1-26 潜入、〇〇城! (名前を知らない)
「見つからんのか?」
「は……王のおっしゃる特徴の娘は……他の町にも騎士を派遣していますが……」
「もういい、下がれ」
「申し訳ありません。失礼します」
謁見の間から騎士が出て行くと、偽の王が頬杖をついてため息をつき、独り言をつぶやき始めた。
「どこへ行きおったのだ? 子供の足ではそう遠くへは行けないだろうし、あの後すぐ包囲網を敷いたと言うのに……」
偽国王はあの夜、すぐに態勢を整えて騎士達を町へ放ったがその夜は見つからず、すぐに近隣の町へも手を伸ばしたが三日かかっても見つかる事は無かった。
「まあ子供一人逃げたところでどこかでまた奴隷にされて終わりじゃろう……今日は地下へ行く日か、この前は邪魔をされたが今日は愉しむとしようか。この世界を壊すのは勿体ないが、神の命令ならば仕方ないか……シルトを消す前に遊ばせてもらおう」
偽国王は逃げた女の子を追う事に注力していたが、地下通路を封鎖するのを忘れていた。これを閉じていればもう少し決戦まではかかったであろう。
しかし、事態は動き出した。終幕に向けて。
◆ ◇ ◆
「こっちだ……」
グライドさんの案内で、月の無い夜を俺達は歩く。それはもちろん偽国王打倒の為である。俺に続き、綾香、フィリア、シルトにノーフィスがそっと城の外壁にそってゆっくりと移動する。
「あ、見覚えがあります。この辺です……!」
ノーフィスが地面を探ると、ガコンと地下へ通じる道が現れた。シルトが俺達の顔を見て一言呟いた。
「ここから先、誰かに見つかれば後戻りは出来ない。準備は大丈夫かい?」
「ここまで来て『ダメです!』とは言わないだろ? さ、ノーフィスはグライドさんと帰るんだ」
「いえ! 私も行きます。奴隷の子達を外に出さないと……」
「だが……」
俺達は引き止めるが、頑として聞いてくれない。無理矢理グライドさんに連れて帰ってもらおうか考えていたその時、シルトが口を開いた。
「仕方ない、連れて行こう」
「シルト?」
「彼女は奴隷だ、死んでもそれほど重要じゃない。僕達は僕達の、彼女は彼女のやりたい事をすればいい。どうせ地下の部屋に来るのを強襲するんだ、隠れてもらって逃がしてくれれば御の字さ」
「私とサスケが護衛するから、安心してハル」
「わんわん!」
「シーッ! 大きな声で吠えるな」
「くぅぅん……」
サスケが尻尾を垂れ下げながら頭を下げたので、撫でてやる。後はノーフィス達を戦闘に巻き込まないように気を付けるしかない、か。
「フィリア、私達も女の子達を助けるわよ」
「そうですね! ハルさん、国王はお任せしますね!」
「俺だけ!? ……まあいい、でも気をつけろよ? 偽国王だけが敵って訳じゃないんだし」
「分かってるわよ、逃がしたらすぐに加勢に回るから! グライドさんはここで待つんですよね?」
「ああ、いざという時は騎士達を引き連れて向かうつもりだ」
「よろしく頼むよグライドさん。よし、突入……!」
シルトが先に入り、俺達が後を追う形で通路へと潜りこむ。ひんやりとした空気が体にまとわりつき、いやが応にも緊張が走る。
「結構長いな……ノーフィス、よく逃げ切れたよな……」
「や、もう無我夢中でしたから……あ、こっち、だと思います」
ほんのり覚えているというノーフィスの案内で少しずつ、特に角に注意しながら進む。しかし、敵はおろか虫一匹見つからなかった。
「罠、ですかね」
「そうだな……」
フィリアが俺の服の裾を摘まみながらポツリと呟く、俺もその可能性を考えるが、それにしても嫌な気配はまったくしない。しばらく歩くとノーフィスが口を開いた。
「あ! あれです、あの扉……そこに皆が捕まっています」
「よし、俺が……」
「いや、シルトがやられるとこの世界が崩壊してしまうからここは俺が行く。万が一ってやつだよ」
俺がそう言うと綾香が俺の手を掴んで宣言する。
「それじゃ私も行くわね。陽、剣を出しておきましょう」
「お、そうだな。下、L1、R2、左、右、L2、R1……と」
いちいち面倒なプロセスだが、剣を持ち歩かなくていいというメリットはでかい。俺と綾香の手に大剣とレイピアが現れる。
そろりそろりと扉に近づき、扉を開けようとしたがやはり鍵がかかっていた。
「ダメか……」
「やっぱり待った方がいいわね、それとも技で吹き飛ばす?」
「向こう側に人が居るから止めておこう。戻るぞ」
綾香に手で合図して戻ろうとしたところでふいに声がかけられる。
「何者じゃ!? そこで何をしておる!?」
「うわああああ!」
ズバシュ!
