杯の底の不穏な真実
俺はセシルに目配せをして、ギルドの奥にある酒場スペースへと足を向けた。
すでに赤ら顔の冒険者たちが騒いでいる中、「銀の牙」のメンバーと親しげにしていたのを見たことがある、傷面の剣士のテーブルへと近づく。
アル「邪魔するぜ。あんた、『銀の牙』の連中と知り合いだったよな? 東の森の件で、何か聞いてねぇか?」
傷面の剣士「あぁ? なんだ、Eランクの新米か。……タダで教えるような話じゃねぇな」
俺は懐から銅貨2枚を取り出し、近くの給仕に渡して冷えたエールを一杯持ってこさせ、剣士の前にドンと置いた。
アル「これで喉を潤してくれ。今後の俺たちの命に関わるかもしれないんでね」
傷面の剣士「……フン、話が早くて助かるぜ」
剣士はエールを一口煽ると、声を潜めて話し始めた。
傷面の剣士「ただのゴブリンの異常繁殖じゃねぇって噂は本当だ。どうやら、森の奥に統率者……『ゴブリンキング』か、それに類する上位個体が居座ってるらしい。ゴブリンどもが罠を使ったり、武器を揃えたりし始めてるって話だ」
アル「キングだと……? そいつは厄介だな」
傷面の剣士「ああ。だからこそCランクの『銀の牙』が出張ったんだが、あの手練れの連中が未だに戻ってこねぇ。もし奴らがやられたとなれば、森から溢れ出したゴブリンどもが、このカランドラの街まで襲撃してくる可能性もある。お前らみたいな新米は、絶対に東の門には近づくなよ。スライム狩りか、街角のドブさらいでもして命を繋ぐこった」
アル「……恩に着る。気をつけさせてもらうよ」
俺たちは剣士のテーブルを離れ、顔を見合わせた。
セシル「……最悪だね。群れの組織化。もし街への襲撃が起これば、僕たちのような下位冒険者も強制的に防衛戦に駆り出される可能性がある。」
サイドストーリー
俺たちが深刻な話をしている裏で、ザインが別のテーブルで酔っ払い相手にサイコロ遊びを始めようとしているのを、ミラが冷たい目で見ていた。
ザイン「さあさあ、神の導きに従い、このサイコロが偶数か奇数か……。あなた方の信仰心が試される時ですよ!」
ミラ「……チッ。あいつ、せっかく稼いだ大銅貨をもうドブに捨てる気かい。アル、さっさとあいつの襟首を掴んで引きずって帰ろう。見てるだけでイライラするよ」
ガンテツも「ガハハ! 賭け事ならわしも混ぜろ!」と騒ぎ出しそうになっており、これ以上ギルドに長居するのは危険だと判断した。




