薬草畑の防衛線と堅実な選択
早朝の澄んだ空気を吸い込みながら、俺たちは冒険者ギルドへと到着した。
昨日目星をつけていた依頼がまだ残っているか、セシルが足早に掲示板へと向かい、羊皮紙の束の中から一枚を素早く引き抜いた。
セシル「……よかった、まだ残っていたよ。『街の東にある薬草畑でのゴブリン避けの柵の補修』だ。ランクEの依頼だけど、郊外に出る分、昨日の地下水路より少しだけ報酬が良い」
アル「よし、それで行こう。ゴブリンが出るかもしれないってことか?」
セシル「依頼書によれば、あくまで『ゴブリン避け』の柵が老朽化しているから直してほしい、という内容だね。ただ、郊外の森に近いから、はぐれたゴブリンに遭遇するリスクはゼロじゃない。その場合の討伐報酬も契約に含まれているか、エリーナさんに確認しよう」
俺たちは受付のエリーナのところへ行き、依頼書を提出した。
エリーナ「おはよう、アルさん。薬草畑の柵の補修ね。……セシル君の確認の通りよ。基本報酬は大銅貨18枚。もし作業中にゴブリンが現れて討伐した場合は、右耳を証拠として持ってくれば、1匹につき銅貨5枚の追加報酬を出すわ」
ガンテツ「ガハハ! 柵を直すついでに小遣い稼ぎができるってわけか! ゴブリンなんぞ、わしの盾で押し潰してやるわい!」
ザイン「おやおや、野蛮で不浄なる生き物の返り血など、私の神聖な法衣には一滴たりとも浴びたくありませんねぇ。……ですが、追加の功徳が頂けるのでしたら、少しばかり離れた場所から祈りを捧げるのもやぶさかではありません」
ミラ「……チッ。ゴブリンの耳なんて、銅貨5枚にしかならないのかい。まあ、無いよりはマシだけどさ。アタシは柵の補修なんて力仕事はパスだよ、周りの警戒でもしてるから」
セシル「需要と供給のバランスを考えれば、妥当な線だ。契約に不備はない。……よし、アル、サイン(×印)を頼むよ。日が昇りきらないうちに現場へ向かおう」
サイドストーリー
受付での手続きを終えて振り返ると、ギルドの隅で若い冒険者が、道具屋の出張販売をしている行商人に向かって声を荒らげていた。
若い冒険者「ふざけんな! こんな濁った『薄め液』1本で、大銅貨5枚も取る気か!? 足元見すぎだろ!」
行商人「嫌なら買わなくて結構ですよ。命が惜しくないならね。本物の治癒ポーションなんて、あんたたちじゃ一生買えない値段なんだから、これで我慢しな」
アル「……大銅貨5枚か。今の俺たちじゃ、パーティの全財産と俺の所持金を合わせても買えねぇな」
セシル「そういうこと、アル。怪我をすれば一発で破産、最悪の場合は死だ。だからこそ、常に慎重な立ち回りが求められるんだよ」




