月光の指針と、拒絶された聖域
岩山の狭い亀裂に滑り込み、背後でサンドワームが砂海へと帰っていく地響きを聞きながら、俺たちはようやく深く長い息を吐き出した。極限の緊張から解放され、その場にへたり込む仲間たちの中で、セシルだけが食い入るように岩壁の古びた刻印を調べていた。
セシル「……アル、見てくれ。この岩の配置、そして風化しているが確かに刻まれた遮断のルーン……。ここは単なる隠れ家じゃない。間違いなく、数百年もの間、誰の目にも触れなかった未発見の遺跡だ」
セシルは震える指先で、砂に埋もれた境界線をなぞる。
セシル「納得がいったよ。なぜこれほどの規模の遺跡が、冒険者ギルドの記録にすら残っていなかったのか。……あのサンドワームだよ。この一帯は、あのような化け物が複数生息する、冒険者にとっての『死の海』だ。普通の探索者はここへ辿り着く前に呑まれるか、遠くからあの振動を察知して引き返す。文字通り、自然の怪物がこの場所を外敵から守る『門番』になっていたんだ」
アル「……つまり、この先にあるものは、数百年前から手付かずのまま眠っているってことか?」
セシル「その可能性はあるね。エルフの古謡、そして誰もが避ける死地……。条件は揃いすぎているよ。……あ、見て。月が昇ってきた」
セシルの言葉に顔を上げると、荒野の地平線から巨大な満月が姿を現していた。青白い月光が岩山を照らし出すと、特定の角度で穿たれた三つの岩の穴を通り抜け、暗い亀裂の奥にある一点を指し示した。
フィオ「♪~月が笑えば道が開く……。アル君、あそこだよ! 岩が……光ってる!」
フィオが指差した先、月光を浴びた岩肌に、フィオの歌の旋律と呼応するように淡い光の紋様が浮かび上がった。ズズ……と、砂を噛むような音を立てて、巨大な岩盤がゆっくりと内側へとスライドしていく。
アル「……よし、みんな。ここからが本当の『宝探し』だ。気合を入れ直すぞ」
サイドストーリー
遺跡の扉が開くのを待ちながら、ザインは必死に砂除けのマントを叩いて汚れを落としていた。
ザイン「……不条理です! サンドワームの唾液の臭いがマントに染み付いた気がします! 未発見の遺跡ということは、中に埃も溜まっているのでしょうね。ああ、神よ、私の清潔な魂をお守りください!」
ミラ「あんたの魂より、先に首が飛ばないように気をつけなよ。未発見ってことは、中に何が仕掛けられてるか分かったもんじゃないんだからさ」
ミラは短剣の柄を握り直し、開いたばかりの暗い通路を冷徹な目で見つめる。
一方、フィオは「わあ、お月様が笑ってるみたい!」と、幻想的な光の演出に目を輝かせていた。




