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穢れを払うための渋々なる祈り

俺たちはギルドを後にして、街の裏路地にある地下水路の入り口へとやってきた。

鉄格子の先からは、むせ返るようなヘドロの悪臭と、冷たく湿った空気が這い出してくる。


アル「……うっ。外からでもすげぇ臭いだな。おいザイン、これからドブさらいだ。ネズミの病気をもらわねぇように、お前の祈りで俺たちを対策してから行くぞ」


俺がそう振り返ると、ザインはわざとらしく法衣の襟を正し、薄く笑いながら首を横に振った。


ザイン「おやおや、リーダー。神の御業を安売りするわけにはいきません。『対価なき祈りは届かず』……清浄なる神の加護を得るには、相応の喜捨が必要不可欠なのですよ。さあ、お布施の準備はよろしいですか?」


アル「金がねぇからこんな依頼受けてんだろうが! 俺たちが倒れたら、お前を守る壁がいなくなるんだぞ」


ミラ「そうだよ、ニセ僧侶。アタシらがここでケチって動けなくなったら、アンタが一人でネズミの餌になるんだ。それとも、その派手な服をドブ水で汚しながら戦う気?」


ミラの冷たい言葉に、ザインは少しだけ顔を引きつらせた。

そこへすかさず、セシルが眼鏡を押し上げながら論理的な追撃をかける。


セシル「二人の言う通りだよ、ザイン。それに君の教義によれば、穢れを未然に防ぐのも立派な『功徳』のはずだ。後で治療費も払えない僕たちに高額な治癒魔法を使うより、今のうちに少しの魔力を消費する方が、君にとってもリスクが低いとは思わない?」


ガンテツ「ガハハ! 違えねぇ! 四の五の言わずにさっさとやりやがれ、ヤブ医者! 渋るなら、わしが盾でオメェのケツを叩いて水路に放り込んでやるぞ!」


ザイン「……やれやれ、あなた方は本当に神を敬う心がない。野蛮な暴力と理屈で神の使いを脅すとは。……分かりましたよ、今回だけ特別に『ツケ』で祈りを捧げましょう」


ザインは渋々といった様子で杖を掲げ、ブツブツと呪文めいた祈りを紡ぎ始めた。

淡い光が俺たちの体を包み込むと、まとわりついていた悪臭がスッと薄れ、肺に入る空気が少しだけ澄んだように感じられた。


ザイン「……ふぅ。これで病原菌や悪臭の類は、多少なりとも弾いてくれるはずです。私の貴重な魔力を消費したのですから、ネズミの尻尾集め、死ぬ気で頑張ってくださいねぇ」


サイドストーリー


水路の入り口近くで、鼻をつまみながら足早に通り過ぎようとしていた若い街の警備兵が、俺たちを見て顔をしかめた。


警備兵「うげっ……あんたたち、これからその下水道に入るのか? 物好きだな。俺なら金貨を積まれても御免だぜ」


アル「こっちだって好きで入るわけじゃねぇよ。今日の飯代を稼ぐためだ」


警備兵「冒険者ってのも楽じゃないんだな。……せいぜいネズミに鼻をかじられないようにな」


ミラ「……チッ、安全な場所でふんぞり返ってる奴らに言われると腹立つね。あの制服、剥ぎ取って質に入れたら高く売れそうだよ」


セシル「ミラ、やめなよ。余計な厄介事を増やすのは僕たちの首を絞めるだけだ」

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