1-25 テンプレを回避するための起死回生の一手
今はグライドさんとの話が終わったその夜、俺はベッドで目を瞑って考える。
とりあえずグライドさんの良い考えとやらを聞いた俺達は、決行日まで屋敷のお世話になる事になり、今は俺一人で部屋でごろ寝をしているところだった。
リーザとサスケも綾香たちに連れられて別の部屋なので、久しぶりに一人なのだが、その良い考えというのが引っかかっていた……。
「……木箱に入って移送……またか……」
そう、グライドさんの良い案とはタルに忍び込んで中へ運び込もう作戦だ! 俺達三人は正直うんざりしていたけど、昼でも夜でも正面から入るのはリスクが高すぎるという。
姫さんだけなら戻っても無茶はされないだろうし、シルトに騙されていたのを俺達に助けられたというシナリオを組んで乗り込む、とかも考えた。
しかし……王が偽物なら俺達の正体を知っているだろうし、よしんば城内で隠れたとしても町長の屋敷とは比べ物にならないほど広いので、すぐに王の部屋へ辿り着けるかは微妙だと判断した。
「はあ……木箱でも十分怪しいんだよな……いきなり剣で串刺しにされたらアウトだぞ……」
今回ばかりは流石に失敗しそうな気がする……。
「空気の入替でもするか」
何となく風に当たりたくなって、俺が窓を開けるといい月が出ていた。夜なのにかなり明るく、街並みもよく見えた。通りもよく見えるな、と思っていると建物の影からキョロキョロしながらあるく女の子が出てくるのを見かけた。
「こんな夜遅くに女の子……?」
遠目なのでよく状況は分からないが、チラチラと城を振り返りながらおどおどと歩いていた。月明かりに照らされた姿……衣服はボロボロだった。
「そういや昼間に奴隷商人が羽振りがいいみたいな話していたか……こりゃ何かあるか?」
俺は急いで外へ出て女の子を探す。あの様子ならそれほど遠くへは行っていないハズだけど……。
さっきみた建物の影付近を捜索していると、後ろでガタン、と物音がした。見ればごみ箱のふたがくわんくわん……と転がっていた。
「何だ……蓋か……なんてな!」
「!? !?」
俺はゴミ箱に一気に詰め寄り、中を見る。するとそこには頭を手で押さえて震える女の子の姿があった。
「あ、ああ……もう少しだったのに……みんな……ごめん……私はここまでみたい……」
「どうしたんだ? 何かから逃げているみたいだったが……」
ぶるぶると震えていた女の子がそっと俺の顔を見て、また呟いた。
「や、やっぱりもうダメ……この男に襲われて獣のように蹂躙された後、完全な性奴隷にされるんだわ……嫌だって言っても『体は正直だなお嬢ちゃん』とか言われるの。そして、いつしか私は快楽に溺れ……ああ、もう……」
「やめろ!? 酷い妄想だなおい! つか人を何だと思ってやがる!? ……何か困ってそうだったから助けようと思ったけど、そんな事を言うならもういい……」
帰って寝ようと踵を返した所でごみ箱がひっくり返し、中から女の子が飛び出してきて俺に抱きついて来た。
「ほ、本当に……? 本当に助けてくれる、の? み、みんなを……」
「みんな? あ、おい!」
女の子は気が緩んだのか、くたっと俺の胸に顔をうずめたまま気絶するように寝てしまった……みんなを助ける、というフレーズが気になるな。こっちはプリム姫もグライドさんもいるし、誘拐とかにはされないだろう。俺は女の子を抱きかかえて屋敷へと戻った。
◆ ◇ ◆
「おや、ハル様。外へ行っていたのですか? ……その娘は……?」
「あ、あわわ……」
丁度玄関を抜けるとプリム姫とフィリアに遭遇。そういえば魔法について授業を受けるみたいな話をしていたような気がする。おおかた夜食でも食べ降りてきたのだろう。
「俺にもよく分からないんだけど、何かから逃げるように歩いていたのを俺が見つけて連れて来たんだ。すぐに気絶したから事情は……」
「ああああ! アヤカさん! 一大事、一大事ですよ! ハルさんがー!」
「うるせぇ!? あ、どこいくんだフィリア!」
「とにかく、こちらへ。娘を休ませてあげましょう」
叫びながらどこかへ行ったフィリアはスルーして、ロビーのソファへ寝かせるとメイドさんが毛布を持ってきてくれた。寝息を立てる女の子から事情を聞くのは今は難しいだろう。歳は俺とあまり変わらない、かな? 藍色の短い髪が汚れている。
一応拾ってきた責任があるので、俺が別のソファで休む事を告げ、プリム姫には部屋へ戻ってもらった。念のためメイドさん達もたまに様子を見に来てくれるということなので俺も安心だ。
そしていつしか俺も眠ってしまい、翌朝となる……。
「それで? この子は何なの?」
女の子の目が覚めたので、シルト、グライドさん、プリム姫に綾香とフィリアを集めて話を聞くことにした。そして一番最初に口を開いたのは綾香だで、超不機嫌な顔で女の子を見ていた。
「それは今から聞くところだ……つーか、なんでそんなに怒ってるんだよ?」
「それは勿論ハルさんがその女の子を襲ったかもしれないからです!」
キリッとした顔で嫌な事を言うフィリア。あの時叫んで走って行ったのはそのせいか!?
