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BEYOND SOUL  作者: 史邦ヒスト
東章 長安編
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第4話 長安の学童

 司馬章と孫操備は、天理討伐に必要な思超家を旅に誘うため、思超堂にやってきた。

 思超堂(しちょうどう)。長安南部にある巨大な図書館で、あらゆる思想家がここに寄り、様々な書を読んだり、他の思超家と議論したりしている。


「ここが思超堂か。想像以上にデカいな」


 司馬章が驚く。


「当たり前だよ。ここは"長安の学童(ちょうあんのがくどう)"だからね」

 孫操備が答える。長安の学童は、長安市民が名付けたここの別名だ。

 二人は、思超堂の中に入った。


「やぁ、お久しぶりですな。操備どの」


 数名の学者が声をかける。中華の哲学者は、違う思想の者とも友好的なのだ。思超家に至っては、思想の違いで対立することを恥と捉えている。秦の時代に焚書坑儒(ふんしょこうじゅ)があって以来、思想の対立は悲劇を生むから対立してはいけないという風潮が広がったのだ。


「おや?そちらは…」

「炎について考える哲学者であり、炎を操る思超家・司馬章です」


 孫操備が紹介する。


「どうも」


 それを聞いた学者たちは何かに気づき、揃いに揃って質問する。


「と、いうことは君はあの司馬典の親戚か?」

「…えぇ、孫です」

「そうかそうか。君の祖父・司馬典もよくここに来て、我々と議論を重ねていたのだよ」

「どうだね、祖父は元気にしてましたかな?」


 司馬章は、回答に戸惑った。「死にました」と伝えるべきだが、彼らの話っぷりから、祖父と相当親交があったと思われる。


「祖父は…」

(また、じいちゃんに会うのを楽しみにしてたのかも知れない…それでも)

「………亡くなりました」

「!」「!」「!」「!」


 学者たちはその言葉の衝撃で思わず口を空けた。涙は見えぬが、目も限界まで開いている。


「そ、そうか…それは…」


 彼らは司馬章よりもずっと大人(年上)だ。祖父を失った悲しみを思い出したうえに、自分たちのことを気遣いながら言葉を放つか迷った彼の心中を察した。


「ところで、司馬章どのは何故ここに?」


 一人が話を変える。

 司馬章は、ここに来た目的は祖父を殺された自分の復讐のためと言えなかった。また、亡くなった祖父のことと関連付けてしまう。


「旅をしてまして、強力な思超家を旅のお供にしたいと思い、ここに来ました」

「今、李光(りこう)はいますか?」


 孫操備が学者たちに聞く。


「あぁ、彼なら三階にいるよ」


 孫操備は司馬章に耳打ちする。


「他にも思超家はいると思うが、まずは李光を誘おう」

「分かった」


三階に向かう途中、司馬章は孫操備に聞いた。


「なあ、思超ってどこまで種類があるんだ?」

「そりゃあ、思想をまとめた書の数だけ思超はあるでしょ」

「俺、天理とじいちゃんが戦ってるとき、天理が真っ黒の、この世のものとは思えない物を操ってた気がするんだ」


 孫操備は、少し考えて答える。


「それは、感情だね。この世の物質じゃなかったらそれしかないよ」

「感情?」

「いい?司馬章。思超は六つの式で分類される。あの書を取ってくれ」


 司馬章は、途中の本棚で[思超大全(しちょうたいぜん)]という書を取り出した。


―思超は次のように分類される。

     ↓

司質式ししつしき・・・物質やエネルギー、感情などの概念そのものを(まと)い、自在に操る思超。


数学式すうがくしき・・・数学的な状態・状況操作をする思超。


成体式せいたいしき・・・使用者の身体を強化したり、性質を変化させたり、別の個体に変身する思超。


環境式かんきょうしき・・・使用者周辺の空間を自在に変化させる思超。司質式に近いが別の種類。


護獣式ごじゅうしき・・・神や武人、動物などを生成し、使用者の強化や護衛に使う思超。―


「理解した?」


 孫操備が聞く。


「何となく。つまり、俺は司質式で操備は数学式ってこと?」

「そう、そゆこと。こうして思超を分類することで、思超家の思想も何となく分かるでしょ?」

「確かに、司質式は一つの概念を探究する思想家ってイメージで、護獣式は宗教家っぽいな」


 司馬章も納得する。一見、意味不明な思超でも、その人の思想から思超の仕組みが分かったりもするのだ。


 思超堂 三階


「やぁ、李光」


 一人の思超家が振り返る。


「孫操備か。隣は?」

「司馬典の孫、炎の思超家・司馬章だ」

「(あの司馬典さんの孫か)……何か用でも」

 李光は単刀直入に言ってほしいのだ。

「頼む、俺の旅について来てほしい。俺の祖父を殺した天上王真理公子という男を倒すための旅に協力してくれ!」


 司馬章は凛とした目で李光を見つめた。


「李光、奴は反乱の黒幕でもある。国を救うと思って、僕からも頼む…」


 孫操備もお願いした。

 理光はしばらく目を閉じたが、深く考え、


「雑魚との旅は俺の命を危険にさらすようなものだ」


と、断った。


「お、おい!李光!そんな言い方はないだろう!」


 孫操備が怒るのを無視し、李光は歩き出した。


「操備、俺がまだ強くないのが悪いんだ。他を探すか、強くなってまた行こう」


 司馬章は孫操備をなだめるが、


「俺は、お前が弱いとは言っていないぞ」


 李光が呟いた。


「え?」


「……地下へこい、決闘だ。お前が勝ったら、行こうじゃないか」

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