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BEYOND SOUL  作者: 史邦ヒスト
東章 長安編
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第12話 乱晶

 洛陽(らくよう)占拠から6ヶ月後 西暦756年文月。洛陽を占拠した反乱軍の指導者・安禄山(あんろくざん)は、自らを『大燕聖武(だいえんしょうむ)皇帝(こうてい)』を名乗り、"(えん)"の建国を宣言した。


「いいかっ!野郎ども!俺は楊国忠(ようこくちゅう)をブチのめし、玄宗(げんそう)陛下を唐と燕の両国の皇帝に据える!腐った中華を一掃させてやろうじゃないかぁぁ!!」


 安禄山の猛々しく豪快な声が洛陽内に響く。


「安禄山!安禄山!安禄山!安禄山!」


 兵士達による安禄山コールが止まない。


「これから、長安(ちょうあん)に攻め込む!俺らに従わねぇ民は腐った国を望む腐った人間だ!容赦なく殺せ!」


 安禄山が声を発する度に、兵士たちは勢いをまして応答する。


「それじゃあ!今夜の集まりは終わり!解散だァ!」


 安禄山は太鼓を鳴らすと、兵士たちは


「安禄山、バンザーイ!」と、叫びながら、各々の家に帰っていった。


「安禄山様。このあと、お食事の時間です。思超家の皆様がお待ちしておりますので、すぐに参りましょう」


 参謀が灯篭(とうろう)を持って現れた。


「ウム。俺も腹が減っていた!今すぐ行くぞ!」


________________________


 洛陽内城ないじょう(城の中心にある城主の館)の食事の間では、円形の机に十三の椅子が並べられていた。

 既に、十二席を座っているのは反乱軍直属の思超家(しちょうか)たちだ。彼らは元々、思超(しちょう)を悪用したならず者集団で、国に追われていたため、安禄山が反乱軍に加入させた。実力は構成員によって違い、戦闘向きの者もいれば、後方支援や偵察向きの者もいる。

 その思超家団体の名は____"乱晶(らんしょう)"。

 団体の(おさ)はおらず、すべての構成員は、食事のときの席で立場が決められる。

 全員が対等な関係で強い結束力を持っている。


「ガハハハ!先に集まっていたか!こりゃ参った!」


 安禄山が豪快に笑いながら、中央の席に座った。


「改めて、始めようか。食事(はなしあい)を」


________________________


 乱晶(らんしょう)の構成員は12名。

 右一席(ういっせき)魏匠(ぎしょう)

 右二席(うにせき)呂辛(りょしん)

 右三席(うさんせき)公孫雨(こうそんう)

 右四席(うしせき)姜役(きょうえき)

 右五席(うごせき)空教(くうきょう)

 右六席(うろくせき)史思明(ししめい)


 左一席(さいっせき)物部(もののべの) 苦死羅(くじら)

 左二席(さにせき)孟寧(もうねい)

 左三席(ささんせき)徐刀(じょとう)

 左四席(さしせき)周起(しゅうき)

 左五席(さごせき)天上王真(てんじょうおうしん)理公子(りこうし)

 左六席(さろくせき)楚貴(そき)

 席の名は食事の時の座る席であり、彼らの組織番号である。

 安禄山は右席(うせき)左席(させき)に挟まれた中央の席に座る。彼が、乱晶の統率者であるかのように。


「うめぇ!やっぱ馬の肉はうめぇ!」


 右一席の魏匠がガツガツと肉を食う。


「おい魏匠!俺の肉を食うな!」


 肉を取られた右二席の呂辛が魏匠を睨む。


「お前は野菜でも食ってろ!」


 魏匠は呂辛にニンジンを放り投げた。


「ふざけるな!俺がニンジン嫌いなこと分かってやってんのか!」


 呂辛は怒りで拳が震えている。今にも二人は衝突しそうだった。


「いい加減にして頂戴。アタシたちはならず者であれど、思想家としての知性は捨ててはいけないわ」


 左三席の徐刀が二人の対立を収めた。二人はフンとそっぽを向いた。


「んで、何スか?俺らを集めたのは、こっちは早く帰り帰りたいんスよ」


 左四席の周起が安禄山に無礼な態度を見せる。


「お前たちに来てもらったのは他でもない。長安攻めに参加してほしいのだ」


 安禄山は酒をドンと机に置いた。


「長安攻め?従軍しろと?」


 右三席の公孫雨が静かに水を飲む。


「あぁ!藍晶のほとんどは俺に付いてきて貰おう!」


 公孫雨とは対称的に、安禄山はグビグビと酒を飲んだ。


「ただし!左二席の孟寧!右一席の魏匠!お前らは先に長安に侵入して、都市を荒らしてやれ!」


 安禄山は、先発の孟寧、魏匠を長安に侵入させ、内側から長安を崩していこうと画策している。


「もちろんですぜ!安禄山のダンナ!俺が惚れたアンタの任務は絶対に成功してやるよ!」


 魏匠は張り切っている。


(性格も体格も被ってやがるなぁ)


 周起はケケケと笑った。


「ほぅ…私もか」


 孟寧も自慢げにアゴを軽く撫でる。


「時間は自由だ!俺達が長安に着くまでに長安内部を荒らしてくれればそれでいい!」


 安禄山は魏匠と拳をぶつけた。


「健闘を祈る!」


 二人は突然、離席して長安に向かった。


________________________


 そして現在 長安

 李光は道中で司馬章と孫操備に忠告した。


「いいか。天理を倒すつもりなら、衝突を避けられない集団がある」


 二人は息を飲む。


「その名は"乱晶"。思超を使って犯罪を繰り返すならず者の思超家集団。つい最近、知り合いから情報を得たが、天上王真理公子という男も、乱晶の構成員となったようだ」


 李光は拳を握った。


「奴らは何を目的にしているかが分からない。反乱が起こる前は思超を悪用した窃盗や略奪を行っていたが、反乱以降は安禄山の下に付き、戦争にも積極的になっている」


 長安から見える夕日は沈み、薄暗い闇が空を覆うのであった。

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