ミッション的な
緋絽です!
俺は今、校舎裏を見張っている。
非常階段の手すりの陰に隠れてオペラグラスを片手に膝をついていた。
「こちらA地点、特に異常なし!!」
『了解!!こちらB地点、異常ありません!!』
「了解!!」
B地点――朝弥からの応答にトランシーバー…いやいや携帯を閉じる。
楽しい!これ!
いや、これは決して遊んでいるわけではない。
汗を拭って体勢を変える。
そもそも依頼内容がおかしいのだ。
数日前――。
「ちょっと、これ見てよ!」
茜が微妙な顔をしながら入ってきた。
「何ー?」
カメラのレンズを拭いていた朝弥がマヌケな声を出す。
マンガを読んでいた俺はマンガを閉じてソファから立ち上がった。
「どうした?」
依頼箱から取ってきたのだろう、2枚の紙を持って、差し出した。
1つは黒い、しかも便箋入り、もう1つは普通のだった。
「どう思う?これ」
黒い方を開く。
“美しき生徒の黒い部分を表へ出そう、これが私の使命だ
万事屋同好会諸君、私を止めてみろ!!”
「……名前書いてないよな…」
「怪しいこと、この上ないよね?」
「まぁなぁ」
「見せろ!」
朝弥が奪って見ている間にもう1つの方を見る。
“酷いいたずらをされました。犯人を見つけてほしいです。
2年B組 上杉 春奈 ”
いたずら…。
「なんだこれ!」
「挑戦状…ってやつだろ」
「うーん…」
そこに由輝が帰ってきて、手紙を見せた。
「やるか」
「当たり前」
外へ出ようとドアに手を伸ばして――急にドアが開いた。
「うわっ」
「ちょっと聞いてよ!わけわかんない!!」
「さ、咲…ちょっと落ちついて…」
「落ちつけないわよ!!腹が立つったらない!!」
ジャージ姿で入ってきた平方の後に中元、吉野、小森ちゃんが入ってきた。
「何事?」
やや呆れ気味で由輝が聞く。
「それがね―――」
放課後、帰り道に校舎裏を通ろうとしたら上から黒い液体が落ちてきたというのだ。
小森ちゃんの上に。
平方がとっさに助け(突き飛ばし)たおかげで小森ちゃんにはかからなかったが、自分にはかかってしまったと。
よくよく見れば、小森ちゃんの制服にしぶきが飛んでいた。
「これも……机の上に…あって…いたずらかなって…思ってたから、その、あの…」
「放っといたわけだ」
「は、はい…」
渡された予告状的なものを見る。
“あなたの黒い部分をさらします”
「すっごくわかりにくい表現だね」
茜がのぞきこんで言った。
「で?犯人を見つけてくれってこと?」
「そうよ。こんなの許せない」
吉野が憤るように言った。
大きくて意思の強そうな目に怒りが宿っている。
「じゃあ2:2にわかれるか。オレと茜が飛鳥の方で――」
「私も多分そいつにやられたわ」
突然入ってきた声に全員動きを止める。
「え?」
戸の方を見ると、ボブくらいの長さの髪が内側にカールした、おっそろしいほど足の長い女生徒が立っていた。
「私、上杉春奈。飛鳥ちゃんも黒いのかけられたんでしょう?」
「は、はい。春奈さん」
「知り合い?」
朝弥が尋ねると、小さく頷いた。
「モデルの…先パイです…」
次は夕さん!