コスプレ喫茶開店
どうも、久しぶりに書く気がします。
夕です。
開会式が終わり、いよいよ宝岳祭が始まる。
教室も準備は完全に終わった。
あとは開店だけ。
「いざとなると緊張するよね」
「えーオレは楽しみ」
僕の周りで狼がうろちょろしている。
1日目の今日は1年と2年の模擬店の日、明日の2日目はステージ発表が行われることになっている。
小森さんが出るファッションショーも2日目。
「そろそろ開店するよー」
「はーい」
教室がにわかに騒がしくなる。
僕たちは4人とも午前中の店番。
ホール当番をしながら、注文があればお客さんと写真撮影をする。
「コスプレ喫茶、開店しまーす!」
あ、きた。
教室のドアを開けると、外で待っていたらしい生徒や一般人が数組入ってきた。
「まずまずの人数じゃないかな?」
オレ写真のスタンバイしてくる!と言って消えた朝弥の代わりに、すぐ近くでなぜかぼーっとしていた由輝に声をかける。
「これからまだ増えるぞ、きっと」
「うん。お昼時とかね」
さて、そろそろ仕事にかかりますか。
お客さんの注文をもらってキッチン係に渡す。
まあ、これだけなんだけど。
注文をとりにいくと、一般のお客さんに「軍人さん?」とか「出稼ぎ頑張ってねー」とか言われるわけで。
その度にそれっぽい答えを返さなければいけないのが少々大変だった。
「海賊さーん、ご指名だよー」
そんな僕に対して真実はかなり好評らしく、すでに何度か写真に呼ばれてる。
撮影は有料にも関わらず、狼が撮るってのが面白いからか結構人気みたいだ。
「軍人さん、指名でーす」
一通りやりきったことろでまさかのご指名。
「んー」
朝弥の仕切る撮影スペースに………着く前に足を止めた。
だって。
そこで僕を待ち受けていたのは。
「茜ー」
「うげ…」
すっごい笑顔でひらひらと手を振る姉さんだったから。
「なんで来たの!」
「茜の働きっぷりを見に。それにしてもすごい格好してるわねー」
僕の軍服をまじまじと眺める。
明日からだいぶこのコスプレのことでからかわれるなぁ…。
はぁ、と溜め息をつく。
「僕を指名したのって…姉さん?」
「えぇ」
うわぁ…。やっぱり。
せっかくの宝岳祭なのに、1番最初に撮る写真が姉さんとふたりとか。
「朝弥が撮ってくれるの?」
「おう!」
「じゃあ、はい、お金」
姉さんが朝弥に代金を渡す。
そして僕を引っ張ってカメラの前に立った。
ここで変な顔とかしてたら後が怖いから、とりあえず笑っておく。
「はい、ちーず!」
カシャッと朝弥の本格的なカメラからシャッター音。
「満足したなら帰ってよ?」
「満足?してないわよ。久しぶりに母校に戻ってきたんだからもう少し歩いてみて、それから帰るわ」
それだけ言って姉さんは現像したての写真を受け取ると颯爽と教室を出ていった。
喫茶店に来て写真だけ撮って帰るってどうなの。
まだ始まったばかりなのに、すでに疲れたんだけど。
「綾子姉さん何しに来たんだ…?」
「暇潰しでしょ。ついでに僕の弱みみたいなの探しに」
「あいかわらずだな、姉さん…」
朝弥が遠い目になる。
僕もつられて遠い目になっていたところへ、後ろから肩を叩かれた。
「西川」
姉さんが戻ってきたかとうんざりして振り返ると、そこにいたのは意外な人。
「…あ、吉野さん」
「面白そうなことやってるって聞いたから」
「今休憩中?」
「そう。手作りお菓子の店してるの」
あとで来てみて。そう言って吉野さんはぐるりと喫茶店を眺めてから、壁に貼ってある役の紹介を読み始めた。
と思ったら僕のを探していたようで。
「あ、あった西川の。へー…軍人やってるの」
「まあね。出稼ぎ中の設定」
この服で気づくよね、普通は。
「軍隊に戻れない彼のために一緒に写真を……って、写真も撮ってくれるの?ここ」
「朝弥がね。有料だけど」
「へぇー」
あれ?目が輝いてる?
映研部の血が騒いだか?
……………。
「西川でいっか、撮りましょ」
うん。そうくると思った。
姉さんの時と同じように引っ張っていかれる。
カメラの前に立つといきなり腕を組んで引き寄せられた。
「西川は戦争から無事帰ってきた恋人役ね」
「え、あ、う…うん」
え、なに、そういうもの?
「はい、ちーずっ!」
朝弥の合図とともにシャッターがきれて、吉野さんがすっと離れた。
「それじゃ、私そろそろ休憩終わるから。西川、写真もらっといて」
朝弥のカメラならすぐに現像できるのに、吉野さんはいななってしまった。
仕方なく写真を受けとる。
「………………」
腕を組んだ僕と吉野さんの写真。満面の笑みの吉野さんの隣で僕があらぬ方向を見ているという、どこかで見たような写真だった。
見せたら何かいわれるよなー。
そこで、はっと思い出す。
西川は戦争から無事帰ってきた恋人役ね。
「そこー、さぼってないで働いてー」
「あ、僕?はーい」
映研部の吉野さんは何気なく言っただけなんだろうけど、それを肯定した自分が急に恥ずかしくなって、逃げるようにホールの仕事に戻った。
結局何が言いたかったのかわからない。
次は秋雨さん、頑張って。




