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第三十八話____味から感じる心

アセビアはバスケットの中から、複数の野菜を取り出すと台所へと向かった。


「怪我を早く治すには栄養を摂ることが大切ですよ」


ぐつぐつと野菜を茹でる音、

ザクッザクッと野菜を切る音、シグマは料理という行為が奏でるその『音』だけで、かなりの満足感を得ていた。


「出来ました♪」


並べられた食器から漂う香りが、より一層シグマの食欲をそそる。


野菜スープと大豆をカラッと炒めたものがテーブルに並べられていた。


「おぉ!美味そうだな、早速いただきます!」


シグマは始めに大豆へと箸を運ぶ。

噛むと衣がサクッと音を立て、中からはタレの旨みと大豆の甘みがしみ出てくる。


少々油がしつこく感じてきた頃に、野菜スープへ手をつけた。卵に玉ねぎ、人参なんかも入っている。野菜を食べたあとスープを口へと注ぎ込む。


野菜から出た優しい甘み、そして温かいスープがシグマの空きっ腹に沁み渡る。


「すいません本当はお肉も用意したかったのですが……」


シグマは満足そうに口を開く


「野菜だけで十分!十分!アセビアの料理は毎回美味すぎるっ!」


アセビアは嬉しそうに微笑む

シグマはテーブルに用意された料理を全て平らげると、腹をさすりながらアセビアと目を合わせた


「アセビアの料理は、どこか優しさや懐かしさを感じる、料理から色々な気持ちが伝わってくる気がするんだ、なんか……不思議だよな」


「ふふっそれは嬉しいお言葉です」


アセビアはシグマが食べ終えた食器を持ち、台所へと足を運んだ。


「そう言えば仕事に戻らなくても大丈夫なのか?」


食器を洗いながら嬉しそうに応える


「今日はお休みをいただきました」


洗い終えた食器を並べ、再び椅子へと腰をかけた


「今日は、ずっとここに居ようと思っています」


シグマは少々驚いた


「せっかくの休みだぜ?自分の好きなように……」


アセビアはニコニコしながらシグマの言葉を遮る


「ここにいる時が一番楽しいのです」


シグマは思わずプッと吹き出した


「そうか……それなら仕方ねぇな」


シグマ自身も今この瞬間が楽しくて仕方がなかった。アセビアといる時は不思議と嫌なこと、不安や悩み全ての負の感情を忘れることが出来た。


ふと、バスケットに目をやると鮮やかな黄色の『とうもろこし』が目に入った。そこでシグマはあることを閃く。


「昼飯は俺が作るよ」


そういうとシグマは生ゴミが入った、ゴミ箱を漁り出した。


「あった!」


そう言いながら戻ってきたシグマの手には、以前食べた『ドロナマズ』の骨が握られていた


その骨を釣竿の糸に縛り付けると、とうもろこしを片手に立ち上がり、


「アセビア行こう!昼飯を取りに!」


そういうとシグマはアセビアの手を引き、川へと向かった。アセビアは急に手を握られたことに驚き、頬を赤く染めた。


川につくと持ってきた、とうもろこしを一粒糸の先についた骨に刺し、そっと水に浮かべた。


先程、糞が溶け込んだ水だと言われても誰も信じることが出来ない程に美しい水が広がっている。


なかなか手応えを感じない。


「釣れねぇなあ」


「釣れませんねぇ」


一時間程経っただろうか

程よく冷たい風が二人を撫でる

心地よくなり、二人共うつらうつらし始めたその時、ピシャッ!


水で何かが跳ねた音と、ほぼ同時に手元の釣竿に手応えを感じた。シグマは驚きながら竿を引く。


驚いたのはアセビアも同じだった。

興味深そうに、水面を覗き込む。


余程元気がいいのか、物凄い力で竿を引かれる

シグマは負けじと竿を引き返す


魚が疲れてきたのか一瞬、向こう側から竿を引く力が緩んだ。


その瞬間シグマは一気に力を入れ、竿を引き上げた。







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