先回りの依頼確保と愚者の回収
ゴブリンによる街への襲撃という最悪のシナリオが頭をよぎった俺は、すぐさまセシルに合図を送り、掲示板へと引き返した。
アル「この噂がギルド中に広まれば、明日の朝には安全な依頼の奪い合いになる。今のうちに、明日の分の依頼書を『先取り』しておくぞ」
セシル「……そうだね。明日の朝、西の森や市街地の依頼の需要が暴騰するのは火を見るより明らかだよ」
俺たちはすでにまばらになり始めた掲示板から、手頃で安全な依頼を素早く探し出した。そして引き抜いたのが、ランクE依頼『西の森でのスライムの粘液採取』だ。
アル「西の森ならゴブリンの群れとは無縁だ。これを受理してもらおう」
俺たちは再び受付のエリーナのところへ行き、明日の朝からの着手として依頼を事前登録した。
エリーナ「西の森の依頼の『先取り』ね。……もし東の森の事態が悪化して緊急防衛の号令がかかったら、その時は依頼をキャンセルして街の防衛に協力してもらうかもしれないけれど、ひとまずはこれで受理しておくわね」
アル「ああ、わかってる。その時はその時だ」
これで、明日になってから「危険な依頼しか残っていない」という最悪の事態は回避できた。
サイドストーリー
俺とセシルが明日の仕事の確保を終えて酒場スペースへ戻ると、ちょうどザインがサイコロ遊びのテーブルに大銅貨を賭けようとしているところだった。
ザイン「さあ、この神聖なる大銅貨が、神の御業によって二倍に増える奇跡を……!」
しかし、ザインがサイコロを振る直前、背後から伸びてきたミラの腕が、テーブルの上の大銅貨を素早く引ったくった。
ミラ「……チッ。アンタの腐った信仰心で奇跡なんか起きるわけないだろ。この金は、宿に帰るまでアタシが預かっておくよ」
ザイン「ああっ!? 私の、私の神聖なる資金が! 泥棒! 異端者!」
ガンテツ「ガハハ! 諦めろヤブ医者! ほれ、さっさと帰ってシチューでも食うわい!」
ガンテツがザインの襟首を太い腕でがっしりと掴み、そのまま引きずるようにしてギルドの出口へと向かい始めた。俺たちもそれに続き、騒がしいギルドを後にした。