「ぎゃああああああ!?」
驚いて声のする方へ向きながら剣をむやみに振り回すと、結構近くにいたのか手ごたえがあり、悲鳴があがる。
「あ!? や、やべ!?」
「あーあ……これは死んだんじゃないかしら……」
「ど、どうしたんですか!?」
「今の悲鳴は!?」
悲鳴を聞きつけシルトとフィリアが駆けつけ、松明で照らすとそこに居たのは……。
「こ、国王!?」
「え!?」
「こ、こいつが偽国王?」
言われてみればここに来るのは国王だけのはず……となると、今ので倒したのか……すると、ノーフィスが国王の懐を探り鍵を取り出す。
「みんな……!」
「ノーフィス!? あなたどうして……」
「この人が助けてくれたの!」
嬉しそうに俺を差し出そうとするのを綾香が遮る。
「……何ですか? 私は陽さんを紹介しようと」
「別に見せる必要はないわよね?」
「ぐぬぬ……」
何かよく分からんがあまりいい空気じゃないな……俺は二人を引きはがしながら女の子達にも声をかける。
「話は後だ、ノーフィスは彼女達をグライドさんの所へ案内してくれ、分かるな?」
「は、はい! ありがとうございます! みんな、こっちよ」
嬉しそうなノーフィスが中に居る子達を促すと、どんどん、出て、くる?
「ありがとうございます!」
「ああ、本当に助かるのね……」
「このお礼は必ず……」
「た、助かったの……?」
「お礼は必ず!」
「ありがとう!」
「く、暗くて怖い……」
「待って!? 足がしびれて……!」
「悪は滅びたのね」
「後でいいことしてあ・げ・る♪」
「お母さんに会えるの?」
「良かった……私の番だった……」
「お兄さんかっこいいね!」
「お腹すいたよう」
「あわよくば自由の身!」
「あ、かわいいわんちゃん!」
「多いな!?」
「あ、全部で二十五人居ます」
「カットだカット! 何も言わないでいいから早く行って!?」
とりあえず女の子達が俺達にお礼を言いながら出て行き、俺と綾香にフィリア、そしてシルトだけになる。
「……ピクリとも動かんな……」
「これで倒したのかしら? だったらこれで戻れる?」
「で、ですね! 良かったぁ……」
「……」
シルトと俺は偽国王の死体を見ながら険しい顔をしていた。あの中ボス、ルボワールでもそれなりに強かった。ボスを任され、シルトを殺そうとする指名をもらったこいつが俺の適当に振った一撃で死ぬとは思えなかったからだ。
すると……
「う、ぐぐ……き、貴様等……まさか神の遣わした勇者か……」
ほら見ろ、やっぱり生きてた。床に倒れたままこちらを睨みつけてくる。俺は警戒しながら、偽国王に告げる。
「そうだ、ここで待ち伏せして倒すつもりだったんだよ。どうやら結構いい一撃が入ったみたいで安心したよ」
「おい、本物の国王はどこだ!」
シルトが叫ぶと、偽国王はシルトに目だけ動かして忌々しげに口を開く。
「ぐぐ、お前はシルト……どこに隠れていた……お前が隠れなどしなければこんなことには……げぼ……」
「え?」
「え?」
「ふえ?」
俺達の間抜けな声があがる。あれ? もしかして本当に……?
「死んだ……?」
「ば、馬鹿な!? おい、国王の居場所を教えてから死んでくれ!?」
シルトが乱暴に偽国王の体をグラグラと揺するが頭がぐわんぐわん揺れるだけでまったく反応がなかった。白目を剥いて血を吐いているのが軽くホラーだ。
「ダメか……まあいい、これで脅威は去った」
適当に放り投げてシルトがそんな事をいう。ゴン! と、いい音が地下通路に響き渡る。ま、まあ倒せたからそれでいいか?
「とりあえず姫に報告しに戻ろう……そうだ、この死体をこのままにしておくのもアレだな、フィリア、メガフレイムで火葬を頼む」
「任せてください!」
俺が頼むと、フィリアが嬉々として巨大な炎の塊を出現させる。
「女神見習いに葬られるのは中々無いわねー」
「そうだな、あいつも本望だろう。女好きだったみたいだし」
「では!」
フィリアがメガフレイムをぶつけるため死体へ放つ……すると!
ゴロゴロゴロ!
「あ!? う、動いたらダメですよ!?」
何と、偽国王の死体が動き出した!
「う、動くわいバカタレ!? お前等なんなの!? 死んだふりをして後ろから攻撃するつもりだったのに、適当に投げ捨てられて頭をぶつけるわ、火葬するとかお前等やばくない!?」
「大丈夫、これが平常運転だ。それに死んでるなら死体が腐る事を恐れて燃やすのは常識!」
俺がビシっと指を突きつけると、悔しそうに唇を噛みながら怒鳴りつけてきた。
「おのれぇ……馬鹿にしおって……! 普通倒したなら喜んで油断するだろうに……! だがシルトが居るなら丁度いい、そやつを殺してこの世界を終わりにさせてもらう!」
「綾香、フィリア! この世界のラスボスだ、さっさと片付けるぞ!」
「分かってるわよ!」
「わ、わたしも頑張ります!」
「来るぞ!」
シルトの叫びで、偽国王の体がメキメキと膨れ上がってくる! さて、終わりにさせてもらうぜ!
お待たせしました! (え? 待ってない? そうですか……)
遅いのに読んでいただきありがとうございます!
【後書き劇場mk2】
『いよいよラストバトルね!』
どれほどのものか、期待が高まるな!
『まさかの瞬殺に一票』
マジで!?




