第14話 恐怖の賊王
長安西部上空
空飛ぶ馬車から孟寧は、景色を見下ろしていた。
「ここらでいいだろう」
孟寧は馬車から降りると、魏匠とは対照的にゆっくりと、かつフワフワと降り立った。
「お、おい!あれを見ろ!人が…浮いてる…!?」
長安西部の住民たちは空を見上げた。空からゆっくりと降りてくるのは、ニヤリと笑みを浮かべた怪しげな男。すぐさま衛兵が彼の降りるであろう場所に配置され、槍を構えた。
そのうち、一人の老兵が何かを思い出すかのように、腰を抜かした。
「あっあああ!アイツは…!」
「ご存知なのですか」
老兵は背筋を震わせながら話した。
「アイツは、南方の節度使で、7度に渡る反逆で、多くの唐兵の命を奪った男じゃ…」
老兵は続ける。
「五年前の戦争では、10万人いた味方の軍勢がワシ一人になるまで味方は奴によって殺されてしまった…!」
五年前 南方の節度使だった孟寧の六度目の反逆…"第6次孟寧の乱"では、唐軍10万人と孟寧一人が戦った。
はじめは味方は侮っていた。10万の軍勢で1人を討つのはとても容易い動作だったからだ。
しかし、開戦後すぐに3万人が踏んでいた地面ごと宙に浮き、落下して死亡した。
それを見て怖気付いたのか、残る7万人は北へ逃走を始めたが、孟寧は1000人ずつ強い重力で圧殺していき、長安に生還できたものはこの老兵だけどなっていたのだ。
「あー、そうそうご名答」
孟寧は左手を上げて左側にあった民家を潰した。
「私は"思超"という魔術のようなものが使える者でね。重力を操る思超のお陰でこんなことができるのだよ」
「……!?」
衛兵たちは触れてもないのに民家が潰れたことに驚き、ズリズリと引き下がっていた。
「私の思超は"重子"この世の物は始めから重みがあるのではない、物にかかる"見えない力"が物に重さを与える。と、いう考えを記した書名でもある。私はその"見えない力"を…」
今度は右手を上げた。
「"重力"と名付けた!」
孟寧の右側にあった民家が潰れた。
「私の手から二百尺(4メートル)以内にある物体の重力はすべて、私の思うように変えられる!」
孟寧の思超…【重子】は、彼の「この世の物質にかかる見えない力こそ重さだ」という思想を記した書名であり、思超名。彼の手から二百尺以内にある物体の重力を操作することができる。
孟寧はこの思超を用いて、重力増加による圧殺を繰り返していた。
「さぁ、そこの爺さん。確か、あの戦いの生き残りだって?」
孟寧はニヤニヤしている。
(まっまずい!ワシを殺そうと考えておるなッ!?)
その瞬間、孟寧は老兵に向かって手を伸ばした。
「ん゙っ!」
だが重力で圧殺されたのは、隣の新兵だった。
「……あぁ!そんな…!」
老兵は跡形もなく潰れた新兵の遺体に寄り添った。ここで死ぬのは自分であると思っていたのに…。
そんな表情をする老兵をよそ目に、孟寧は別の新兵に重力を加えようとしていた。
「ここの新兵どもを虐殺し、お前をまた孤独にしてやろう」
「どっどうか逃げ………」
ギリギリと潰れるような音を立てながら新兵は身長が圧縮されていく。
「やめろぉぉぉお!」
その時だった。一匹の鷹が孟寧を強く押し蹴った。滑空で勢いのついた蹴りは、孟寧の体勢を大きく崩し、その反動で孟寧は思超を解除した。
「ハッ!ハッ!…ハー!助かった…!」
新兵はギリギリのところで圧死を回避できた。
鷹はその場でホバリングした。孟寧が立ち上がって聞いた。
「…王明か」
「…………いかにも」




