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BEYOND SOUL  作者: 史邦ヒスト
東章 長安編
3/45

第3話 三分の計

「クソっ!あの思超家どもめ!」


 一人の暴漢が悔し声を上げる。


「オイ!お前ら!今日中にあのガキ殺るぞ!」

「応ッ!」


 三人の暴漢は再び司馬章を追い始めた。





 司馬章と孫操備は長安の通りを歩いていた。


「で、これからどうする?」


 孫操備が聞く。


「あぁ、この長安は大きい。強力な思超家をあと数人、旅に連れていきたい」

「それなら、思超堂(しちょうどう)に行くといい」


 孫操備はアドバイスした。


「思超堂?」

「長安中の学者・思想家及び思超家が集う図書館だ。長安の南部にある」


 今、歩いているのは長安南東部。四町先にその図書館が見えた。


「すぐ近くじゃん!早く行こう」


 二人が思超堂に向かおうとした時だった。


「いたぞ!あのガキだ!」


 さっきの暴漢たちだ。(たる)を持っている。


「燃えろ!」


 司馬章は左腕を燃やし、戦闘の構えを始めた。


「今だ!やれ!」


 一人の号令とともに、別の二人が樽を投げた。樽は壊れ、中の水が散乱する。


「くそっ、腕が濡れて炎が出せない!」

「ボコボコにしろぉ!」


 二人の棍棒が司馬章を襲う前に、孫操備が止めた。


「ここは僕が相手だ」

「ん、お友達か?」


 三人は孫操備に迫る。


「お前がなんだか知らねぇが、俺らを止めたからには、お前から死んでもらうぜ!」


 孫操備は深呼吸をする。


「死ねぇエエエエエエ!!」


 一人が棍棒で孫操備の頭蓋を強く殴った。しかし、孫操備はビクともしない。


「は?コイツも化け物かよ…!?」

(これが、操備の思超か!)


 司馬章は目を丸くした。


「僕の思超は"三分の計(さんぶんのけい)"あらゆる衝撃を三等分して体の三つの部分に均等に流す思超だ」


 "三分の計(さんぶんのけい)"…孫操備の書いた書名であり、彼の思超。使用者の身体に加わる力を三等分して、別の部分に分散することができる。


 三分の計はこれだけではなかった。


「な、なら何度でも殴れば…」

「無駄だよ」


 孫操備は暴漢の体に触れた。


「"三割速(さんかっそく)"」


 すると暴漢の動く速度は三分の一まで遅くなった。


「触れた対象の速度や力を三分するのも僕の思超・三分の計だ」

「………!」


 暴漢たちは開いた口が塞がらない。カツアゲ程度で襲った弱い青年二人がどちらも思超家だったこと、それも生の人間が太刀打ちできないほどの思超使いであることに、思わず口が大きく開いていた。


(す、すげぇ)


 司馬章も孫操備の思超に驚いた。


「じゃ、こっちの番ね」


 今度は孫操備が暴漢の腹に正拳突きを当てた。


「フン!所詮学者の拳!俺の筋肉で…」

 「"三離防(さんりぼう)"」


 暴漢の孫操備の攻撃に対抗する防御力が、腹から離れた頭・右足・左足の3つの部分に分散された。


「アンタの腹は無力だよ」


 暴漢の腹は力を抜いた状態となり、孫操備の弱い突きに耐えられなくなった。


「ごふっ!」


 暴漢は、血を吹きながら倒れた。


「あががが…!嘘だろ…!」


 残る二人は倒れた暴漢を連れて逃げていった。


(これが…長安の思超家…!)


 司馬章は、孫操備に強いあこがれを抱いた。




 暴漢たちを二度も撃退し、二人は思超堂の前まで歩き着いた。


「見ろ、司馬章。これが思超堂だ」

「デカイなぁ。こん中に入るのか」


 さっそく入ろうとする司馬章を孫操備が引き止めた。


「いいか?ここに入ることは、僕たちの旅が本格的に始まるということだ。正直、思超家になったばかりの君にその覚悟はあるのか?」


 司馬章は答えた。


「あぁ、覚悟はできている」


 孫操備はニマっと笑う。


「そうか。じゃあ喜べよ!これから僕たちの旅が始まるんだぜ!」


 司馬章はきょとんとしたが、やがて笑みを浮かべ、


「……フフッ。そーだな!いくぜ相棒!!」


 と、孫操備の肩を強く叩いた。孫操備も嬉しく歩みを弾ませた。

 夕日が、二人を紅に煌めかせた。

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