第6話 眩い決闘
思超堂 地下の間
李光は、自身の思超・恐雷説の力をフル活用した速度で司馬章を蹂躙するも、司馬章はその速度に対応できるようになってきた。
そして彼が初めて攻撃を李光に叩き込み、一時的に彼の素早い動きを止めたのだった。
「次の一撃で決着をつけよう!李光!」
司馬章が宣言する。李光は喜びの表情を浮かべながら頷く。
司馬章は再び皮膚の内側に炎をため(イメージに過ぎないが)、カウンターの構えをとった。一方の李光も、過去最大の大きな雷を発生させ、纏っている。学者であるはずの彼らの表情は、戦士そのものだった。
(やはり、思超家は想像力だけで強くなれるかもしれない)
孫操備は改めて考えた。そもそも思超は言い換えれば魔法・妖術の類で超人的な力や現象を指し、必ずしも戦闘のためだけにあるとは限らない。思超家は、いわば学者が化けた魔法使いであり、戦士ではない。思超を戦いに使う者が多いだけなのだ。
だからこそ、戦う思超家は、普通の兵隊のように鍛錬が必要かと思われていたのだが、孫操備は二人の決闘を見ると、〔想像力次第で鍛錬を補うほどの強さを得られる〕と考えるようになったのだ。
先に動いたのは李光だった。彼の腕に纏わりつく雷はこれまで以上に弾けている。
「行くぞッ!"雷伯撃"!!!」
李光が使う中で最大の技、雷伯撃。やがて、雷は李光の身体中を包んで大きくなり、巨人の形を造った。雷の巨人の腕は、李光の腕と連動して司馬章に襲いかかる。
司馬章は、溜まりに溜まった炎を李光の内側に一気に流し込むイメージをした。
そして、電気の塊が司馬章の間合いに侵入する瞬間、司馬章は炎を一斉に放出した。
「"華朱牙燃"」
司馬章の両手から放たれる炎は李光の身体を糸が貫通するかのように、一点を焼きながら通過することで、内側に大きな刺激を与えて、消滅した。
一方で、雷でできた巨人の拳は、司馬章の表面をバリバリと傷ませながら衝撃を与えた後、消滅した。
二人は深手を負い、同時に倒れる。孫操備がカウントダウンをはじめ、五秒が過ぎてしまった。
「六…七…八…」
二人は倒れたまま、呼吸しかしていない。お互い、かなりのダメージを受けたのだろう。この闘いは引き分けになると思われた。
…………………………………………………………が、
「九……ジュッ」
十の発音の途中で、司馬章が起き上がったのだ。
「ハァ…ハァ…。俺のっ、勝ちだ…」
この時、李光に立つ力はなかったが、司馬章の勝利の瞬間を確実に目視していた。それは、自他ともに司馬章の勝利が認められた瞬間だった。
孫操備は大声を上げて彼の勝利を宣言する。
「勝者は司馬章!司馬章が勝ったんだ!」
李光はそれを聞くと、静かに笑い、また目を閉じた。司馬章も、勝利を確信すると、またその場に倒れた。
思超堂 地下の決闘
司馬章の勝利