「そんなわけあるか!? まあいい……で、何であんなところでウロウロしていたんだ?」
「私、は、ノーフィス……奴隷、です。お城に買われてから、他の女の子と一緒に閉じ込められていたんだけど、私だけは逃げ出すことができて……お、お願い、です! みんなを助けて! じゃないと王様にめちゃくちゃにされちゃう……」
泣いて懇願するノーフィスを見てグライドさんが困った顔で頭を掻く。
「ふむ……本来なら奴隷が逃げた時点で、持ち主に返すのが筋だが……城となると、偽の王が関わっている可能性が高いな。しばらくここで匿うとしよう」
「最悪、あの島へ置いておけば手は出せないでしょう」
シルトがそう言うと、プリム姫が口を開く。
「それにしても、奴隷を集めて如何わしい事を……これは早く討伐しなければいけませんね。木箱の用意を……」
と、興奮した所で俺が手を上げて言う。
「だな。でもノーフィスのおかげで、木箱作戦以外にもいい案ができそうだ。なあ、お前どうやって逃げて来たんだ? 地下からだったら隠し通路みたいなものから出たんじゃないのか?」
「えっと、無我夢中だったからよく覚えてないけど、地下通路から出てきたのは、城の城壁付近だったわ。そこから町の明かりを目指して走ったからどのあたりかまでは……」
「そうか、グライドさん城壁付近を調べることは出来るかな?」
「私が居れば難しくは無いだろうな。しかし、地下から王の部屋まではかなり遠いぞ?」
「いいんだよ、行かなくても」
「え?」
全員が俺に何言ってんのコイツって顔を向ける。こら、綾香とフィリア、俺を睨むのはやめろ!
「こいつが逃げられた、ということは奴隷部屋に来るってことだ。自室には呼ばずに如何わしい事をしようってんだろ? なら、その部屋か近くで待っていればその内来るってことだ。王様がその部屋にどれくらいの頻度で来ていたか覚えているか?」
「早い時は一日置きで、長くても三日以内には来る……そして女の子をぐちゃぐちゃにして帰っていくの……殺されはしないけど……」
「……オッケー、ならゆっくり待たせてもらおう。グライドさん、早速で悪いけど地下通路を探して欲しい」
「分かった。すぐ手配しよう」
「な、なんだかハルさんがカッコいいですね……」
「まだ疑惑が晴れた訳じゃないけど、ね……」
「折角いい事言ったんだから褒めてくれよ!?」
と、綾香たちとじゃれながら俺は考えていた。実際、地下通路がばれるとそこから侵入する、というリスクが高くなるため恐らくだが相当信頼できる人間にしか教えてはいないはず。
さらにその辺りに警備を回すと「何かある」と教えているようなものなので、居たとしても最小限の戦力しか居ないと思う。となると少ないリスクで城へ侵入でき、しかもカモがネギをしょってやってくる事があるならそれを狙わない手は無い。
そして、この日から三日後。グライドさんから隠し通路へ続く道が見つかったとの報告が入った。
さて、この世界を救うためにいっちょ気張りますかね……!
お久しぶりで申し訳ない……!
いつも読んでいただきありがとうございます!
【後書き劇場mrk2】
『月一じゃない』
う……
『しかも新作を始めるとか……忙しいのにアホじゃないかしら』
酷い言われよう……!? しかし、俺は負けない……! もうすぐ神殴りが終わるから……!
『それでも三作品あるんだけど……』




