見たでしょ。僕も見たいんだから」
茜が花を朝弥から離して見る。
「へぇ。結構綺麗だね。かなり凝ってるし。なんでこんなのできるの?」
「まぁ、ちっさい頃からやらされてたし。家では普通だよ」
花の扱いになれておけって言われてしごかれたあの日々が懐かしい。
遠い目をしていると由輝が慰めるように俺の肩を叩いた。
「真実ん家って何者なんだよ!」
朝弥が笑いながら俺の背中をバシバシ叩く。
「いて、いたっ、いってぇよ!」
「あ、悪い」
「いや、でもほんと気になるよ。真実ってあんま家の話しなくない?」
思わず目を瞬かせる。
「そうだっけ?」
「言われてみるとそうだなー」
朝弥が頷いた。
あんま自覚ないけどなぁ。
「わかった!じゃあさ、いつか家来いよ」
「あー、いいな」
由輝がニヤニヤ笑う。
「ビックリしないといいけどな」
「え?そんな家なの?」
「そー、こいつの家って」
由輝が言いかけた時、女子の怒鳴り声が聞こえた。
「そこの4人!動きなさい!もう時間ないのよ!?」
「うわっ」
「すんませーん」
手が足りなさそうなところに散っていく。
「真実」
由輝が隣にきて俺に声をかけた。
「中元に声かけたのか?」
思わずギクッとなる。
「ま、まだ」
「どーすんの?」
由輝が俺を見て首を傾げた。
な、なんか手に変な汗かく。
「俺はいいからさ!由輝はどうなんだよ!」
「何が?」
「平方!誘わねーの?」
由輝が目を瞬かせた。
「は?なんで?」
「なんでって…。祭りの時も率先して平方連れて行ってたから、俺てっきり由輝は平方が好きなのかと───」
俺の台詞に由輝が固まる。
「おい?由輝?」
顔の前で手を振ってみても反応がない。
こ、これは。───長考モードに入ったかも。ぐるぐる悩みだすんだから、こういう時は。ま、いつもからかってくるんだから、たまにはこういう気分にもなってみやがれってんだ。
相変わらず固まっている由輝を放って別の場所に行く。
「あと30分で始まるー」
クラスの誰かがそう言った。
「東山!ちょっとテーブルの飾りやってくんない?崩しちゃってさ」
「あー了解」
頼まれたテーブルに行くと、中元がいた。
床に落ちた花を拾い上げている。
「中元」
「あ、東山君」
立ち上がって中元が笑う。
「花落ちるなら手前には置かない方がいいかもなー」
「そうだね」
中元が髪を耳にかける。
中元の役は商人の娘らしい。簡素なワンピースだけど、ちょくちょく入ってるプリーツが可愛い。ベストも似合ってて───正直、超好み。
「あー…」
赤くなりそうなのを誤魔化すために咳払いをしてテーブルの上の花を摘む。
クッソ。可愛すぎだ!
ちゃくちゃくと花を編み上げてタワーのようにしていく。
「すごいね」
「あ、まぁ、ほとんど重ねてるだけだけどな」
てっぺんに白い花をさして完成。平たい水の張ってあるガラスの皿に載せる。残った花は水に浮かばせた。
「へぇ。可愛い」
そこではたと気づいた。
花いじる男子って、あんまり好かれないよなぁ。
そう思って焦る。
キモいとか思われてなきゃいいな!あぁもうマジで!
「あ、あんまり男がやるもんじゃないけどな」
「そう?いいと思うよ?花いじる人って優しそうだし」
あんまりにも中元が迷いなく答えるから、唖然とした。そして、顔が熱くなる。
くそ。俺みたいに花扱う奴にとって、そういう台詞は───殺し文句だ。
赤くなった顔を隠すために少しそっぽを向く。
「はは、よかったら作るけど」
紛らわすために冗談で言った。つもりだった。
「ほんと!?ほしい!」
思ったよりも中元の食いつきがいい。
「え?えっと」
「楽しみにしてるね!」
中元が笑って言うもんだから、こっちまでつられて笑ってしまう。
「わかった。任せとけ」
ふと中元が思い出したように自分の荷物の方を振り向いた。
「中元?」
荷物に近づいて棚の上に置いてあった物を取ってくる。
「これも東山君が作ったんじゃない?」
「これって…」
見ると俺の作った花の髪飾りだった。
枯れないように湿らせたコットンで花を包んでいて緑のテープを巻いている。それを何個も束にしたやつだ。
ちなみに中元のやつだけめっちゃ気合い入って、少しだけ他のより豪華だ。
───下心が透けてる!
ガクッと地面に膝をつけたくなる。
いや、下心と思っても結局一番出来がよかったからついそのまま持ってきちゃったんだけど。
「可愛いね。ありがと」
───中元の方が何倍も可愛い!
そう思った俺を誰かしばいてください。
頭に翳してみている中元を見て、堪えられなかった。
花を持っている方の中元の手を掴む。
「東山く…」
見上げた中元の顔にハッと我に返った。
そっと指を解いて花を取り上げる。
中元に笑いかけた。
「貸して。つける」
「う、うん」
髪に手を伸ばして一部を残して耳にかける。
う、近い。後ろからやればよかった。でも前からじゃなきゃわかんねーし。
片方の耳の上から頭頂部を回してもう片方の耳の上に花を差す。真正面から見るとカチューシャのようになっている。
つい髪を一房引き寄せてしまった。シャンプーの香りがした。
ハッと我に返って離す。
「はい、できた。似合ってるぜ」
顔の横に手を上げてそう言う。
返事がないので中元を見ると、赤くなっていた。
───え!?
「あ、ありがと…」
手で顔を隠そうとしているが、まったく隠れていない。
思わず笑う。
可愛ーなぁ、もう。
「中元ー」
「え?」
「今日、一緒に回んない?」
「え、あ、うん。咲達にも声かけて───」
「そうじゃなくて」
「………え?」
キョトンとした中元からつい目を逸らす。
「2人で、回ろ」
中元がさらに赤くなって───少ししたあとに、頷いた。
な、なんか段々真実が変態に…。( ・_・;)
次は、夕さん!